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JCCCビジネスフォーラム 「働き方改革・
人手不足時代の女性の活躍推進への取り組み」
エキナカを成功させカルビーで活躍する
鎌田由美子氏を迎え

• JR東日本でエキナカ事業を成功に導いた鎌田由美子氏を迎え、シカゴ日本商工会議所(JCCC)商工業政策運営委員会によるビジネスフォーラム「働き方改革・人手不足時代の女性の活躍推進への取り組み」が9月27日、ハーパー・カレッジのウォージック・カンファレンス・センターで開催された。
• また、各社における女性の活躍推進への取り組み(ダイバーシティ)についてのパネルディスカッションも行われた。

鎌田由美子氏講演会

• 鎌田氏は1989年、JR東日本が女性の大卒を初採用した年に入社した。当時は、女子社員用のトイレがないという時代だった。現場に出たいと希望した鎌田氏は切符切りから始め、大手百貨店出向や駅ビル勤務を経て、2001年に駅構内を全く新しい空間・商業施設に変えるプロジェクト・リーダーに抜擢された。これはJR東日本の中期計画の一部で、現在は買い物や飲食を楽しむ人が集まる「エキナカ」と呼ばれる場所となっている。

• 同プロジェクトは3人でスタートした。課題は大宮駅と立川駅を「通過する駅から集う駅」に変えること。初電から終電まで駅に立って観察すると、駅構内を駆け抜ける利用客を目の当たりにして意気消沈した。だが、一消費者として「こんな駅があったらいいと思う」という空間づくりは間違っていないと信じ構想を練った。集う駅にするという総論には皆が賛同するものの、各論になれば壁は厚く多難だった。

• 構内の天井と床を調和させ照明を変え、雑多だった空間をすっきりさせた。室外機を屋上に上げ、人が熱風に当たる不快感をなくした。3K「暗い、汚い、怖い」と言われたトイレもアロマ漂う綺麗なトイレに変えた。清掃も1日数回の清掃から、汚れたら清掃するというルールに変えた。グループ会社のみだった構内への出店を、一般企業に開放した。
• だが、この空間を実現するには、部署毎に縦割りになっているJR東日本社内に横軸を通す必要があった。例えば鎌田氏らがこだわっていたのは空間全体の雰囲気で、床の色や素材感だった。一方、床の担当部署がこだわっていたのは床の摩耗度、滑り抵抗度、清掃のし易さだった。このような社内調整に一番エネルギーを注いだという。

• 社外面で一番苦労したのは店舗の呼び込みだった。出店を頼めば10社中9社に断られた。駅などに出店すればブランド・イメージが壊れると、その理由は辛辣だった。だが、熱意に負けたと出店してくれた店舗の売り上げ増が数字に表されると、他社から出店のオファーが続出した。

• 鎌田氏は「駅の中は非常に新しいマーケットだ」と語る。駅の利用者の6割から7割は男性であり、花束の自動販売機が大ヒットした。また、3月14日のホワイトデーには男性の長蛇の列ができた。

• エキナカが成功すると、「何だ、君たちはこういう事がやりたかったのか。もっと早く言ってくれたら、俺たちはこういう協力の仕方があったんだ」と鎌田氏にいろいろな人達が話した。実際は何度も繰り返し説明したが伝わらなかった。「伝わったら新規ではないんですね。『例えば、あんな所』と言えないことが辛かった」と鎌田氏は語る。

• 鎌田氏はJR東日本の子会社の社長を務めた後、本社に戻り、リンゴ酒のシードル工房青森など複数の地域活性化を成功させた。その後同社の研究開発センターフロンティアサービス研究所副所長となり、2015年にカルビー社に移籍した。

カルビーのダイバーシティ(女性進出促進)

• ジェンダー・ギャップ・インデックスを見ると、日本の女性の活躍は144カ国中114位。日本は教育や健康状況はトップクラスだが、管理職比率が圧倒的に低いと鎌田氏は語る。

• カルビーでは2009年に松本晃氏が会長兼CEOに就任し、ダイバーシティ(女性進出促進)に着手した。松本氏は社員に対し、ダイバーシティ促進を「やりたくなければ会社を辞めるか、私をやめさせるか2つの選択肢がある」とトップのコミットメントを明確にした。それは会社の成長に女性の活躍が不可欠だという意味だった。

• カルビーにはダイバーシティをやり易くする「家庭と仕事の両立支援制度」として、フレックスタイムやフリーアドレスなど数々の制度がある。基本的に出勤しなくても良いが、みんな会社が好きだから会社に来るのだという。

• フリーアドレスとは、自分の席が決まっていないこと。自分のコード番号を入力すると、今日座るべき席がランダムに表示される。いろいろな人とコミュニケーションができ、上司の監視から解放される。また、在宅勤務でも空席を作らない。
• カルビーの女性管理職比率は2010年4月の5.9%から、2018年の4月は26.4%に上がった。2020年には30%を目指す。

• カルビーの女性管理職はワーキング・マザーが多く38%を占める。しかし、時短勤務を取る人は20%と少ない。

• 今年の6月に松本氏は退任したが、ダイバーシティ方針は変わらない。女性が(管理職に適任となるまで)育つのを待つよりも、とりあえずやってみて、ダメであれば戻る。一旦休止して、そしてもう一度やる。カルビーは、それでなければ女性管理職は育たないという考えでダイバーシティをやっているという。

