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文化の軌跡を西へ辿る
東大寺写真展「Road of Light & Hope」

• 東大寺国宝写真展「Road of Light and Hope(光と希望の道)」が11月28日まで、在シカゴ日本総領事館広報文化センターで開催されている。これは12月に開設120周年を迎える同総領事館の記念行事の一環として行われており、日本カメラ・インダストリー・インスティテュートとメディア・アート・リーグの協力によって実施されている。
• 展示されている41枚の写真は伊藤みろ氏の撮影によるもので、この40年間に撮影された唯一の写真となっている。既に東大寺ミュージアムに移されている日光・月光菩薩も、以前の法華堂の中で撮影された貴重な写真となっている。
• 展示写真の中には、唯一伊藤氏のみに撮影が許可された8枚の伎楽面の写真が含まれている。11月1日に行われたオープニング・レセプションでは、既に失われた伎楽をイメージする伎楽バレエが新井春双氏によって披露された。

• シルクロードの終着点・平城京(奈良)には、古代ギリシャからユーラシア大陸の様々な文化の影響を受けた遺品が保存されている。東大寺や正倉院にある彫像のマスターピースは、1300年前の洗練されたヘレニズム文化の影響を色濃く留めている。東大寺の大仏には、シルクロードを通ってグレコ・バクトリア王国まで繋がる文化の影響が見られる。また、東大寺に保存されている伎楽面には、古代ギリシャの仮面劇がシルクロード沿いの民族分化の影響を受けながら日本に到達した軌跡が見られる。

• 写真展「Road of Light and Hope」はシルクロードの終着点まで、ユーラシア大陸を横切る宗教、哲学、教え、芸術、職人技、民族文化など、多様な文化を映し出しながら、西洋と東洋の繋がりを見い出し、人々が調和、連帯、寛容、同等の心を持つ望みを託している。

• 伊藤みろ氏は慶応大学で美学を専攻、ドイツに研究者として滞在した。その時にヨーロッパから東西の架け橋を作りたいと思っていた。しかし、そこではやるべき事が見つからなかった。
• その後米国に渡った伊藤氏は9/11を体験し、何か世界のためにやらなければならないと強く思った。その時に閃いたのが神意だった。そこから仏教や神道の勉強を始め、仏教を国教として認めた聖徳太子、その100年後に聖徳太子のやったことを再度やろうとした聖武天皇に惹かれた。
• 伊藤氏は展示写真を指しながら「これらは彼らの置き土産です。聖武天皇が作られたものですね」と語る。聖武天皇は共栄共存の思想で皆が幸せになれるようにと考えて大仏を造ったと話す伊藤氏は「私はそれが今の時代も次の時代にも答えになると思って、この14年をかけて撮影して来ました。聖武天皇がやったことを1300年後の現代の世界に広めたい、世界の若い世代に伝えたいと思って、やらせて頂いています」と語る。
• 同写真展は昨年の国連での展覧会を皮切りに、ウズベキスタンのタシケント、フランスのストラスブール、カナダのトロントで開催して来た。

• 伎楽は面を付け、踊りで物語を表現するコミカルなパフォーマンスだったようだ。伎楽は聖徳太子が奨励したが既に失われ、どの様なものであったか実態は分かっていない。ただ一つその様子を伝えるのは、狛近真(こまのちかざね)が「教訓抄」に書き残したメモ程度のものだという。

• 伊藤氏が伎楽を知ったのは、2002年にスミソニアン博物館で行われていたフォークロア・フェスティバルだった。この時のプロデューサーがヨー・ヨー・マで、シルクロードがテーマだった。そこで伎楽を復元し、上演していたのが野村万之丞師だった。
• 2年後に野村万之丞師が亡くなり、伊藤氏は同師の伎楽を含めた写真集を出した。その写真集を東大寺の館長に見せたところ、写真の伎楽面を見た館長が「本物を撮りなさい」と、東大寺が保存している伎楽面の写真を撮らせてくれた。「おそらく写真家としてはただ一人だと思う」と伊藤氏は語る。
• 伊藤氏はこの写真を平城京のイベントで展示し、作品を東大寺に寄贈した。作品を気に入った東大寺から、日光菩薩、月光菩薩の撮影に指名されることになった。また千手観音菩薩や不空羂索観音も撮影することができたという。

• 伊藤氏は「やらなきゃいけないことはご縁が向こうからやって来る。自分が願ってもいないことができてしまう」と話す。チェコ国立劇場バレエ団のバレエダンサーだった新井春双氏とも出会った。その時に「伎楽をアジアのものとしてやるのではなく、西洋のものとくっつけることで世界的になる気がしました。そうすることで、伎楽を取り入れた聖徳太子や大仏を建てた聖武天皇の理想が、世界平和のために実現するのではないかと思いました」と語る。
• 伊藤氏は新井氏と伎楽について話し合い、新井氏は4つからなる伎楽バレエを創作した。4つの衣装は伊藤氏がデザインした。デュポール大学で新井氏が伎楽バレエを披露すると、伎楽を学生と一緒に作ってみたいという教授が現れたという。
• 伊藤氏は「これはやはり、西洋人と一緒に作るものだと思うんです。黒人、白人、ラティノのダンサーがいてもいいと思う。伎楽面は23種類、14キャラクターがあります。伎楽面がいろいろあるように、いろいろな人種で作りたいと言うのが私の理想です」と語った。

 


伎楽ダンスを披露するバレエ・ダンサーの新井春双氏


伊藤ミロ氏

以下は東大寺に保存されている伎楽面より3点