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シカゴ・グルメで日本の味紹介
格之進の千葉シェフによる和牛料理の実演も

• 食の祭典「ボン・アペチ・シカゴ・グルメ」が9月26日から30日まで開催され、いろいろな場所でグルメ・イベントが行われた。29日と30日の2日間はシカゴ市のミレニアム・パークに、いろいろなレストランの料理を食べ歩きできるブースやグルメ・テイスティング・パビリオン、テイスティング・テントが設置された。
• 今年は展示ブースに67団体が出展し、各々の料理、飲み物、製品、サービスなどを紹介した。
• 在シカゴ総領事館と日系企業の協力によりジャパン・パビリオンが設置され、日本の味や観光スポットなどの紹介が行われた。
• 29日にはヨシズ・カフェが和牛1,500皿を配布した。また、Mスクエアがポキ・ボウルを提供した。30日には、なおき寿司がポキ・ボウルを、スラーピング・タートルが巻き寿司のわさび味噌を提供した。
• この他、メキシコやタイなどの民族料理、シーフードや腹ぺこのオオカミなどといったテーマ毎に12のグルメ・テイスティング・パビリオンが設置され、各々のパビリオンでは多くのレストランが入れ替わり立ち替わり自慢料理を提供した。
• また、グレート・ローン・テイスティングという4つの大テントの中では、77団体がワインやスピリット、ウィスキーなどのアルコール飲料を紹介した。JETROシカゴも出展し、日本酒各種を紹介した。

• 会場内のメイン・ステージとカリナリー・ステージでは有名シェフによる実演が終日行われた。30日にはメイン・ステージで、日本のレストラン「格之進」の千葉祐士シェフとシカゴの柳橋隆シェフとのコラボレーションにより和牛の紹介が行われた。

千葉シェフと柳橋シェフによる実演

• シカゴ・グルメのメインステージの最後を飾り、日本の「肉おじさん」と呼ばれる千葉祐士シェフが、シカゴ市でスラーピング・タートルなどのレストランを展開する柳橋隆シェフと共に、しゃぶしゃぶやすき焼きにして食べる和牛の食べ方を紹介した。司会を務めたのはシカゴの食のレポーターとして有名なスティーブ・ドリンスキー氏。シカゴの弁護士ジョージ・コバヤシ氏がボランティアで通訳を務めた。

• 千葉シェフは故郷の岩手県一関市と東京、そして世界を食で繋ぐというコンセプトを持ち、東京に11店、岩手に3店のレストラン「格之進」を経営している。和牛を一頭丸ごと仕入れ、肉を熟成させ、そのうま味を引き出して提供するのが特徴。

• 千葉氏によると、今や世界では「和牛」という言葉が本来の日本産の牛肉という意味を離れ、一つの牛肉ブランドとして認識され、海外でも生産されているという。ステージでは日本で生産される和牛と海外産の違いについて説明した。

• 千葉氏によると、日本の和牛は、子どもを産む生産者と、生まれた子どもを育てる肥育者の2つに分かれる。小牛は生後10ヶ月の時に市場に出され、肥育者が小牛を見て、身体が大きくなる、または小柄だが味の良い牛になるなど、好みの牛を買って育てる。
• 肥育者は一頭一頭の個性を引き出すように育てて行く。海外で生産する和牛は同じ場所で肉になるまで一貫して飼育される。ここが大きな違いだと千葉氏は語る。
• また、日本の和牛は和牛の両親から生まれるが、海外産の和牛はアンガス種の母牛に和牛の種を掛け合わせたもので「和州牛」と呼ばれている。

• 和牛の食べ方はしゃぶしゃぶやすき焼きのような薄切り肉で食べる。霜降りであるため脂が多く、大きなステーキには向かない。

• 日本の和牛は一頭一頭丁寧に肥育するため、全ての部分が美味しいのだという。千葉氏のレストランでは1頭を丸ごと仕入れて82の部位に分け、それぞれの部位の異なる味に合わせて料理していると語った。

• 和牛には赤ワインも良いが、ワインは食べものの色に合わせるという選び方があり、白っぽい霜降り肉にはむしろ白ワインが合うと千葉氏はアドバイスを送った。また、和牛には日本酒がぴったりだと日本酒をアピールした。


インタビュー:シェフ千葉祐士氏

• Q:シカゴ・グルメに来られたのは?

