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氷が燃える? 
興味津々、若手研究者発表会

• 今里和樹氏は第13回若手研究者発表会で「燃える氷、メタンハイドレート」について発表した。これは今里氏が昨年日本で研究していたもので、現在はノースウェスタン大学の博士課程で学んでいる。

メタンハイドレートとは?

• 近年日本ではハイドレートの話題が新聞の一面を飾ったり、新しい資源として安倍首相が所信表明演説の中で言及したりしている。

• ハイドレートとは、図Iの様に水分子が作るカゴ状の構造に、他の物質(ゲスト物質)が包み込まれてできる結晶のことを言う。
• 見た目は殆ど氷と同じで、ゲスト物質がメタンであれば、「メタンハイドレート」と呼ばれ、火を近づけるとガスが出て来て燃える。
• メタンは天然ガスの一種で、メタンハイドレートは日本周辺の海底でも自然に生成されている。人工的には、摂氏マイナス20度に冷やすか、室温であれば10メガの気圧をかけると生成される。

• ハイドレートは1810年に偶然に発見された。寒い日にDavyという研究者がシャーレ-の中に塩素と水を入れたものを放置していたら、翌朝に塩素ハイドレートができていたというエピソードがある。
• 1930年代になって、パイプラインで天然ガスが輸送されるようになると、パイプの中にハイドレートが生成されて詰まってしまうという問題が起きた。これを阻止するためにハイドレートの研究が始まった。
• その後、海底がハイドレートの生成条件に合っており、世界中の海底にメタンハイドレートが存在していることが発見された。(図II)これを取り出すことができれば新しい資源として利用できると注目されるようになった。日本でも開発の取り組みが始まっているが、まだ上手く行っていないという。

• 海底のハイドレートを取り出すのは意外と難しい。船からパイプを垂らし、ハイドレートを溶かしてメタンを取る方法だが、パイプの中にハイドレートや土砂が詰まったりして商業的にはまだ時間がかかると見られる。しかし、ハイドレートは油田やガス田がない所にも存在するため、取り出す技術が開発されれば有望な資源となる。

ハイドレートの特徴

• 高いガス砲蔵性
• 体積換算で100倍以上のガスを取り込むことが可能。メタンであれば164倍。ガスの貯蔵や輸送に有用。

• 大きな生成・分解熱
• ハイドレートの生成・分解時に大きな熱量が必要。これには良いことも悪いこともある。生成・分解熱は氷としてエネルギーを溜めておき、暑い時にクーラーとして利用できる。溶ける時に増える体積で圧力を上げることができ、発電などに利用できる。

• ゲスト選択性
• 二酸化炭素、メタン、窒素など、ゲスト物質によって水分子のカゴへの入りやすさが違う。この特徴を利用すれば、混合ガスを分離することができる。二酸化炭素を分離したり、水素だけを取り出したりすることができる。(図III参照)

二酸化炭素分離技術

• これはCCS(Carbon Capture and Storage)技術と呼ばれ、排気ガスや煙道ガスから二酸化炭素を優先的にハイドレートに取り込み、海底に貯留したり地中に埋めてしまおうという発想。これはハイドレート法と呼ばれ、現実的になって来ているという。

• ハイドレート法は排気ガスや煙道ガスを冷やすときにエネルギーが必要でコストがかかる。それを低下するために、生成条件を緩和しようとする研究も行われている。ハイドレートの生成に摂氏マイナス20度にする必要がある時、TBABと呼ばれる物質を加えれば水分子のカゴが安定し、摂氏17でハイドレートが生成される。室温でハイドレートが生成できればハイドレート法が利用されやすくなる。

天然ガス輸送技術

• 天然ガスはガス田で摂氏マイナス162度に冷やしLNG(liquefied natural gas)にして輸送される。冷却設備にコストがかかり、小さなガス田では投資と回収が見合わなくなる。ガスを液体ではなくハイドレートにすれば設備投資も低く、輸送にも便利。
• ただし、液化天然ガスは体積が600倍になり、160倍のハイドレートよりも大幅に輸送効率がいい。液化天然ガスを運ぶ輸送船が1往復する間に、ハイドレートは3から4往復することになる。

オゾン

• オゾンには殺菌力があり、清掃やプールの消毒に適している。近年ではオゾン洗濯機も出ている。しかし、オゾンはすぐに酸素に分解するので、貯蔵して運ぶことができない。
• ここでハイドレートが役に立つことになる。オゾンも水分子のカゴに入り、ハイドレートを作ることができる。これを浄水施設やプール、食品工場などで使えば除菌できる。コンビニなどで販売されれば、一般家庭の除菌にも使える。

• 今里氏は「使い先を考えるのが研究していて面白いところ」だと語る。海水の表面と深層部の温度差を利用した発電、ハイドレートが溶けてガスになる時の圧力でタービンを回す発電など、「現在価値を生み出していないエネルギーから新たな価値を生み出すというところに意義がある」と今里氏は語った。


Kazuki Imasato, Ph.D. student at Northwestern University


The image is borrowed from Imasato's presentation.