Chicago Shimpo
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地球物理学者・谷本俊郎博士講演会
-地震国、日本人はそういう所で
長く生活して来た-


• 地球物理学者・谷本俊郎博士の講演会が5月15日、シカゴ・ジャパニーズ・ミッション教会(CJMC)で開催され、プレートの動きと地震、東日本大震災、最近の熊本地震、地震予知の難しさなどについて説明が行われた。
• 谷本博士は東京大学で物理を専攻し、「社会のために役立つ研究をしたい」と修士課程で地球物理学に進んだ。更にカリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得、カリフォルニア工科大学大学院助教授を経て、1992年からカリフォルニア大学サンタバーバラ校と同校大学院で教授を務めている。助教授時代にCJMCの小針勇吾牧師と知り合い、今回の講演会が可能となった。

プレートと地震

• 地球はジグゾーパズルのようなプレートで覆われており、各々のプレートは常に動いている。従ってプレートの上にある陸地も動いている。その動きは1990年代後半からGPSによって正確に測れるようになった。
• 北アメリカ大陸は1年間に数センチ、西から南西に回転する形で動いている。
• 日本の東側にある太平洋プレートは1年間に9cmから10cm、西の方に動いている。
• 日本のフォッサマグナから西側が乗っているユーラシア・プレートは1年間に約2センチ東の方へ動いている。
• 世界全体を見ると、各プレートの境界で大きな地震が起きている。
• 日本は太平洋プレート、北アメリカプレート、ユーラシア・プレート、フィリピン海プレートがぶつかる所にあり、「日本は非常に恐ろしい場所に存在している。日本人はそういう所で生活して来た」と谷本博士は語る。

• 太平洋プレートはフォッサマグナから北側の日本を乗せている北アメリカプレートに深く潜り込むため、北アメリカプレートの表面が引っ張られて日本海溝を作っている。引っ張られているプレートの跳ね返りで大きな地震が起きる。
• フォッサマグナから西側の日本を乗せているユーラシア・プレートにフィリピン海プレートが潜り込む所に南海トラフがあり、ここでも大きな地震が起きる。
• 東京はユーラシア、北アメリカ、フィリピン海プレートがぶつかるところにあり、そのすぐ東には太平洋プレートがある。東京で圧倒的に地震が多いのは、この様な環境による。日本はとんでもない所に首都を作ってしまったことになる。

東日本大震災

• 太平洋プレートは北アメリカプレートに深く潜り込み、潜り込んだ面の約700キロの深さまで地震が起きる。だが、引っ張られている方のプレートの表面の歪みが跳ね返って地震が起きるため、大きな地震は浅い所で起きる。
• 東日本大震災はM9だったが、地震学者は過去に起きた地震を調べM8を超える地震は起きないと思っていた。関東大震災のようにM8級の地震は過去にいくつか起きているが、M9はなかった。M8とM9では、揺れ方が10倍違う。
• 本震で滑り残った部分が1週間から1ヶ月をかけて壊れていくのが余震。本震後24時間にM7.9の余震が3つ起きるほど大規模な断層の壊れ方だった。

津波

• 滑った断層の部分を研究に基づいて見ると、そのサイズは南北500キロ、東西200キロ。プレートが斜めに入って行くので、西側が40キロと深く東西に傾いている。その部分の真ん中辺りで滑り出し、約3分で全体に広がった。その時に上下にずれた高さは最大で50m。それが水を持ち上げて津波の源になった。この様な大きな滑り方は、全く予想外の事だったという。

• 東日本大震災が起きる1年前の防災科学研究所の地震予測では、東北は殆どノーマークだった。なぜならば東北ではM7規模の地震が時折起きており、ある程度のエネルギーが解放されていると考えられていた。むしろ危険と予測されいたのは約100年前に起きた南海地震や東南海地震の再来だった。
• ところが実際には、東北で過去に滑っていた所が東日本大震災でも滑った。以前の地震で解放されたと考えらていたエネルギーは、充分に解放されていなかったという認識に達したという。

地震学

• 地震学は1900年ぐらいに始まり、その歴史は100年余りしかない。地質学的現象は100年や150年では繰り返されないものが多く、初めて遭遇するものがたくさんある。「それが東北の地震であったと思う」と谷本博士は語る。

• 東北の地震は、同等の津波がいつ起きたのかがカギになる。今回、津波は海岸線から約5キロ陸地に入って来た。その地点には「浪分神社」が昔からあった。
• 今回の規模の津波は、菅原道真他が編集した「三代実録」に記されていることが分かった。
• これは一部の地震学者の間では知られていたが、事実かどうかは分からなかった。また、当時とは海岸線が違うかも知れないし、浪分神社の由来さえ定かではなかった。2011年に実際に大型の津波が起こり、869年と記載されている津波が間違いなく起きたという結論に達したという。
• このことから東日本大地震級の地震は1000年に1回の出来事で、時折起きる地震では歪みで溜まっているエネルギーは解放されていないという考え方に変わったという。実際には地面を掘って津波の層を調べ、過去の津波の年代測定に着手している。

熊本地震

• 熊本では4月14日にM6の地震が2つ起きた。谷本博士は「とても変だと思った」と話す。すると2日後にM7の本震が起き、2つのM6は前震だった事が分かった。
• M7とM9では、揺れ方は100倍違う。しかし、町の真下にある断層で地震が起きたために被害が起きた。また、建物が古かったことも被害の一因となった。地滑りでも大きな被害が出た。

• 熊本の地震は阿蘇や大分に飛び火した。これはどの断層が動いたのか分かっているという。
• 日本には横に走る中央構造線という横ずれの断層があるが、地震はあまり起こらない。そんなに動いてはいないが、徳島県の吉野川や和歌山県の紀ノ川は中央構造線の横ずれによってできている。
• 谷本博士は私見として「初めて中央構造線沿いに何かが起きたという事が分かった。ひょっとしたら(断層が)壊れていく可能性があると思う」と話す。但し、ゆっくりとずれて行けば地震として感じることはなく、どの様な状態で起きているのかは分からないのだという。熊本から大分にかけては中央構造線沿いに多くの断層が走っている。そこに小さい地震が並んだということは、何かが起きているのかも知れない。

地質変動は激化するのか?

• 2011年の東北地震後、日本の北半分が約5メートル東へ動いたのがGPSで分かった。弓なりになった日本が引き延ばされた形になった。谷本博士は「そういう驚くべき現象が起こったので、それに関連して地質学的変動というのが少しアクティブになったという気はします」と話す。しかし、谷本博士は地震の数は大して増えている訳ではないと強調する。阿蘇や桜島の噴火がニュースになったりしたが、桜島はずっと噴火が続いており、元々アクティヴだったと語った。

地震に対する備えは?

• 日本では耐震性の建物作りを進めて来た。東京や千葉でM6の地震が起きても被害が起きない備えができているという。これは世界でも驚異的な事だが、大きな地震が生涯のうちに起きるかどうかは予測できず、どれほど地震を真剣にとらえ個人宅にどれほどのコストを掛けるか、そこに判断の難しさがあるという。


Geophysicist Dr. Toshiro Tanimoto, Professor
of the University of California-Santa Barbara