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自動車セミナー:北米自動車産業の行方

 連続成長していた米国の新車市場は、昨年ついに前年比1.9%と減少した。今後も新車市場の現象が予測される中で自動車業界はどう動くのか、NAFTA再交渉による影響はどうなるのか。

プライスウォーターハウスの自動車産業分析チームより渡辺司氏を講師に迎え、自動車セミナー「北米自動車産業のアップデートとNAFTA再交渉」が2月23日に、ハーパー・カレッジのウォージック会議室で開催された。主催はJCCC機械部会とジェトロ・シカゴ事務所で行われた。

全世界のライトビークル生産台数

 ライトビークルとは大型ピックアップまでを含む。2017年の台数は昨年12月に予測を出したもので、11月辺りまでが実数。

 全世界の生産台数は2017年推測で9,400万台。これから増えて行くのは新興市場(中国・インド・ASEANなど)。2024年の予測は1億1,400万台で、新興国の全体増加に貢献する寄与率は87%と高い。一方、先進国の成熟市場は重要で、特に自動車メーカーにとって北米市場の重要度は高い。

 2024年の生産台数にはモデルチェンジが加味されている。日本は約5年毎と短いが、ドイツでは7年、その他では10年と周期が長い。

 地域別に見ると、17年から24年の伸びは成熟市場である北米の伸びが200万台と大きい。南米は80万台の予測。

 ヨーロッパは240万台とかなりの伸びが予測されるが、低コストの自動車の伸びが大きいと見られる。
東欧はロシアとトルコが殆どで、伸びは140万台。
中東とアフリカはイランと南アフリカが伸びている。イランは経済制裁が緩和され、新車が入ってくる可能性がある。南アフリカは輸出の拠点となっており、そこから各地に出ているが、アフリカ全体の伸びは時間がかかる。中東には米国や日本からかなり輸出されている。中東とアフリカの全体の伸びは130万台。

 新興アジア太平洋は中国、インド、ASEANを含んでおり、伸び予測は1,280万台と大きい。
日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの成熟アジア太平洋市場は、40万台の落ち込みが予測されている。理由としてオーストラリアのカムリ生産中止、日本は市場の伸びが見込めない、韓国では米韓政府間で交渉中であり、GMは台数よりも利益を取る方針に出ている。GMは韓国に3工場を持っているが、釜山工場ではこの数年、稼働率が20%に落ちている。また労働コストの上昇もある。

 国毎に見ると、17年から24年への伸びは、中国が869万台、インドが237万台、米国が164万台、ロシアが84万台、タイとイランが77万台、ドイツが75万台、メキシコが63万台。日本は7万台減の予測となっている。カナダは26万台減と大きい。これは為替や労働コストの上昇などがあり、生産がアメリカに移る可能性がある。また、NAFTAによって変わる可能性がある。

 メーカーまたはアライアンス・グループ毎に見ると、フォルクスワーゲン(VW)の伸びが一番大きく17年から24年への伸びは203万台で、24年の生産台数は1276万台と予測される。2番目はRNM(ルノー・ニッサン・ミツビシ)で伸びは205万台で、24年の生産台数は1,272万台となる。

メーカー毎の17年から24年への伸びは:
VW: 203万台から1,276万台へ
RNM: 205万台から1,272万台へ
トヨタ: 102万台から1,131万台へ
GM: 139万台から 924万台へ
現代:156万台から895万台へ
フォード: 110万台から 738万台へ
ホンダ: 54万台から598万台へ
FCA: 95万台から 562万台へ
スズキ: 54万台から 368万台へ

(その他として2024年の生産台数3,138万ドルがある。中国が巨大な政府ブランドを作る可能性があり、実現すればその他の生産台数が大きくなる)

 電動化パワートレインの生産台数は比率は17年の4.8%から24年は14.8%に増加。中国では電動化が進んでいる。プラグイン・ハイブリッドと電気自動車を販売台数の10%以上を作るという政府規制がある。しかし、単に10%ではなくポイント制になるため、実際の生産台数は低めになる。
メーカー別に見ると、VW、トヨタの伸びが顕著。一方、ボルボを買収している中国の吉利が入ってくる。

北米のライトビークル販売

 米国は2008年の1,319万台から一旦1,040万台まで落ち込んだが順調に回復し、米市場初の7年連続で販売台数が増加した。特に2015年、2016年、2017年は1,700万台を超え、これも米国史上初の好調さを見せた。しかしながら、2016年から17年にかけて縮小気味となっている。これはリーマンショックで買い控えをした消費者が2010年から戻りはじめ伸び率が大きかったが、2013年辺りから伸びが鈍化し、一巡した傾向が見られる。

 鈍化の理由として、メーカーが出してきた多額のインセンティブが無くなってきたこと、金利の上昇予測、ローンの平均期間69ヶ月がより長くなり、7年から8年になると次の購入時期が延びる事などが挙げられる。ローンを長くして高い車を購入する傾向もあり、現在の平均購入価格は3万3,000ドル。今後は緩やかな減少の波があり、2024年の予想販売台数は1,720万台となっている。

