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裏話がいっぱい!
映画「サバイバルファミリー」、
矢口監督インタビュー

• 今年2月11日に日本で封切られた映画「サバイバルファミリー」の監督・脚本家の矢口史靖監督にお話を伺った。「サバイバルファミリー」は日本の約270劇場で公開され、2日間の興行収入は1億6500万円、動員数は13万人というヒット作。
• 同作品はシカゴでアジア系の映画を紹介している「アジアポップアップシネマ」で取り上げられ、3月1日にシカゴ市にあるAMCシアターで上映された。

ストーリー

• ある日、地球から電気というものがなくなったら・・・。電化製品はおろか、電車、自動車、飛行機も動かない。ビル設備も工場設備も浄水設備もすべて作動しない。情報と言えば噂のみ。
• 東京の高層マンションに住む鈴木家は普通の4人家族。一家は食料や飲料水がなくなって行く東京を出て、お母さんの実家がある鹿児島へ向かう。
• 会社員の鈴木は亭主関白だが口先だけで何もできない。大学生の息子や高校生の娘は反抗気味。専業主婦の光恵は世渡りのすべを知っている。
• 自転車に乗った一家は野宿を重ね、いろいろな人々や苦難に遭遇しながら、自動車が走らなくなった高速道路を西へ西へと進んでいく。大阪には電気があるという噂だったが本当なのか。食糧が尽きれば豚との格闘もやむを得ない。橋がなければ筏で渡るしか手立てはない。まだまだ遠い鹿児島に果たしてたどり着けるのか。

矢口史靖監督インタビュー

• Q:2003年からこの映画の案を温めていたそうですね?

• 矢口:切っ掛けは、僕が機器を使うのが苦手と言うところから始まりました。今もスマホは持っていません。2003年にニューヨークとカナダで大停電がありました。電気が無くなるだけで都市部の生活はこんなに大変なことになるんだと非常にインパクトがあって、これは映画になるぞと確信したのがその時です。

• Q:撮影はいつ頃から?

• 矢口:2015年の9月から11月末にかけてです。

• Q:高速道路を人がゾロゾロと歩いていますが、どうやって撮影を?

• 矢口:単純な話、本当に撮ったということです。CGや新しい技術も入って来ていますが、今回の映画は全部ロケで撮影しています。
• あの高速道路は山口県で、本当に午前9時から午後4時まで車を止めたんです。山口県警の道路を管轄している部署の警部補の方が、定年を迎える直前でした。その方に僕が直接会いに行って映画の内容を話したら、その方の最後の仕事としてやって下さいました。こんなことは非常に希で、いろんな事のタイミングが上手く合ったから使えたんで、その前でも後でもたぶん撮影は出来なかったと思います。

• Q:ロケは大変ですね。

• 矢口:もう愚直ですよ。ただお願いしてそこを貸してもらうもらうやり方。
• 羽田空港にしても、筏で川を渡るにしても、豚を捕まえる田んぼにしても、テクノロジーには頼らず、本当にその場所に行って撮るというやり方をしました。だからキャストとスタッフが日本を少しずつ移動しながら、毎日俳優さん達がボロボロに疲れて行きながら撮ったという感じです。

• Q:映画の中で鈴木一家が疲れているように見えるのは、本当なんですね。

• 矢口:疲れも溜まっていくし、行く先々でぶっつけ本番で芝居をするシーンが多かったので、本当にボロボロになってました。
• 本来ならば空調が効いたスタジオで、安全が確保された中でやるべきシーンが多かったんですけど、今回に関してはそんなことはしない方が良いと思ったんですね。本物の景色の中に突然普通の家族が放り込まれて、生き延びるために放浪して行くという様がちゃんと撮れてないといけないので。
• 実はクランクアップは筏を組んでお父さんが流される川のシーン。その時はもう11月の末でした。映画では夏の設定ですけど、実際は凄く寒くて、水も本当に冷たい中でやってもらったんですよ。だから鈴木一家が疲労困憊していて、もう死ぬかも知れないと必死に見えるのは、本当にそういう状況だったからなんです。

• Q:お父さん役の小日向さんが、矢口監督を尊敬したり恨んだりしたと話されていました。

• 矢口:本当に恨まれていたと思います。後半に行けば行くほど体力的に辛いシーンばかりになって行く。その中で、僕が「全部本当にやって下さい」と無茶な提示ばかりしていた訳わけなんですよ。
• タレント豚はいませんよね。小日向さんは普通の豚を捕まえなければならないので、そういう辛い目に遭って、最後に筏のシーンだったので、小日向さんも「いい加減にしてくれ」と、やっぱりおっしゃっていました。
• 筏のシーンで、もし鈴木一家が流されても風邪を引いても一応作製は終わるので、その撮影を最後にやりました。

• Q:監督として過酷なシーンをお願いするのは大変では?