• 千葉:ヨシズカフェのオーナーの勝村伸子さんがカンブリア宮殿という日本のテレビ番組を見て、私のことを知ったそうです。岩手県と東京、はたまた世界を食で繋ぐというコンセプトで事業展開していますので、伸子さんがぜひとシカゴ・グルメに呼んで下さいました。総領事館でも和牛や日本酒のPRをされると言う事で、ぜひ来て欲しいというお話を頂きました。

• Q:レストランをやろうと思われたのは?

• 千葉:牛の目利きを生業にしている家で生まれ育ちました。一旦企業に務めて故郷に戻り、1999年にレストランをオープンしました。生産者が自分で作ったものを売る、ダイレクト・マーケティングの時代が来るだろうと思っていました。ですから、牛を作って、お客様が肉を口に入れる瞬間のところまでの仕事をしてみたいと考えたんです。つまり、自分のレストランで消費してもらう事にチャレンジしようと始めたんです。

• 10年ぐらい前から牛だけでなく、一関地域全体の産物を含め、それで一関と東京・世界を食で繋ごうとやっています。みんなで一緒に地域活性ができるという考えです。
• 一関地域では過疎化が進んでいます。父の中学校の同級生は200人いました。兄の時代には100人、私の時には67人、今12歳の娘が来年中学に上がると同級生は18人です。これから大変なことになります。
• 父や私の母校の小学校が8年前に廃校になりました。その小学校を私の会社の本社にさせてもらっています。体育館をハンバーグ工場に変えて、今年は100万個を目標に生産しています。東京を中心に全国に発信しているんです。
• 少しでもこの地域に人が来て人口が増えて、地方の素晴らしさを伝えるようなハブにしたいですね。格之進というお店がプラットフォームなればいいと思っています。

• 食には様々な可能性がありますね。私からすると、消費者の消費活動は投資活動なんですよ。美味しいものを食べてお金を払うと、そのお金が誰に行くか分かる。そこまで考えて消費する人が増えれば、郷土文化やテロワールや歴史などいろいろな物に支えられている食というものを護ることができると考えています。そのようにテロワールを護ることが日本の産業や経済を護る事だと思っているんです。

• Q:熟成肉とは?

• 千葉:肉はタンパク質なので、熟成させると自己消化酵素プロテアーゼが活動し、タンパク質の繊維がどんどん分断されていきます。するとタンパク質がペプチドという状態になり、それがもっと進むとアミノ酸になって行きます。うま味の基になるような香りの成分やうま味の成分が増えていきます。また、組織を分断させるので硬いものが柔らかくなってうま味が増すわけです。お客様に提供できるまで5、6週間かかります。
• 私がやっている熟成肉は、アメリカで言うドライ・エイジド、ドライ・エイジング・ビーフとは違います。

• Q:牛を1頭丸ごと仕入れるのは?

• 千葉:私は生産者を応援したいという明確なコンセプトを持っているので、牛を育てた生産者が、ヒレだけ下さい、あとの残りは要りませんと言われたらどうします?  全てを受け入れることが重要だと思っていて、それをどうやってお客様と一緒に消費をしながら支援して行くかという事が重要だと思っています。

• Q:それで、いろいろな部位を生かしたコースがあるのですか?

• 千葉:はい。様々なお肉のイノベーションを起こしながら、お肉がどうやったら最適に美味しく食べれるのかということを研究しています。

• Q:格之進では肉を塊で焼くそうですね。

• 千葉:格之進が開発したやり方で、理論的な話があります。
• 熟成肉にするとうま味が強くなって行くので、それで水分がちょっと抜ける。だからお肉の水分をできるだけ乾燥させないために、焼く時に表面積を極力小さくするわけです。それには塊の状態がいい訳です。

• Q:どうやって上手く焼くのですか?

