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JCCCビジネスフォーラム
「ダントツの強みを磨け」
By 坂根正弘 小松製作所相談役


• 小松製作所の坂根正弘相談役を講師に迎え、シカゴ日本商工会議所(JCCC)ビジネスフォーラム50周年記念講演が7月18日、ハーパー・カレッジのWojcik Conference Centerで開催された。
• 坂根氏は相談役に加え、日本政府の総合資源エネルギー調査会の会長を務める。講演会では①小松製作所(以後コマツ)について、②世界の変化、③コマツの企業改革、④国の改革とコマツの取り組みについて語った。

小松製作所について

• コマツは1921年、現在の石川県小松市で銅山を経営していた竹内明太郎氏によって設立された。
• 2015年度の連結売り上げは1兆8,549億円、営業利益は10%以上。連結従業員数は約4万7,000人、そのうちの約57%は外国人。建設機械・車両事業(88%)と産業機械他事業(12%)がある。
• 建設機械・車両事業の地域別売り上げは北米がトップで24%で、日本19%、中南米13%と続く。中国は4年前の22%から4%に落ちた。

• コマツの商品、油圧ショベル、ブルドーザー、ダンプトラックなどの建設・鉱山機械は有名だ。産業機械他では、フォークリフト、自動車大型プレス、ワイヤーソーなどがある。
• 坂根氏が社長に就任した2001年、コマツは赤字だった。「日本は雇用を大事にするからいろいろな事業に手を出し、子会社を作り、出向者を出す。本業で負けた訳ではない」と坂根氏は言う。そこで、既に世界で1位か2位になっているか、なれる見込みのあるもの以外はすべて止めた。
• 300社あった子会社を110社に減らした。国内2万人の全社員に自分の名前で手紙を出し、早期退職者を募った。その結果1,100人が退職した。出向者1,700人は全員出向会社の社員になってもらい、出向者をなくした。
• 改革後の売上比率は、建設・鉱山機械ではシェア1位の商品が全売上の51%を、1位と2位を合わせると全体の88%を占める。産業機械他では、シェア1位の商品が49%、シェア1位と2位で全体の84%を占める。

世界の変化

• 坂根氏は
• 短期:20年~30年
• 中期:50年~100年
• 長期:100年~200年
• と捉える。「一桁長く見ると、見えないものが見えてくる」と話す。

短期:20年~30年

• コマツの建設・鉱山機械の地域別需要構成比を見ると、一目瞭然。すでに日米欧の時代は終わった。リーマンショック後のリバウンドはあるが、ピークを過ぎれば落ちていく。
• 中国は4年前から悪くなった。最大の2010年を100とすると、今は15に落ちている。
• グラフで見るオレンジの部分が日米欧と中国を除く150カ国。明らかに新興国の時代が来ているのが分かる。坂根氏は「これが最も大きな変化。お金はどこかに流れて行っている」と語る。

中期:50年~100年

• 世界の人口は115年前の1900年には16億人だった。2000年前は2億人。現在は75億人だから、1900年間で14億人しか増えなかったものが、この100年で50億人増えている。2050年には90億以上、2060年から2070年には100億人を超えると予測される。

• 日本では認識が薄いが、世界では都市化率を重要視する。人が固まって住めば道路や上下水道が効率よくできるというのが常識となっている。
• インドと中国の都市化率が上がると、資源・エネルギー、食料・水、地球環境+医療が世界の大きな課題となる。1900年から2000年にかけて世界人口は3.7倍に増加、一方、世界の取水量は6.7倍に増加している。坂根氏は「最後は食料と水に行き着くと思う」と語る。

• 日本では高齢化率が27%に迫り、社会問題化しているが、これは日本のみの問題。日本並みの高齢社会になるのは、ドイツ:10年後、韓国:20年後、中国:40年後、米国:80年後。

長期:100年~200年

• 150年前、日本の人口は3,000万人だった。65歳以上の比率は5%。これから150年後の日本の人口は3,000万人に減少、一方、65歳以上の比率は50%となる。深刻な問題への対処はドイツを見習うこと。「ドイツはEUを経済圏として移民を入れ、今日の繁栄がある」と坂根氏はいう。EU体制の人・もの・金の問題点を指摘した坂根氏は「日本がアジアの経済圏をいかに取り入れるか、それしかないと思う」と語った。

• エネルギー資源はあとどれ位保つのか。石油:40年、天然ガス:60年、シェールガス:100年、石炭:130年、ウラン:100年。
• 石油が80年保ったとしても、石炭よりも少ない。人口が増え続けるのに天然エネルギー資源は150年も保たない。
• 再生エネルギーだけではまかないきれず、画期的なエネルギーが必要だが、それが可能になるまでの間、現在のエネルギー資源を節約する。そのためには原子力の利用が必須だと坂根氏は主張する。
• ウランさえ100年で枯渇すれば99%の確率で使用済み核燃料の再利用の日が来るという。こうなると「ここまで世界的に技術を高めた日本が、自らそれを放棄して、最後に中国の原子力技術に頼るのは最悪」だと坂根氏は語る。中国では原子力技術者がどんどん増えているという。

