日本語メインに戻る

アジアにおける安全保障の新たな展望

• シカゴ・グローバル評議会によるシンポジウム「アジアにおける安全保障の新たな展望」が2月23日、同評議会カンファレンスセンターで開催され、日本についての研究者らによる活発な意見が出された。同シンポジウムは同評議会主催、在シカゴ総領事館とシカゴ日米協会の協力で実現した。(パネリストは英語面参照)

【米国のアジア政策】

• 日本はトランプ政権発足後早期に日米首脳会談を成功させ国民は安堵したが、米国の中国政策については不確かでその行方を見守っている。
• トランプ大統領は日本の貿易を強く批判していたが、トランプ氏は今後変わるのか? ペンス副大統領と麻生副総理の直接談話で貿易だけでなく、エネルギー、インフラ、新幹線などの公共事業への投資なども話し合われる。それらは日米経済パートナーシップを探る大きなポイントとなる。

• セキュリティについて米国は日本の負担増を求めているが、中国の南シナ海進出に対して日本はより大きな役割を担う用意ができているのか?
• 日本は過去10年間で防衛体制を整え、集団的自衛権の行使を可能にするなど、より大きな役割を担う用意は出来ている。
• 安倍首相もより大きな役割を望んでいるが、国民は反対している。新政権発足により日本の役割拡大は現実味を帯びてきており、防衛費の拡大、フィリピン、ベトナム、オーストラリアとのセキュリティ協力の深化などが進むとみられる。また日本は、東南アジア諸国やオーストラリアとの連帯強化を望んでおり、それによって米国への支援に繋げる。

• 永岩俊道元航空自衛隊空将、現双日総合研究所防衛・安全保障チーム上席客員研究員は、日本が直面している脅威の現状について語った。
• ロシアと中国の挑発に対しスクランブル数は増加している。中国は既に防衛から攻撃に変わっている。中国は国際法を無視しており、日米同盟は地域の安定、繁栄、自由航行のための重要なかなめとなる。トランプ政権の安倍首相の信頼は、日米が共に動くという強い意志を示す良いサインとなる。
• 尖閣諸島の水域には大多数の中国船が侵入している。また、日本は数多くのミサイルの射程距離内にあり、日米同盟による抑止力が益々重要となる。

• 日本は独自の軍事攻撃能力が必要か? 永岩氏は、今後日本が防衛・攻撃の両能力を持つように準備すべきだが、攻撃を受けた場合は同盟国である米国のコミットメントが必要だと語った。

• 日本は2006年から07年にかけて先制攻撃に焦点を当てていた。2009年には方針を変えたが、今再び先制攻撃案が蘇っている。日本の北朝鮮と中国への懸念について聞くと、日本は報復能力を持たないように聞こえるが、そうではなさそうだ。今や米国のアジア防衛への関与は確かなものになっている。そして北朝鮮への抑止ができないことが脅威となっている。日本の攻撃態勢は北朝鮮や中国の計算にインパクトを与えるのか。

• 北朝鮮は非核化を全く考えておらず、これ以上北朝鮮との交渉に非核化は使えない。次のステップは抑止力だが、どの様に抑止するのか、どの様に中国を動かすのかが問題となる。
• トランプ政権がアジア政策を打ち出すには、まだ6ヶ月から9ヶ月かかる。一つの懸念は政権のハイレベル間においてアジア政策への深慮が不足していること。

• 中国との経済関係はどうなるのか? トランプ氏のセキュリティ政策と経済政策は米国の利益にとって良くない。TPPは中国の台頭に対して良い政策だが撤退を決めている。日米が個別に中国に対するよりも貿易政策とセキュリティ政策を組み合わせる方が利益がある。

• 貿易の裏側には海外投資がある。米国に巨額投資している日本企業の不安は大きい。知る人は少ないが、日本は大量の米国債を買っている。日本はそれについての充分な見返りを受けていない。だからトランプ政権は日本を経済パートナーとして、多くのイニシアティブを進めると思われる。中国は世界経済を安定させるファクターとして考えるべき。

• 南シナ海が不安定になっているのは大きな懸念であり、次に何が来るのか。日本の防衛費拡大は米国にとってプラスになり、中国に接近しているフィリピンが元に戻る取引が考えられる。同盟は取引ではないが、交渉は出来る。中国が受け入れるような交渉ができるのではないか。