• 矢口:僕はニコニコしながら酷いことを要求するのは結構平気なので、そんな大変じゃなかったです。俳優さん達はともかく辛そうにしていました。でも、こんな体験は一生に一回ぐらいだと思うんですよ。だからケガもせずにクランクアップできたのは宝になるんじゃないかと思って、余り遠慮せずにやってもらいました。

• Q:大阪の通天閣もロケですか?

• 矢口:はい。朝に通天閣の下で撮りました。真っ暗な時から準備をして、用意していたゴミを散らかして、太陽が上がって来たら撮影を始める予定だったんですけど、意外にも酔っ払いのオジサン達が現れて「また大阪が汚い所だと思われる」と、もの凄く絡まれました。「申し訳ありませんね」と謝りながら、その最中にコソコソ撮るという、そんなやり方をしました。

• Q:飛行機が飛べない羽田空港のシーンもリアルでしたね。

• 矢口:一機だけ本物のANAの飛行機があり、それをベースにいくつか増やすというデジタルの力を借りたんですけど、基本的にはあの場所でロケーションをしました。
• ANAの飛行機がいても良いとOKしてもらったんですけど、羽田空港側は一切使用許可を出してくれていないんです。空港の外の道路使用許可だけを取って、道路で撮影しています。人が金網によじ登るシーンも一番最後に撮りました。警察に捕まったら撮影が終了してしまうので。

• 東京から西へ横断して行く中で、許可が取れなかった所の方が多いんですが、ちょっと無理を押して、本当に現場で撮りました。
• そうそう、水族館の魚を使った大阪の炊き出しシーンは、須磨海浜水族園の協力があって撮影できました。大阪ですから大阪の水族館を探したのですが、OKしてくれたのは本当に一館だけでした。
• 許可してくれた訳を聞いたら、「実は神戸の震災の時に避難民がうちの水族館にやって来た」と。実際に映画の中と同じ場所で炊き出しをして、避難民の受け入れをしたそうです。家を無くした人達を館内に泊めて、その人達と一緒に過ごして助け合ったことがあるので、映画の内容に賛同してくれたんです。それであのシーンが成立したんですよ。お父さんが家族を大事にする大切なシーンです。

• Q:飢えた犬が一家を襲いそうなシーン、ドキドキしますね。

• 矢口:映画を作る前に何回も取材に行って体験したことが元になっています。バッテリー補充液とか、猫餌の缶詰などもそうです。


• Q:2003年から構想を温めて、ずっと準備をされてきた訳なんですね。

• 矢口:僕の映画の作り方は、ずっとそんな感じなんですよ。取材に一番時間がかかりますね。調べ物をして、脚本と絵コンテを自分で描くという作業が大好きなので、全然苦ではないです。

• Q:撮影で約1万㎞を移動されたそうですね。

• 矢口:東京で撮れないシーンもあるので、鈴木家が住んでいるマンション、お父さんの会社とその周り、大学、高校のシーンは仙台で撮ったんです。仙台は映画のロケ地を誘致したり、撮影そのものをサポートする組織が充実しているので、とても助かりました。

• Q:矢口監督の映画は次々に何かが起きて、スピード感がありますね。

• 矢口:親に連れられてハリウッド映画を良く見ていました。ジョーズなど日常の延長線上にとんでもないことが待っているようなパニック映画が多かったですね。日本映画と大きく違うのは、カラっとしていて展開が速く娯楽性が強い。そんなものに影響されせいもあってか、やはりスピーディーな展開の方が僕自身も好きなんです。

• Q:東京から鹿児島は遠いですが、どうして鹿児島に?

• 矢口:脚本を書く前に20代から50代の人にアンケート調査をしました。電気がなくなって1週間、1ヶ月、1年経ったらという質問です。
• 結果興味深かったのは20代までの若い人達は1ヶ月以内で死んでいると答えています。
• 年齢が上がるほど、海辺で釣りをする、畑で作物を作る、親戚の家に身を寄るなどして生き延びています。若い世代ほど情報が無い、移動手段もない中で生きていられると言うことを想像できないんですね。
• それで鈴木一家が田舎のおじいちゃんの所に身を寄せるというゴールを目指すことをアンケートの結果から考え出しました。

• Q:矢口監督は取材や調査を重ねて「書く人」なんですね。

• 矢口:サバイバルファミリーは映画完成後に小説も出しました。取材で直接人々に会って聞いた方が正確だし、面白いですね。

• Q:どうもありがとうございました。


Director Shinobu Yaguchi


Scenes from The Survival Family. (Photos: courtesy
of the Asian Pop-up Cinema)