コマツの企業改革

企業価値とは何かを考える

• 経営とはヒト・モノ・カネの資源を有効に使って、顧客価値を創造しなければ収益は得られない。最大の収益を得たら、それをいかにバランス良く分配するか。そのためには、市場、事業、商品・サービスの選択と集中が「must」。

企業価値とは何か?
• コマツを取り巻くステークホルダーは:社会、メディア、株主、金融機関、お客様、協力企業、販売店、社員。それらからどれだけの信頼度を得ているか、競合相手よりも秀でていたら、それがまさしく「企業価値」だと坂根氏は言う。

• 企業価値の向上実現のために執るべき行動が「Komatsu-Way」で、トップマネージメント編、モノづくり編、ブランドマネージメント編から成る。

• トップマネージメントの要点は:
・ 取締役会の活性化。少人数、社外役員が必須。
・ ステークホルダーとのコミュニケーション。社外に状況説明した後は、世界の全社員に伝える。
・ 不正を隠すな。バッドニュースをまず報告させる。
・ リスク処理を先送りしない。
・ 次の次まで後継者を考え育成する。

ブランドマネージメント

• ブランドマネージメントとは「コマツでないと困る度合いを高め、パートナーとして選ばれる存在となる」こと。また、そうなるための活動。
• 具体的にはダントツ商品、ダントツサービス、ダントツソリューションというビジネスモデルで先行し、現場力で勝負する。

• ダントツサービスで興味深いのはGPSを利用し、「機械の見える化」を図ったこと。これはKOMTRAXと呼ばれる。元々は盗難に遭った機械を追跡することだったが、機械からの情報発信によりエンジンの稼働状況なども分かるようになった。これは経済状況を見る貴重なデータになっている。

• ダントツソリューションは「スマートコンストラクション」と呼ばれ、建設機械の自動運転を可能にしたもの。ドローンを使えば1時間の測量で建設現場の3D図面を作ることができ、それに基づいて機械が自動運転で仕上げていく。建設業を変える画期的なやり方で、熟練運転手を必要とせず、現場の生産性も2割から5割上がる。

コマツの経営構造改革

• 坂根氏は「コマツは日本の縮図」だと言う。1950年代に本社を東京に置き、大卒は東京で一極採用、80年代に円高になると海外投資が中心だった。
• 構造改革に踏み切ったコマツは固定費率を下げるためにITの自前主義をやめた。これにより営業利益率が大幅に改善された。海外拠点のマネージメントを現地化、大型リストラは一回きりで済ませ、デフレの中でも毎年2%の値上げを続行、欧米でM&Aを進め、その後は国内生産比率を5割に引き上げた。海外売上が8割を占めるにもかかわらず国内生産に回帰したのは、国際競争力に自信を回復したからだ。過去5年間に工場を建てたのは日本のみ。しかし、デフレが続き日本国内売上比率が一桁台になれば、日本での5割生産は難しくなる。「デフレ脱却は非常に重要性だ」と坂根氏は語る。

• コマツの創業の地、石川県小松市に本社機能の一部を移し、工場も建設した。大卒の現地採用も行う。各地に散らばっていた教育・研修を小松市の研修センターで実施する。毎年3万人が研修を受けるが厨房・宿泊設備は作らず、地元の仕出しや旅館を利用する。これにより年間7億円が地元に落ちる。
• 農業を兼ねる従業員が多いことから、農業支援にも着手した。ブルドーザーを使い水田を2~3センチの精度で平らにすると、稲の直まきが可能になった。

日本の本質的な課題

• 過去20年間の日本、ドイツ、米国のGDP推移を見ると、日本だけが実質GDP(1.25)の方が名目GDP(1.11)よりも高く、デフレを表している。「これは異常。ドイツ並みに成長をしていたら、500兆円のGDPは今頃1,100か1,200兆円になっていた」と坂根氏は話し、移民を入れたドイツを見習うべきだと語る。坂根氏は過去20年間に日本がドイツ並みに成長していたら250兆から300兆円の税収があったと試算し、デフレが日本の借金を1,000兆円に膨らませており、社会保障費増大の比ではないと指摘した。

• 坂根氏は「デフレ脱却には民間意識が大事」だと話し、「民間企業が事業の選択と集中を思い切ってやらない限り、日本のデフレ脱却はできない」と語った


小松製作所の坂根正弘相談役


コマツの建設・鉱山機械の地域別需要構成比