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日本語継承者が様々な経験を語る
第2回継承日本語弁論大会に20人が出場

• 第二回継承日本語弁論大会が1月28日、在シカゴ総領事館広報文化センターで開催され、20人が堂々とスピーチした。これは日本語を継承する子ども達や学生達の発表の場として創設されたもので、在シカゴ総領事館、シカゴ日本商工会議所、シカゴ日米協会、シカゴ姉妹都市インターナショナル大阪委員会が共催している。一昨年は日本語弁論大会の一部に組み込まれて実施されたが、好評を得て昨年から独立した形で実施されることとなった。

• 満席の会場に立った伊藤直樹在シカゴ総領事は、「みんなが一緒に集まるという場、だからこそこの弁論大会の開催は重要だ」と述べ、参加者を歓迎した。
• また伊藤総領事は、両親や補習校で日本語を習う継承日本学習者にとって、この弁論大会は非常に良い機会だと述べ、「今日は甲乙付けがたい弁論大会になるだろう」と参加者を励ました。
• 総領事によると、現在、在シカゴ総領事館管轄の10州に住む日本人は約34,000人。20年前の日本人永住者は約3,500人だったが、現在は約12,600人に増えている。総領事は「継承日本語学習者は年々増えており、総領事館は継承学習者を激励し支援するために、毎年継承日本語弁論大会を継続して行きたい」と語った。

• 継承弁論大会は小・中学生を対象にした第一カテゴリーと、高校・大学生を対象にした第二カテゴリーに分けて行われた。各々のスピーチの後には審査委員長から日本語で質問があり、その答えも評価の対象となる。
• 継承弁論大会では、複数の文化の中で育つ様々な経験が語られた。

受賞者のスピーチ

• グランド・プライズを受賞した愛理寿(あいりす)高橋・ブレイディさんのスピーチは「生まれは日米国ウィスコンシン州山田町」。
• 愛理寿さんはアメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、アメリカ人として育っている。中学1年の時に参加した野外教育キャンプ場で、高校生のカウンセラーに「あなた、可愛いね。でもあなたは何?」と言われた。どうも褒められているのではないようだ。困惑している愛理寿さんに、カウンセラーは「だから何人?本当のアメリカ人じゃないよね」と訊かれた。その時から自分の容姿が他のアメリカ人と違うことが気になり出した。
• 補習校でみんなと一緒に笑っていると「見て、外人でさえ笑っているよ」と言われ傷ついた。アメリカ人の中でも日本人の中でも、自分の居場所を見つけられなかった。
• 小さい時から母に「生まれた時から2つの文化を持っていて、いいね」と言われていた。だが、2つの文化を持つとは何だろうと思った。
• 幼稚園の時から毎年日本文化の紹介をやって来た。東日本大震災が起きると、募金運動を行い、母の故郷、岩手県山田町の小学校に届けた。その時に「自分は日本とアメリカの橋渡しになれるんだ」と思い、自分の存在意義に気付いた。
• シカゴ双葉会の補習校には幼稚部からずっと通っている。母が片道3時間をかけてウィスコンシンから通わせてくれる。しかし、行きたくないと泣いた日もあった。そんな時は「将来両親に絶対に感謝するから」と母に言われ、補習校に通った。そのお陰で多くの友達ができ、昨年10月には漢字検定にも合格した。「内緒だけど、両親に感謝しています」と愛理寿さんは言う。
• 日本では2つの文化を持つ混血者をハーフと呼ぶが、「ハーフではなく、ダブルと呼んで欲しい」。日米両国の誇り、喜び、悲しみ、痛みを知っているからこそ、人生をダブルに広くしてくれる。「私は半分がアメリカ人、半分が日本人ではなく、常に日系アメリカ人です。生まれは日米国ウィスコンシン州山田町と言いたい。ダブルな私にバンザイ」とスピーチを結んだ。
• 愛理寿さんにはANAより、日本への往復航空券が贈られた。

• 授賞式後インタビューに答えた愛理寿さんは、中学や高校でアジア人だから近寄りたくないなどのイジメを受けたことがあったが、「今はダブルで大丈夫。将来は医学関係に進みたい」と語った。
• また、毎週土曜日に往復6時間をかけて愛理寿さんを補習校に通わせている母親の章子さんは「私の国の、彼女の半分のルーツでもある日本語をしっかり習得して欲しいという気持ちはあります。いずれ彼女の子どもにも、またその子どもにも、子々孫々と伝わって行けばいいなという僅かな希望を持って、主人と一緒に頑張ります」と日本語継承への思いを語る。
• 父親のベン・ブレディさんは日本に約15年間住み、東北大学大学院を卒業、日本語も流暢に話す日本通。
• 章子さんは「(補習校を)途中で止めたいと何度もぐずられて、ストライキを起こされたこともあったんですが、そう言う時は引き摺るようにして連れて行きました。引き摺る役は主人だったんですけど。説得するのは大変でしたが、スピーチで感謝していると言ってくれたので、本当に嬉しかったです」と語った。

