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シンポジウム:アジア太平洋の統合、
TPPとトランプ政権、日本の貿易政策など

• 「アジア太平洋の経済統合の行方」、「中西部への海外投資」、「米国のTPP12撤退後の貿易について」のシンポジウムが1月24日、シカゴ・カウンシル・オン・グローバル・アフェアーズのカンファランス・ルームで開催された。日本人パネリストは木村福成氏(東アジア・ASEAN経済研究センターのチーフ・エコノミスト、慶應義塾大学経済学教授)、渡邊頼純氏(慶應義塾大学総合政策学部教授 、元外務省大臣官房参事官兼経済局)、後藤志保子氏(米シンクタンク「ウッドロー・ウィルソン・センター」上級研究員。同シンポジウムは日本政府、在シカゴ総領事館、シカゴ・カウンシルのパートナーシップで開催された。

【アジア太平洋の経済統合の行方】

• パネリストはシーラ・スミス氏(国際関係カウンシル日本研究の上席研究員)、木村福成氏、バート・イーディス氏(アジア開発銀行北米代表)、モデレーターはカール・フリードホフ氏(シカゴ・カウンシル海外政策研究員)で行われた。

アジア太平洋統合が与える連携は?

• 米国内ではアジア太平洋についての議論がないが、何が起きているのか。

• 同地域には社会的、経済的、技術的な変革があり、海外投資や国境を越える融資、繁栄が進んでいる。また、ASEAN統合も進んでいる。観光旅行は毎年10%の伸びを示しており、すべてが動いている。
• 元々統合は繁栄だけでなく平和にも良いこととして同じ目標意識があり、経済とセキュリティは別物ではなく、地域のコミットメントがある。
• 中国の台頭への対応は、例えばAIIBは誰がルールを書くのか、誰が運営管理するのか、これらをアジア地域は見ている。
• 東南アジアの統合が深まれば、貿易が参加国の間で優位に立つ道具になり始めていないかとの見方もある。経済取り引きが領有権争いに関係して来る懸念もある。

日本のリーダーシップの可能性は?

中国は積極的に関与しようとしているが、日本は中国への対抗勢力になり得るか?

• TPP11を理解する必要がある。日本は常に周辺国との繋がりに優先順位をおいて来た。元々TPPは日米のイニシアティブで始まったが、日本はTPP11という高水準の貿易協定をまとめ上げている。日本のリーダーシップは非常に重要となる。
• 一ヶ月前のピューのリサーチによると、日本人は経済成長に自信を持っており、日本がリーダーシップを取ることをサポートしている。
• 地域の国々が誰をパートナーとして信頼するかとなると、中国は二面性がある。日本は東南アジア経済開発拡大に協力しており、低所得者層の底上げに貢献している。米国と共にアジア開発銀行の創始者の一国でもある。

日本の海外投資は?

• 中国の巨大投資額に対して日本は競争できない。しかし、投資は金銭だけでなく、ルール作りなど多様な協力がある。投資の内容を見極めることが重要となる。
• インドは投資を求めており、インド・パシフィックに拡大して見る必要がある。インドは第一の借り手となり得る。

米国と中国の貿易戦争の影響は?

• 米中の貿易戦争は日本や東南アジア、世界経済にとっても良くない。世界はすでに相互依存関係にある。

高齢化の懸念は?

• 北東アジア、中国でも高齢化の懸念は大きい。「高齢化する前に金持ちになれ」という言葉があるように、高齢化する前に社会福祉を整えておく必要がある。
• 日本の問題は、誰が高齢者の世話をするかというところ。高齢者をサポートするテクノロジーが進んでいる。高齢化は、納税者が少なくなると言う問題も大きいが、日本の高齢者はリッチであり、消費による経済貢献は大きい。

トランプ時代の日米関係は?

• 貿易、セキュリティ、環境などの問題については、ホワイトハウスの思慮分別にかかっている。
• 日本企業は米国民の約100万人を雇用しており、日本はトランプ政権が持ち出した問題について調整しようと対応している。
• メキシコやカナダに投資している日本は、NAFTA再交渉の影響を見守っている。
• ペンス副大統領と麻生副総理兼財務大臣が二カ国間経済対話を担当しているのは、政治とセキュリティ問題を経済から切り離しているため。赤字解消が米国の主要目的だが、まだ何も決まっていない。

アジア太平洋統合の眺望は?

• グローバル・バリュー・チェーンを利用して、連結はアップグレイドが続いている。だがEUのようなボーダーレスや共通通貨が生まれるまでには、まだほど遠い。TPP11が連結を加速するために非常に重要となる。

【米国のTPP12脱退後の貿易】

• パネリストは渡邊頼純氏、後藤志保子氏、ジェフリー・ショット氏(ピーターソン・インスティテュート・フォー・インターナショナル・エコノミクス上席研究員)、クリストファー・ネルソン(米国笹川-アジア関係研究員、ネルソン・レポートのエディター&出版者)、モデレーターはフィル・レヴィー氏(シカゴ・カウンシル・グローバル・エコノミー上席研究員)で行われた。

トランプ大統領のTPP脱退はどの様に受け止められたか?