• 千葉:水風船理論というのを私が作りました。お肉の塊が水風船だとしたら、どうすれば水の中心と外側が均一の温度になるか考えます。肉の繊維が縦方向になっていれば熱は上に上がりやすい。それを考えながら、焼いているんです。

• Q:格之進のハンバーグが人気と聞いています?

• 千葉:一番のこだわりは、当たり前だが添加物は一切使わない。その理由は、生産者は哲学者であり思想家だと思っているので、生産者をある程度限定します。生産者の思いがお肉に反映されているので、生産者の良さをしっかりと引き出すために、添加物は使わないんです。
• 地元にメダカ米というのがあります。減農薬で米作りをしているので、メダカの餌になるミジンコなどが豊富で、メダカが生息できるんです。そのメダカ米と南部杜氏の麹菌を使って塩麹を自社で作ってハンバーグの肉に混ぜています。
• その他にも牛肉や脂のことなど、たくさんあります。

• Q:シカゴは牛肉の集積地ですが、どうですか?

• 千葉:本当に美味しいですよね。今日も肉の卸屋アレン・ブラザーズに行って来ました。クオリティが高くて、食べたら美味しいだろうなぁと思いました。

• Q:因みに格之進のお任せのコースのお値段は?

• 千葉:店にもよりますが、普通は6000円台から18,000円台までずっとあります。私が対応するのは、2万円からというのもあります。

• Q:最後にビジネスの成功のカギは?

• 千葉:お客さんがリピートしてくれなかったら飲食店はダメなので、お客さんに良くないところや、どうして欲しいかを聞いて、それを一つ一つやっただけです。どうやったらもっと喜んでもらえますか?とずっと聞いてきました。

• Q:どうもありがとうございました。

 

日本酒と和牛のテイスティング
食品業界に和牛料理のバラエティをアピール

• シカゴ・グルメ翌日の10月1日には、エバンストンにある総領事公邸で食品業界のスペシャリストを集め、日本酒と和牛の紹介イベントが行われた。
• 会場にはテンジン・ワイン&スピリッツ、ジョートー・サケ、ヴァイン・コネクションズが日本酒を出展し、和歌山県の「黒牛」、広島県の「誠鏡」、新潟県の「Cowboy」などを紹介した。

• 挨拶に立った伊藤直樹総領事は「今日は特に、日本酒と和牛が如何に良く合うか体験してみて欲しい」と呼び掛けた。また、今日の牛肉は鹿児島産の和牛で、すでにシカゴ地域で流通しており、市内のレストランで味わうことができると案内した。
• 伊藤総領事によると、ヴァイン・コネクションズが紹介した日本酒「Cowboy」は、9月にネブラスカ州オマハで開催された中西部会で紹介された。ネブラスカのピート・リケッツ州知事が気に入り、キッコーマンの茂木友三郎会長が乾杯の音頭を取る時に、Cowboyが使われたという。少しパンチが効いた力強い日本酒だった。

• 千葉シェフは「和牛の能力は肉を単純に食べるだけでなく、いろいろなものと合わせると更に和牛でしか味わえないものを引き出すことができること。それを今日は体感して欲しい」と話し、寿司飯を和牛で囲み、イクラやウニでトッピングした和牛寿司「サーフ&ターフ」を提供した。また、薄切りの和牛をプレートで焼き、ポン酢やすき焼きソースを付けて提供した。


日本ブース


シカゴ・グルメ会場では音楽のエンターテインメントも


和牛について説明する千葉祐士シェフ(中央)。右はシカゴの食のレポーター、ステーブ・ドリンスキー氏、左はボランティアで通訳を務める弁護士のジョージ・コバヤシ氏


和牛霜降り肉の薄切り



和牛&酒テイスティングで試飲する食品業界の人々



中西部会で話題になった日本酒”Cowboy"


和牛寿司


千葉祐士シェフ