• 第二カテゴリーで一位を獲得したヒナコ・フジマキさんのスピーチは「家族のカタチ」。
• ヒナコさんは中国で生まれ、米国に引っ越して来て3年になる。その3年間で、家族のカタチについて深く考えてみた。
• 日本では離婚は良い印象が持たれず、子どもが成人するまで離婚しない事が多い。また、母親が子どもを育てるための経済的理由で離婚できない場合もある。子どものためとは言え、両親の仲が悪いのは返って子どもに悪影響を与える。
• 米国では養子縁組を積極的に受け入れているのに驚いた。友人の両親は白人だが、友人はアジア系の顔立ちをしていた。その友人からある日、「実の親に会いに行くから、中国語の挨拶を教えて欲しい」と言われ、ステップ・マザーが前向きに実の親に会わせるのを知った。そして、家族関係が複雑でも仲良く暮らしていれば、そんな家庭もあり得るのだと思った。
• 米国では人種が違っても積極的に養子縁組を受け入れるおおらかさがある。また、両親が離婚・再婚を繰り返して、実の親でない親と暮らしている子ども達もいる。様々な家庭のカタチがあり、互いを思い合う気持ちがあれば理想的な家族だと思う。
• いつか自分も家族を持つが、いろいろな家族のカタチがあることに気付いて良かった。

• 第一カテゴリーで一位を獲得したエイト・トクナガ君のスピーチは「ことばとぼく」。
• 現在8歳のエイト君は、5歳から7歳になるまでメキシコにいた。サッカーをしたいが言葉がわからず、一緒に遊べなかった。「自分から話しかけないと友達はできないよ」と母に言われ、スペイン語を覚えた。聞いた言葉を真似して言っているうちに、会話ができるようになった。それからどんどん友達が増えて、話すことが楽しくなった。
• メキシコでは補習校に通い、先生や友達が言っている言葉を聞いて、日本語で話す友達がたくさんできた。
• 僕にとって日本語は特別な言葉。お父さんやお母さん、日本にいるおじいちゃんやおばあちゃんなど、家族と話す言葉だから。これからも日本語といろいろな国の言葉を覚えたい。そして家族やたくさんの友達と話せるようになりたい。

• ヒナコさんとエイト君には米州住友商事から100ドルのギフト券とパナソニックからオーディオ・ヘッドセットが贈られた。

• シカゴ新報賞を受賞したカレン・ヤマダさんのスピーチは「将来への第一歩」。
• 17歳になったカレンさんは、将来のことを考えるようになった。悩んだ末にたどり着いた解決法は、興味があることを見つけることだった。
• 教えることが好きなカレンさんは、家庭教師をやってみようと思った。両親が日本人でアメリカ育ちのカレンさんは日英両語が分かる家庭教師になり、現地校で大変な思いをしている日本人の役に立ちたいと思った。
• 思った通り、英語の援助を必要としている生徒はたくさんいた。教えることに最初は緊張したものの、すぐに生徒と打ち解けた。生徒達も自分の解説が分かり易いと言ってくれ、嬉しく思った。
• 両方の言語が分かるからこそできるアシストがあることに初めて気付き、遣り甲斐や達成感を感じるようになった。そして、英語の家庭教師は私だからこそできる事だと思った。
• 自分に合っていることを見つけることができれば人は幸せになれる。将来について不安だった自分だが、今は少し先が見えてきたと思う。これから先いろいろな経験をしながら自分だからこそできる事をもっと明確に見つけ出し、複数の事ができるようになりたい。常に自分の味が出せるような事をやりたい。

• シカゴ新報賞はカレンさんの他、第一カテゴリーのゼン・ナガオ君に贈られた。


ベストを尽くした20人の弁論大会参加者


スピーチを聞く参加者家族や友人


グランドプライズを受賞した愛理寿(あいりす)高橋・ブレイディさん(中)と、
伊藤総領事(左)、大崎知之ANAシカゴ支店長



シカゴ新報賞を受賞したカレン・ヤマダさん(右)とゼン・ナガオ君(左)