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全米将棋大会がシカゴで開催
15歳の女性が全米チャンピオンに!


• 第23回全米将棋大会が4月14日と15日の両日、リンカンシャイアーにあるシスメックス・アメリカ社の講堂で開催された。同大会は毎年開催されており、各支部が持ち回りで大会をホストしている。今年は2013年に続き、日本将棋連盟シカゴ支部がホスト役を務めた。

• 大会には日本将棋連盟のプロの立ち会いが必要とされ、日本から石川陽生プロ七段、近藤正和プロ六段、伊藤明日香女流プロ初段が出席した。団体戦では一人のプロが二人の参加者を相手に同時に対局する2面差しも行われた。

• 会場には全米から32人が参集し、個人戦や支部対抗戦が行われた。個人戦は3回戦で、2勝した人がAクラス、その他の人がBクラスとなる。2日目にクラス毎に個人戦が行われ、優勝者が決まる。
• 支部対抗戦はシカゴ、ニューヨーク、ロサンジェルス、サンフランシスコの各支部と、その他支部チーム、プロチームの6チームで行われ、熱戦が静かに繰り広げられた。

• 第23回大会の全米チャンピオンに輝いたのは、個人戦Aクラスを制覇した弱冠15歳の和田はなさん。同じく15歳の藤井聡太棋士がデビュー以来29連勝を記録した事が話題となる中、和田さんの優勝は全米将棋大会にとっても快挙だった。

• 和田さんは現在両親と共にヒューストン在住。今年中にも帰国予定で、帰国後は女流棋士を目指すという。はなさんの姉の和田あきさんは、既に女流棋士となっている。
• シカゴ支部の監督兼世話役を務める山下好朗さんによると、決勝戦相手の生田さんも大阪大学将棋部出身の強者だったが、はなさんの完勝だったという。

• その他の成績は:
・ Aクラス 2位:生田さん、3位:冨田さん
・ Bクラス 1位:大西さん、2位:番野さん
・ 支部対抗優勝:LAチーム(冨田さん、生田さん、小原さん、松本さん、小幡さん)

• 昨年10月に福岡県北九州市で開催された第7回国際将棋フォーラムではLAチームの冨田さんがAクラスで優勝し、世界大会の頂点に立った。世界大会BクラスでもNY支部の鈴木さんが優勝しており、全米将棋大会のレベルは高い。

• シカゴ支部長の野澤さんは2001年以来、全米大会で数回優勝しており、米国の将棋プレーヤー達から四段と認められる腕前。「全米大会には各地から旅費をかけて集まってくるので、精鋭が集まる」と話す。
• 将棋の魅力について野澤さんは「生活、仕事、人生などを将棋に置き換えられると思います。いろいろな駒があり、それをどう使っていくか、勉強してもまだ勉強すべきことが山ほどある。非常に奥が深いゲームですね」と語った。

• 今大会の特記すべき事に、NY、LA、SFから3人の子ども達の参加があった。山下さんは、藤井聡太棋士の活躍で将棋をする人の裾野が広がっていると語る。

• 棋士の養成機関「奨励会」の教官を務める近藤プロは、3人の子ども達について「殆ど考えずにパチパチやる、あれが大事なんですよ。直感で、特に子どもの時は1秒で差す、それがきちっと筋に入るかどうかを見ます。みんな結構いい筋をしてましたね」と語った。

• アメリカ人の将棋ファンも少なくない。シカゴ支部は元々、アメリカ人によって発足した。創始者の一人、デイヴィッド・ロックウェルさんは「強いプレイヤーがたくさんいて将棋が難しくなっているが、とても良いことだ。ベスト・プレイヤーやプロが日本から来てくれて、本当に素晴らしい大会になっている。これからもっと子ども達が来てくれるといいんだけど」と語った。

• 今年の全米大会には大阪にある「関西駒の会」から4人が訪れ、将棋の駒作りを紹介した。同会は「日本将棋連盟関西駒の会」のメンバーで駒作りを趣味とする人達のグループで、自分の駒を持ちたいという人に駒のセットを提供している。
• 駒の材料となるのは本柘植で、産地によって模様や硬さが異なる。駒の形に切った本柘植の上に「王将」などの文字を書いた紙を貼り付け、彫刻刀で彫って行く。彫ったところに黒漆を塗り、乾いた後で紙やすりでこすり、仕上げていく。好みによって角を立てたり丸みを出したりしながら、唯一の駒セットを作って行く。大会参加者も駒を紙やすりでこすり、駒作りの最終工程を経験した。

• 関西駒の会のメンバーの清水さんは、自分の駒を作る魅力について「愛着が湧きますね。字の形や木の素材で変化が出るんですね。例えば将棋道場で、自分の駒でやらせて下さいと言って先生に指導してもうんですよ」と語る。

• シカゴ支部の山下さんは、「毎年、決勝戦をやる時に自分の駒を使っています。やはり手触りが全然違いますね。Comfortableと言うか、将棋をやりたい気持ちになりますね。使い込むほど良くなるんですよ。やはり道具は道具で大事ですね」と語った。