• 鎌田氏は「世の中の流れが激しい中、一番大事なのは変化にどう立ち向かえるかだ。それが企業の成長力でもある。AIがこれほど進む中でどう自分が対応していくかが重要だ」と語った。

パネルディスカッション

• パネルディスカッションは、山本真理氏(バーンズ&ソ-ンバーグ法律事務所)をモデレーターに鎌田由美子氏(カルビー)、渡辺 久美子氏(グラントソントン太陽グループ会計事務所)、宮森洋氏(ビームサントリー)をパネリストに、各社における女性の活躍推進への取り組み(ダイバーシティ)についてディスカッションが行われた。
• 渡辺氏が勤める会社は、米企業の「働くお母さんにとってベスト100」に13年連続でランキングされている。全従業員数は6000人、女性の割合は44%、女性管理職比率は47%、だが、エグゼクティブは20%。
• 同社では2年前にFTO(Flexible Time Off)が起用された。規定はあるが有給休暇取り放題と言うもの。皆が休みを取っている訳ではないが、自らスケジュールを組んで自らオーナーシップを持って休む日を決めることで、人の考え方が非常に変わるのだという。渡辺氏は「人気のプログラムになっている」と話す。

• 宮森氏が務めるビーム・サントリーでは、女性の管理職比率は30%。一方、日本のサントリーは現在10%

• ビーム・サントリーでは女性活躍促進に4つの柱を掲げている。

• 数値目標設定。2020年までに女性管理職比率を40%に引き揚げる。
• トップによる女性活躍促進の宣言と、下へのカスケード・ダウン。
• 管理職への昇進及び管理職採用時に、女性登用の可能性をを確認する。また、管理職候補にも女性層を厚くする。
• 女性活躍促進を含むDiversity & Inclusionを重視する組織文化・風土作りを行う。

• 同社では女性の活躍を推進するために、柔軟な勤務形態を運用をしている。在宅勤務など、家庭の事情に合わせて対応する。女性従業員のニーズをとらえ、柔軟に行わないと離職のリスクにもなるという意識があると宮森氏は語る。

フレックスタイムとテレワーク

• 渡辺氏は忙しい時でも夕方は帰宅し、子どもと一緒に夕食を食べ、子どもの就寝後に仕事をする。出張時にはITを使い、子どもの宿題を見たりしている。子育てにフレキシビリティは大事だと話す。

• カルビーではテレワークといくつかの制度が組み合わさったものがある。特に子育て中の人には使って欲しいと語る。子どもの発熱、幼稚園への送迎など、連絡があれば在宅勤務にすぐに切り替えができるという。
• 鎌田氏は「制度があっても使い易い環境がセットになっていないと、それだけでは難しい。制度を上から使うようにしないと難しいと思っている」と語った。

• 宮森氏が指摘するテレワークについての2つの主要課題は①自宅でのオンライン使用による情報セキュリティの問題、②残業コントロールの問題。

• 鎌田氏によると、日本では過労死問題などから残業は「するな状態」になって来ている。必要な時は事前に申請しないと残業が認められない会社も増えて来ているという。

• 宮森氏は「日本は残業が多い。勤労は美であるというような発想から、効率的に仕事をするような形に我々が変わって行かなければならないと言う事を強く感じている」と話す。  会社側に女性の活躍を促進する環境が整っていく中で、宮森氏は「女性の方も、もっともっと貪欲に大きな仕事、更に言えば上のポストを取るようなチャレンジ精神、意欲をもっと見せた方がいいんじゃないかと思う時もある。バックアップ面が整って行く、女性自身もやる気を前面に出す、それが車輪になって回って行くとダイバシティの推進がいっそう進むという気がします」と語った。

• 鎌田氏は「世界の中でも日本の労働生産性が低いデータを目にする。そこのところが課題だが、その生産性の低さと、おもてなし的な細やかさの文化が重なっているのか、全く違うものなのか、人によって意見が異なるところでもある」と指摘した。


鎌田由美子氏プロフィール

• 鎌田氏は現在、カルビー株式会社上級執行役員と事業開発本部本部長を務める。
• 1989年4月にJR東日本に入社。大手百貨店出向や駅ビル等勤務を経て、2001年よりプロジェクトリーダーとしてエキナカを手掛ける。
• 2005年「ecute」を運営するJR東日本ステーションリテイリング代表取締役社長。
• 2008年より本社事業創造本部にて「地域活性化」「子育て支援」を担当。駅型保育の拡大や六次産業化としてのシードル工房青森「A-FACTORY」、越後湯沢駅改良、地産品ショップ「のもの」等を手掛ける。2013年JR東日本研究開発センターフロンティアサービス研究所副所長。
• 2015年1月JR東日本を退社。同年2月よりカルビー㈱上級執行役員としてB to C事業や新規事業を担当。これまで総務省、内閣府をはじめ国、行政の各種委員を歴任。
• 現在は、社外取締役やオリンピック/パラリンピック持続可能性街づくり委員やNHK国際番組審議委員、いばらき大使等を務め


ハーパー・カレッジのウォージック・カンファレンス・センターで開催されたビジネス・フォーラム


鎌田由美子氏


「エキナカ」で変貌した駅構内の前(左)と後。鎌田氏プレゼンテーションより。