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太鼓レガシー14:
音楽性や美的感覚を高めてステージへ

• 日本の祭りやお座敷で演奏される和太鼓の芸術性を高め、ジャズやブルースなどの西洋音楽や三味線や笛などの日本伝統音楽とのコラボレーションを試み、新たな現代音楽として創造する「太鼓レガシー14」と「リダクション5」が12月16日と17日の両日、シカゴ現代美術館で開催された。

• タツ・青木氏がこの試みを始めたのは14年前。日本の邦楽演奏家やパフォーマー、シカゴの新鋭ミュージシャンなどを巻き込みながら、一流のステージとして知られる現代美術館を舞台に、新たな試みを進化させて来た。  青木氏は和太鼓グループ「司太鼓」を率い、藤間流日本舞踊の「秀舞会」と合流し、各地で演奏活動を繰り広げている。その活動に加え、日本の伝統芸能継承者やシカゴのミュージシャンを招いて伝統と新鋭パフォーマンスを融合させた総合的な舞台として発表するのが太鼓レガシーとリダクションだ。

• 青木氏の長期に亘る日米融合パフォーマンス創作活動が日本政府に認められ、17日の太鼓レガシーの舞台上で、伊藤直樹在シカゴ総領事より青木氏に外務大臣賞が授与された。

• タツ・青木氏は司太鼓の若手メンバー達の育成にも力を注いでいる。太鼓レガシーの舞台を目標に、メンバー達は練習を積み、高いレベルの演奏ができる技術を学んでいる。青木氏は「私のチャレンジは彼らの努力を無駄にしないこと。和太鼓演奏の音楽性を追求すると共に伝統の美的感覚を維持することだ」と語る。和太鼓演奏がアメリカ社会に広がるにつれ、力任せのエネルギッシュな演奏が和太鼓だと思われがちになる。しかし、太鼓を打つバチさばきは微妙だ。「難しい練習を積めば積むほど、美的感覚を大事にする文化が修得できる。それがメイン・ゴール」だと青木氏は語る。

• 「太鼓レガシー14」では、太鼓レガシー4番目のアルバム「The Gintenkai」がフィーチャーされた。銀天界とは1970年代に青木氏が属していた実験的な和太鼓音楽にチャレンジしていたグループで、21世紀の5分の1近くまで踏み込んだ今、青木氏は和太鼓音楽の音楽性と美的感覚をコンサートステージに押し出すまでに質を高めようと、司太鼓やそれに属するシカゴの銀天界、サンフランシスコのゲン太鼓のメンバーと共にナショナル・銀天界プロジェクトを立ち上げた。

• 太鼓レガシー14のハイライトは、組曲「ハヤマ 18」。1970年代後半、東京ではマーチング・バンドのLPが大ブームとなっていた。これに触発された青木氏の師匠が創作したものだと言う。  もう一つのハイライトは日本からのゲスト、八王子車人形五代目の西川古柳師と藤間秀之丞師による「剣舞」。箱型の車に座って人形を操る西川古柳師の人形と、12歳の時に藤間秀齋師の内弟子となった藤間秀之丞師が剣を持ち、見事な舞を見せた。

• リダクションは太鼓レガシー10周年を記念して始まり、昨年12月で5回目の開催となった。このステージでは和太鼓、三味線、鼓などの日本伝統楽器とサクスフォーンやチェロ、ドラムセットなどの西洋楽器のコラボレーションで、伝統と現代のフュージョン音楽を創り出すもの。  今年も東京から三味線の杵屋千鶴師匠や鼓の梅屋貴音師匠が出演し、色々な管楽器を吹きこなすダグラス・エワート氏などと共演した。

• また、ゲン太鼓のメロディ・タカタ氏を始め女性パフォーマーによる大太鼓とドラムセットの共演、西川古柳師が繰る人形と藤間秀之丞師、藤間淑之丞師による舞いの共演、和太鼓・三味線・サクスフォーン、チェロなどによるコラボレーションなど、伝統と現代・邦楽と西洋音楽のフュージョンを具現化したステージが繰り広げられた。最後は永絃・青木氏とアメリカ人ドラマーが共演し、出演者総てがステージに繰り出しフュージョンのフィナーレとなった。