• 米国が、日本や中国を相手にする交渉は「相互依存」がモットー。取引における哲学的理想は米国が二国間関係から離れることで、日本がその助けとなる。冷戦時には米国は二国関係で暗礁に乗り上げた。トランプ政権は二国協定に向いているが、多国関係へ向かうべきだ。

【北東アジアにおける安全保障課題】

• トランプ政権は発足早々にマティス防衛長官の日韓訪問やティラーソン国務長官のアジア訪問など積極的な展開を見せているが、カギとなるアジア政策は1年を要すると見られる。
• 米国の北東アジアへのセキュリティ対策は、北朝鮮の抑止策に中国の積極的関与を促すなど北朝鮮問題に密着するだけでなく、増加する中国のグレーゾーンへの侵入、サイバー・スペース、貿易など容易ではない。米国はアジア太平洋でのダイナミズムにおける利益を良く把握する必要がある。また、同盟国日本、韓国、オーストラリアに加えベトナムやインドネシアとの関係強化も重要となる。
• 安全保障環境の変化は速く、同盟国との素早い動きが必要となっている。日米、米豪同盟関係は強力だが、米国内政策により同盟関係は不確かな時期を通過することになる。
• 北朝鮮は核兵器を保有だけでなく、経済発展を望んでいる。度重なるミサイル発射や金正男氏殺害は、米国との交渉再開を望む金正恩のメッセージ。
• 北朝鮮の抑止として有効なのは厳格な経済制裁。北朝鮮と取引する多くの中国企業にも制裁を課すべき。

• 小野田治氏元空将・航空教育集団司令官 、現ハーバード大学シニア・フェローは、この50年間で北東アジアのセキュリティ環境は悪化しており、これは朝鮮戦争が終結していないからだと指摘した。
• 2月14日には北朝鮮が中距離弾道ミサイルを発射、これは軍人として非常な驚きだったという。北朝鮮は2016年、日本周辺に24発のミサイルを発射している。核実験も2回実施した。
• 中国のミサイル射程距離は今年1000㎞を超え、グァム島の米アンダーセン基地を射程距離に入れる。中国は東シナ海の中間線にあるガス田開発を続けており、日本の方へ拡大している。航空領域侵入も東へ顕著に拡大している。
• ロシアと中国の合同演習も懸念の一つ。また、ロシアは北方領土にSSMを配備した。
• 安倍政権の元、日本は2013年からセキュリティ策略を進めている。2014年には史上3回目となる日米防衛ガイドラインを刷新した。近年には集団的自衛権の行使を可能にした。小野田氏は、軍の本質からすると法で禁じられていること以外は何でも出来る状態にあるべきだと言う。
• 憲法改正を待たずとも、自衛隊にはできる事が多くある。
• 自衛隊がすべきことは①グレーゾーンにおける沿岸警備で、軍事衝突することなく敏速かつ効率的な対応をすること、②弾道ミサイルだけでなく巡航ミサイル防御についても能力を持つこと、③中国とロシアに対して新しい軍事戦略を持つこと、④中国とロシアに備えて、韓国、台湾・フィリピンとの提携が必須であり、関係を強化すること。

アジア太平洋における多国籍セキュリティ協力:日本の役割

• 小野田氏はアジア地域のセキュリティにおける日本の役割について語った。この20年、アジア地域にNATOのような同盟関係が出来ないかと考えた小野田氏は、困難だとの結論に至った。アジア諸国は小さく経済的にも軍事的にも弱い。そこで日本は非軍事分野での支援を続けている。一方、米国は軍事分野での支援を行っている。
• 日本はフィリピンやベトナムに警備艇の提供をしているが、軍事支援をするについては中国を刺激しないように、日本政府は非常に気を遣っている。
• 日本は経済支援やコミュニケーション支援によりアジア諸国との信頼関係を築いている。これが新しい日本の役割の方向性だと言える。

【日米同盟の役割】

• 米国笹川平和基金のCEOデニス・ブレア氏は、日米同盟の変遷について語った。ブレア氏は海軍退役後、米諜報機関のディレクターとして16機関を率いたほか、国防機関での分析活動、米国土安全保障省などで活動している。