 カナダは2017年に204万台と、初めて200万台を突破した。今後は緩やかに減少し、2022年から再び上昇、2024年には196万台の販売予測となっている。
メキシコは2016年に過去最大の160万台を販売、以来2018年まで緩やかに減少し再び上昇に転じるとみられる。2014年の販売予測は179万台となっている。
こうして見ると、北米の中で米国の市場がいかに大きいかが分かる。

セグメント別ライトビークルの販売台数

 米国ではライトトラックの販売が伸びており、2017年は全体の65%を占める。ライトトラックにはピックアップトラック、SUV、クロスオーバー車が含まれる。SUVはピックアップトラックの車台の上にユティリティのボディが乗っている。クロスオーバー車はセダン系の車台の上にユティリティのボディが乗っている。両者とも見た目は同じ。特にクロスオーバーの伸びが大きく、全体の4割近くを占めている。

メーカー別ライトビークル販売台数

 米国では2017年のライトビークルの販売台数トップはGMで300万台。続いてフォード250万台、トヨタ250万弱となっている。4位以下はFCA、RNM(ニッサンはレンタルが増えている)、ホンダ、現代、スバル、VW、ダイムラーと続く。
カナダはフォードが1位で30万台超。GMが30万台、FCA、トヨタ、現代、ホンダ、RNM、VW、マツダ、スバルと続く。
メキシコではRNMが1位で40万台弱。小型やハッチバックに人気があり、それを持っているRNMが強みを見せている。2位はGMで約26万台、VW、現代、トヨタ、ホンダ、FCA、フォード、マツダ、BMWと続く。

 販売台数のトレンドとして、高級車の販売が増えている。2017年の米国の販売台数は落ちたが高級車の販売は1.2%増加している。また、セダン系が5.2%減少したが、ライトトラックは6.3%伸びている。

 ブランド毎に見ると、フォードのFシリーズが断トツ1位。一車種で約100万台を販売している。2位はGMのシルバラードで、60万台弱。3位はドッジのラムPUで約50万台、今年は新型が導入され増産体制に入っている。4位はトヨタのRAV4で約40万台、トヨタはこの車種が米国で一番売れている。以下はニッサンのローグ、カムリ、ホンダのCR-V、シビック、カローラ、アコードと続く。

米国でのインセンティブ

 米国の2017年のインセンティブは1台当たり約4,000ドル。平均購入額3万3,000ドルで、10%以上ディスカウントしないと売れない状況になっている。
米国の適正在庫は60日。ディスカウントが大きいVW、FCA、GM、フォードは60日を上回っている。

米国の国別ライトビークル輸入台数

 米国に輸入されて来るライトビークルの2017年の台数は、メキシコ179万台、カナダ139万台、日本126万台となっている。その他は韓国、ドイツなど。米国は現地生産を奨励しており、輸入台数は減少すると見込まれる。

 日本から輸入される乗用車には2.5%の関税がかかる。ライトトラックであれば25%の関税がかかる。それでも日本は126万台を米国に輸出しており、米国は重要な市場となっている。
メキシコとカナダは合わせて約300万台を米国に輸出しており、NAFTAの影響は大きい。
カナダでは生産台数の約90%が米国に輸出されている。メキシコは約60%で、数字が低いのは南米にも輸出しているため。

米国からの輸出

 2017年は200万台超を輸出している。輸出先はカナダとメキシコで総輸出台数の53%を占める。一方、米国総生産数に対する割合は2国を合わせて7から8%となる。
他の輸出先は、中国とヨーロッパが主。ヨーロッパではSUVブームとなっており、高級車が好調な販売を見せている。

北米のライトビークル生産台数

 ライトビークルの販売台数は2021年まで少しずつ減少する予測だが、生産台数は2024年に向かって少しずつ上昇していく。
輸入を増やし生産移管が増える。現地生産化が進み、SUVの世界需要に応えるために輸出が増える。それらの要因を加算して生産台数を予測すると約200万台の増加となる。

 米国は2016年から17年にかけて減少している。これはメーカーの工場改装や在庫調整などに起因している。2018年も市場自体が落ちているため減少となる。工場の改装が終わり、フォードのレンジャーなどの新型車が出れば増加に転じる。また、トヨタ・マツダのアラバマ工場やボルボの工場が完成すれば、増加する。

 カナダはアメリカへ生産移管が行われ、またアメリカ市場で販売が落ちれば生産台数への影響が大きく、2017年の198万台から2024年は173万台まで落ちると予測される。

 メキシコは新工場が一段落し、ロジスティックの問題が改善されることから2014年に300万台だった生産台数が2024年には500万台に近づくと予測されている


渡辺司氏、プライスウォーターハウス 自動車産業分析チーム