• 東京の劇場などで三味線の演奏活動を続けている杵屋千鶴師匠は今回、即興演奏も多かった。「日本の間とアメリカの間というのがちょっと違います。でも私は日本の音楽を皆さんにお聴かせしたいので、自分の思い通りに弾かせて頂きました。それぞれが自分の思いきった演奏をして、それが一緒になることが音楽であって、一緒にリズムが重なるとか、合うとか合わないというのは問題にしないで弾いてみました」と杵屋さんは語った。  杵屋さんは公演の時に西川古柳師をゲストに招き、西川氏の人形に心が入っているのに感激したという。それが切っ掛けとなり、西川師を太鼓レガシーに誘って来た。

• 八王子車人形は江戸時代から伝わる車人形で、3つの車がついた箱型の車に腰掛けて1人で人形を操る、特殊な一人遣いの人形芝居。それ故に3人で一体の人形を繰る浄瑠璃よりも容易に芝居をすることができる。
• 西川師は「三味線もそうですし、どんなものを使っても(パフォーマンスは)難しいですね。ただ、一体の人形を1人で使うので気持ちを入れやすいというのは確かですね」と語る。舞台では人形の動きと西川師の表情がピッタリ合っているのが興味深かった。  今回のフュージョン音楽との共演は、やはり即興だという。「日本では決まった曲でやることが多いのですが、こちらではいろいろな音楽と一緒にやって、この長さでと言われたり、いつまで続くか分からないけども・・・というのを初めて体験して、楽しかったですよ」と西川師は語った。

タツ・青木氏プロフィール

• 青木達幸氏は東京四谷荒木町に生まれ、料亭「豊秋」の長男として幼少期より芸事に囲まれ育つ。 70年代のアングラアート活動を経て1977年に渡米、79年よりシカゴ在住。現在は邦楽道場、アジア系NPOを運営するかたわら、和太鼓や三味線をフューチャーしたアジア系ジャズを定着さるなど、シカゴにおけるアジア系音楽の開拓者として高い評価を受け、邦楽からフリージャズ、映像作品まで幅広い芸術活動を続けている。  70年後半よりシカゴ在住。ヨーロッパ、アメリカより90枚以上の音楽アルバムを発表、50本の映像作品を発表、参加作品も多数。アジア系ジャズのプロデューサーとして数々の作品も手がけ、1999年プロデュースの「アジアン・アメリカン・オーケストラ」(Anthony Brown's Asian American Orchestra)はグラミー賞にノミネートされた。

• 2001年にはシカゴ・ジャズ協会、アメリカン・コンポーザー協会よりジャズ・ヘリテージ・アワードを受賞。シカゴ・トリビューン紙「2001年シカゴアンズ・オブ・ザ・イヤー」(Chicagoans of the year)に選ばれる。アジア系音楽の開拓者として2007年にはアジア・アメリカ協会よりマイルストーン賞を受賞。2010年には日米協会賞」、3Artsより住者会より2014年に「Living with Legacy」アワードを受賞。2015年には全米ジャズジャーナリスト協会より「シカゴ・ジャズヒーロー賞を受賞。

• 2016年はオノ・ヨーコプロデュースによるSKYLANDINGを発表、2017年はカナダ国際映画祭で映像音楽作品「LIGHT」がBEST Experimental Awardを受賞、イリノイ州政府によるAsian American Advisory Coun-cil of Illinois and received the Community Service Award、外務大臣表彰を受けた。
• 中西部最大の太鼓道場を経営し邦楽から映画音楽、クリエイティブミュージックまで幅広い芸術活動を続けている


“Taiko Legacy 14” と“Reduction 5”のシーンより


伊藤直樹総領事より外務大寺院賞を受けるタツ・青木氏