• 関西駒の会のメンバーの諏訪さんは、中学時代に将棋部に入り、大学卒業後は将棋専門のライターとなった。将棋の面白味について「同じ場面が出ないので毎回新鮮な気持ちでできる事と、国籍・年齢を問わずに対局でき、すぐに友達になれるところですね」と話す。

• 同会の小林さんは「小学校から会社に入るまで将棋だけは一番強かった。将棋は自信に繋がる競技で、集中力が凄くつくんです。負けた時の悔しい思いをバネにしてまた頑張ろうという気持ちは、社会人になっても繋がっていると思います。50を過ぎてからまた将棋をやり始めて、今将棋を普及したいと思うのは、やはり将棋に対して恩返しをしたい気持ちからです」と語った。

プロインタビュー:
近藤プロに訊く若手棋士の養成

• 近藤プロが教官を務める棋士養成機関「奨励会」では、東京で約100人、大阪で約70人が学んでいる。三段から六級まで合わせると200人弱の生徒がいる。三段から四段に昇段してプロになるのは半年毎に2人だけという厳しい世界だという。

Q:奨励会ではどの様な教育を?

• 近藤プロ:将棋の強弱に関係なく、挨拶、言葉遣いを含めた身だしなみ、時間厳守、そう言った当たり前のことができる子を育てるのが我々の役目です。それが出来てから将棋だって事をね、徹底的に言うんですよ。

Q:奨励会に入るだけで天才と言われる子ども達の8割が去って行く厳しい世界だそうですね。

• 近藤プロ:将棋の世界は努力、才能、運ですね。努力は当たり前。才能は将棋が好きか嫌いかという事ですね。嫌いだったら努力しないから伸びません。最後は運。これはやはりね、努力した人を将棋の神様は肯定しますよ。下の子でも努力した子はいい流れになります。努力・才能・運が3つ揃って、2割ない難関を突破する、そういう世界ですね。

Q:報道陣や観戦者に囲まれ、何時間も将棋を続ける集中力は?

• 近藤プロ:やはり奨励会に入って、みんな鍛え上げていますから。
• またプロになって、自分達の将棋で勝つか負けるか、そういったプロの意地もありますよ。まず集中力が無いとものにならないですからね。
• それとプロの責任感ですよ。自分達がみっともない格好をしていれば、周りの人達に迷惑をかけるので、いい気風を作ろうと言うことですね。それをファンの人が見て面白いと感じてもらえば、みんなも納得ですね。
• 羽生善治さんが尊敬されるのは、そういうところですよね。やはりいい気風を作るんです。負けてもみんなが見て納得する、そういうのが次への勝利につながる。羽生さんが勝つと言うことは盤上以外でもね、人間的にも立派なんですよ。そうでなければ、あれだけトップで勝ち続けられないですよ。

Q:日経新聞に将棋のコラムを書いているそうですね。

• 近藤プロ:2004年からずっと書いています。先日は大阪まで藤井聡太さんの将棋を見に行って、書きました。
• コラムは全部原稿用紙に手書きです。パソコンは余り使いませんね。ケイタイ電話も少し前まで持っていませんでした。(取り出して見せてくれたケイタイは、購入時の箱に入っていた)
• 大先輩に手書きは手書きの味が出ると言われまして。新聞のコラムは対局の風景や人物像などが大事だと思っています。経済新聞なので、駒が「落ちた」とか「下がった」という言葉は使わないようにしています。私も商売人の子なので、縁起も担ぎます。実家は新潟で笹団子やちまきを全国に出しているんですよ。

Q:ありがとうございました。

伊藤明日香棋士に訊く
女流将棋の世界

Q:女流棋士としてのご活動は?

• 伊藤プロ:日本で女流棋士が60人ぐらい活動しています。私はその女流棋士会の役員を務めているので、女性育成の方を主にやっています。
• 中学生の女流プロも誕生していますが、藤井聡太先生ほどの活躍はないんです。でも、女性も10代から40代までが凄く頑張っていて強い人達が出るので、男女どちらも活躍してくれる世界になれば良いと思っています。

Q:女性と男性の壁はありますか?

• 伊藤プロ:もちろんありますね。違う育成機関で勉強して行くので、やはり男性の方が厳しいんですね。そこをくぐり抜けてプロになるので、やはり男性の方が実力としてはしっかりと付いて行くと思います。

Q:今大会で、指導はどの様に?

• 伊藤プロ:1対1でやると全員と将棋をさすのが難しいので、今回は2面差しでやっています。多面差しというのがあって、プロ1人に対して2、3人を相手にやります。日本では1対6、1対8でやるのが普通なので、駒がどこにあるのか全部覚えています。
• 今大会は弱い人のレベルがもう強くなっているので、気が抜けないです。

Q:ありがとうございました


静かな熱戦を繰り広げる参加者


2面指しで対局する近藤プロ(左)


「関西駒の会」の、左より清水さん、小林さん、丸尾さん、諏訪さん


女流プロが開発した動物将棋。基本ルールは将棋と同じで、漢字が読めない子どもや外国人でも簡単に覚えることができる。ボードゲーム大国と言われるドイツの見本市で紹介され、海外で人気を集めている。袋はすぐにゲームが楽しめるよう、諏訪さんが手作りしたもの。


3人のプロを真ん中に、記念撮影する全米将棋大会の参加者