• ブレア氏は海軍でUSパシフィック・コマンドのチーフ・コマンダーを務め、日本に造詣が深い。その任務に就いていた1997年から2002年当時、日米同盟は不明確で確固たる目的も定まっていなかった。同盟国としては堅苦しく動きも遅かった。米側がイニシアティブを取り、日本は受け身だった。米国ではソマリア問題などがあったが、日本は冷戦終結後で脅威を感じることもなく、平和維持活動にも関心を示さなかった。
• 7年後にブレア氏は米諜報機関に戻り、笹川基金との関係に関与することになった。その時の日米同盟は大幅に改善されていた。この駆動力となったのは中国の経済・軍事台頭と北朝鮮のミサイル開発だった。2010年には尖閣問題が深刻化した。この様な背景から日米同盟のミッションが定まった。
• 2007年、安倍首相が任期1年の間に防衛庁を防衛省に昇格させた。2012年に安倍氏が再度首相に就任してからはセキュリティにおける日本の役割拡大に乗り出しており、セキュリティ・カウンシルの設置や憲法解釈を進めている。日米防衛ガイドラインも刷新し、集団的自衛権の行使も可能にした。北朝鮮防衛のための最新設備も設置した。
• 日米同盟のコミュニケーションも敏速かつ緻密に行われ、安倍首相と米大統領との話し合いも多く行われている。主要メンバーの会議も頻繁に行われ、同盟国として必要なリアルタイムでの団結が実現している。
• 軍事的な視点で見ると、日本には不測の事態がある。尖閣諸島はその一つ。だが韓国や台湾で不測の事態に日本が直接巻き込まれることはない。日本の役割は米軍への基地の提供とサポート、それに自国を守ること。

日米同盟はどの方向に向くのか、何をするのか。重要な点は6点。
・ 沖縄に基地を維持すること。地元の反対はあるが、良いプランは機能し成果を出す。密集した市街地から辺野古への移設はやり遂げなければならない。
・ 軍事活動が事実上、外交や経済関係を導き出している。
・ 自衛隊は戦闘に出ていない。第二次世界大戦以後、一人の負傷者も出していないことを日本は誇っているが、兵士を失なわないことを考えるならば、真剣なセキュリティ態勢は取れない。国民に奉仕する自衛隊員は、常時リスクを取っている。セキュリティはただ防衛費を増やすだけではないということ。
・ 尖閣諸島が奪われれば、取り返そうとする日本を米軍が助ける、それが軍のミッション。だが、それに備えて計画し、演習し、真剣に防御しておくべき。そこには日米合同演習がある。
・ 南シナ海については共有の政策が必要。
・ 平和維持活動は憲法の解釈によって集団的自衛権の行使ができるようになり、他国の救援もできるようになった。スーダンでの平和維持活動の危険を記した日報の件で日本政府への圧力が強まっているが、日本はこの5年で素晴らしい平和維持活動の成果を出している。

日米同盟で実践できることは

• 中国と取引するに当たって最良の方法は、軍事情勢を整えること。そうすれば諸島を取ることはリスクが高くなる。軍事力のバランスを維持することが外交や経済関係の道を開くことになる。
• 南シナ海はより複雑だが、米国、日本、オーストラリアが軍事力を持ち寄ることができる。航行の自由のためには南シナ海で合同演習をすることが有効。各々の利益を維持し、合同演習をすることが必要となる。また、中国が基地を建設している7島は中国の本拠から700マイル離れており、中国にとっては不利となる。
• 北朝鮮については、北朝鮮が本当に核弾道ミサイルを米国に撃ち込めるかどうかは不確かであり、既に射程距離内に入っている日本とは温度差がある。米国と日本が共取れる策には、航空機による偵察、共同パトロールなどがある。北朝鮮の核弾道ミサイルが米国が基地を置いている国に発射されれば、そこにいる米兵や家族のために行動を起こす。基地を置いている国への抑止策もある。北朝鮮が持っている核爆弾は5個から15個、米国の1500個からすれば、北朝鮮は何もできない。


Several specialists discuss the future of the security in the Asia-Pacific at a symposium.