• 日本にとっては非常に大きなショックだった。TPPはグローバライゼイションの簡略版であり、多くの人々に経済的にも政策的にも利益がある。日本はグローバル化で経済拡大できると思っており、反グローバル化には賛同しない。トランプ政権発足後、日本がいち早くやったのは、米国がTPPに戻ることへの歓迎メッセージ発信だった。日本がTPPをリードすればトランプ政権はネガティブではなかった。

• 米国のTPP加入が成らなかったのは、選挙年にもつれ込んでしまったから。選挙年前に締結してしまうべきだった。
• 日米二カ国間貿易協定が今まで上手く行かなかったのは政治的な信頼の欠如があるためだった。しかし日米以外の10カ国の地域背景があればできる。それがTPPだった。
• 米国はTPPでより多くの市場にアクセスできたが、脱退で特に牛肉と豚肉の輸出減は大きい。
• TPP11が発効すれば中西部の中小輸出業者は不利となる。米国は失うものを考えるべきだった。

なぜTPP11は成ったのか?

• TPP11カ国は6年間の交渉を保持する方が顕著なペイオフがあると思ったことにある。TPP11は非常に高水準の貿易協定で、新分野のEコマースも含む。カナダは特にTPP11を喜んでいる。NAFTAが崩壊してもTPPがあるからだ。

米国はTPPに戻れるか?

• TPP11は米国が戻れるように、非常に注意深くデザインされている。
• TPP11はTPP12の95%を協定に使っている。約20条項は凍結されており、その部分はバイオロジカル・プロダクツなど米国が興味を持つところ。

米国はNAFTAの再交渉中だが、TPPとかけ離れた結果になればどうなる?

• 複雑な問題で、既に違いがある。NAFTAはより地域的となっている。一方米国はWTOのルール遵守に責任がある。米国に輸入される車の関税は2.5%だが、ラックには25%の関税が掛かる。NAFTAの再交渉が成れば、メキシコに進出している日本のトラックメーカーは米国での販売が難しくなる。
• ネルソン氏は楽観視している。NAFTAの再交渉は緊迫しており、その経過は世界に知られている。ビジネス界はロビー活動に出ており、最悪の状態を回避しようとしている。ネルソン氏はポリティクスの動きは遅いが、最終的には正しい方向に向かうという。
• 一方後藤氏は楽観的ではない。隣接するNAFTA3国間には差し迫った侵略行為はなく、決裂しても政治的ななリスクはない。企業は、テクノロジーによる自動運転車、電気自動車、エネルギー代替えなどの変革をよく考慮しておくべきだという。

日米二カ国間貿易協定の行方は?

• プロダクション・ネットワークが広がっており、二カ国間協定は効率的ではない。日本はEUとのEPAで合意しており、2019年に発効予定。TPP11も2019年に発効する。これらのメガ協定を含め、日本は既に15の協定を持っており、2カ国間協定は日常ビジネスにフィットしない。
• 麻生副総理は二カ国協定をやりたくないと公言している。
• 日本はペンス副大統領が日本に好感を持ってくれるように期待もするが、実際の策略は「引き延ばし」。米国が多国間協定に戻るまで引き延ばしを図る。

なぜトランプ政権は二カ国協定を押すのか?

• トランプ氏はプロフィット&ロスのバランスを見ており、二カ国間協定は赤字解消が目的。米国の赤字が大きい貿易相手国は、中国、日本、メキシコ、ドイツ、韓国で、それらの国がターゲットとなる。米国の赤字が大きい分野は製造分野。

• トランプ政権は企業に国内投資を求めている。サプライチェーンは米国内で賄い、雇用を創出する。しかし、これで製造コストが高くなる。  米国企業は競争力を失い、生産量は低下を辿り、雇用も減少する。だからエコノミストから見ればトランプ政権の方向性は生産的ではない。

日本の貿易政策は?

• 日本は2001年から貿易政策を変えた。それまでのWTO一筋から経済協定を積極的に結ぶことにした。その第一号がシンガポールとのFTA。現在は15のEPAやFTAがある。日本の多国間協定はWTOを補足したモノで、WTOからかけ離れてはいない。
• EUとのEPAが2019年に、TPP11も2019年に発効する予定で、日本はいよいよ多国間貿易に乗り出す。また、RCEPも加速させる。日本は多国間貿易システム強化への更なる貢献を望んでいる。

TPP11に対する中国の姿勢は?

• 中国は米国を含めたTPP発足時から興味を持っていた。米国も中国経済成長に良いと思っていた。中国は利益と不利益を計算していたが、その後TPPを脇に置いていた。
• 影響力を及ぼしたい中国は、既にTPP11参加国を含む広範囲な地域で貿易や投資を行っている。また、既にある二カ国間協定のアップグレイドに動いている。カナダも中国との二カ国間協定を探っている。
• 中国はグローバル化に関心を持っており、習近平主席も態度を軟化させている。
• 渡邉氏によると、TPP11とRCEPは類似していて、中国はいずれTPPへの参加を考えるだろうという。中国のオフィシャルは、TPPへの参加はWTO以来の加入になるだろうと話しているという。

【中西部への海外投資】

• 中西部への海外投資は、イリノイ州ジェファーソン・カウンティ開発部のジョナサン・ハルバーグ氏、インディアナ州コロンバス地区経済開発部のジェイソン・ヘスター氏、在ピオリアのコマツアメリカの工場長ジェイムズ・マティス氏、ニデック・モーター社のCEOケイ・パング氏をパネリストに、モデレーター・マイク・レヴィ氏(シカゴトリビューン・エディトリアル・ボード)によって行われ、各社の投資、運営状況、労働者状況、組合、地域開発部の誘致、援助、インセンティブなどについて状況説明が行われた。


左より、カール・フリードホフ氏、木村福成氏、シーラ・スミス氏、バート・イーディス氏
(写真:Chicago Council on Global Affairsのビデオより)


左より、フィル・レヴィー氏、渡邊頼純氏、後藤志保子氏、ジェフリー・ショット氏、
クリストファー・ネルソン氏 (写真:Chicago Council on Global Affairsのビデオより))