日本語メインに戻る
触媒って何?
興味津々、第13回若手研究者発表会

• 触媒はどう働くの? 化学物質ってどうやって作るの? こんな興味をそそる第13回若手研究者発表会が4月15日、在シカゴ総領事館の広報文化センターで開催された。
• 同発表会は、シカゴで研究している人達が互いに助け合おうと「Japanese Researchers Crossing in Chicago」を創設し、各々の研究内容も発表し合おうと始まった。専門家の集まりだが、各々の発表は専門外の人達を対象に行われるので素人にも分かり易い。一般の人達の参加も歓迎している。

今回の発表は:
●「MOFの単結晶で触媒を見る」by大竹研一氏、Postdoctoral Fellow at Northwestern University
●「ナノサイズの裁縫」by
塚本翔大氏、PhD Student at University of Chicago
●「燃える氷、メタンハイドレート」by 今里和樹氏、Ph.D. Student at Northwestern University
●「鏡の世界の化学」by
佐藤浩平氏、Kohei Sato、Postdoctoral Fellow at Northwestern University

「MOFの単結晶で触媒を見る」

• 大竹研一氏はノースウェスタン大学のポスドク研究員で、「MOFの単結晶で触媒を見る」について説明した。大竹氏の研究の3つのキーワードは①触媒、②MOF(モフ)、③シングル・クリスタル(単結晶)。

• 触媒とは?

• 触媒は我々の周辺で、工業的にも生体内でも沢山使われている。例えば、排気ガスのフィルター、植物の光合成、アルコール飲料の醸造、体内では飲酒したアルコールの分解などがある。

• 触媒によって元々の物質に何が起きているのかはエネルギーダイアグラムで分かる。元の物質から生成物になる過程で、触媒の有る無しで活性化エネルギーに大きな違いがある。その原因は触媒によって起きる反応中間体の機構によって変わってくるが、この機構というのが余り分かっていない事が多い。この機構を解明しようというのが大竹氏の研究の背景にある。

• 触媒を担体(サポート)に付けることによって、反応中間体から触媒を取り除いて、生成物だけを得ることができる。また、担体に触媒を付けることによって活性が上がることがあり、注目を集めている。担体は工業的に重要な分野となっている。
• 担体とは多孔質の物資でシリカ、ゼオライト、ジンクなどで、触媒が穴の中に入って担体にくっつき触媒活性を示す。
• 一方、担体に使われる物質は整然とした構造を持っていない。だから、実際に触媒反応は起きるが、活性点の構造や価数(原子団の結合の強さ)など、触媒反応のメカニズムの研究が難しい。

• そこで近年研究されているのが整然とした構造を持つ多孔材で、MOF(メタル・オーガニック・フレームワーク)と呼ばれるもの。MOFは金属イオンと有機リンカーを組み合わせて作る、ジャングルジム構造を持つもの。これは化学的に自在に設計して作ることができ、異なる形やサイズの多孔材が得られる。ケンブリッジの結晶構造データベースには6万種類のMOFが既に登録されている。

• MOFの利点は、均一の穴を持ち、設計性が高く、化学的・物質的に安定しており、単結晶が得られること。均一の穴に入るのは一種類の触媒であることから、その触媒の性能を測定することができる。また、担体に触媒を付けた時に活性が上がるメカニズムもMOFを使って研究することができる。

• 単結晶とは長期的な周期を持ち、綺麗に並んでいる物をいう。例えば塩はNaとClが規則正しく並んでいる。この様に規則的に並んだ単結晶にX線を当てると干渉縞ができ、それを解析すると結晶の中にどの様な原子がどの様に並んでいてどの様に結合しているのかを直接観測できる。

• 単結晶媒体が直接観測できれば、活性点の構造と価数を見ることができ、最終的には触媒反応中の中間体も見たいと大竹氏は話す。これにより、本当の触媒のメカニズムが解明できるようになるという。

• まとめとして大竹氏は、一種類だけの触媒活性点(catalytic site)となり得るものを自ら作ったMOFの穴に入れることができた。「将来としては、触媒活性点をちゃんと評価して、中間体まできれいに直接観測しようというのが目標」だと語った。


Kenichi Otake, Postdoctoral Fellow, Northwestern University


An image of the metal organic framework (MOF)
The image is borrowed from Otake's presentation.