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席を立つな!  この映画はそこで終わらない
まさかの大ヒット、無名俳優による
「カメラを止めるな!」


• 朽ちた浄水場ビルの一角に追い詰められた逢花に、ゾンビになった恋人が迫ってくる。恐怖に駆られ「止めて、ケンちゃん! 私よ!」と絶叫する逢花。そこに「カット!」と日暮監督が泡を飛ばし、気まずい雰囲気がスタッフの間に広がる。
• このシーンの撮影は42回目。この映画に懸けている半狂乱の日暮監督は「本物の恐怖を出せ!」と逢花を激しく罵る。

• メイクの晴美が仲裁に入り、撮影は一旦休憩に。ビル内に残った逢花と恋人役の神谷に、晴美が「表向きは浄水場として建てられたけど、実は日本軍の人体実験場だった。死人を生き返らせていたって・・・」と話し始める。ぞくっと鳥肌立つ3人足元に、ちぎれた片腕が投げ込まれる。

• 血みどろのサバイバルゲームとなった撮影現場で何が起きるのか。37分のゾンビ映画はあくまでもワンカット、終わるまでカメラは止まらない。だが、このゾンビ映画は、ただそれだけで終わらない。「カメラを止めるな!」は2倍も3倍も楽しめる、文句なしの娯楽映画だ。
• 無名の俳優で作られた同映画は、いち早く映画界の関心を惹いた。一般公開される半年前の2018年3月、エイジアン・ポップ・アップ・シネマの創始者でエグゼクティブ・ディレクターのソフィア・ウァング・バシオ氏も同映画に注目し、いち早くシカゴでの上映を決めた。

• 同映画は同シネマのシリーズ7の最後を飾り、AMCリバーイースト21劇場で11月14日に上映され絶賛を浴びた。

• 「カメラを止めるな!」は、監督と俳優の養成スクール・ENBUゼミナールのシネマプロジェクト第7弾作品で、短編映画で頭角を現していた上田慎一郎監督待望の長編映画。上田監督は同ゼミナールのオーディションで選ばれた無名の俳優達の個性を見極め、3、4年の間温めていたプロットをこのメンバーならば行けると「カメラを止めるな!」に取り掛かった。脚本も俳優達の個性を生かした「当て書き脚本」で、役を演じる俳優達のキャラクターも、そのままだという。
• プロットは、上田監督が小劇場で上演していた少し変わった構造に興味を持ち、試行錯誤で作り上げたもの。小劇場には最初に映画化の話をしていたが、実際に出来上がった作品はオリジナルの構造だけが残ったと、上田監督は同映画公式サイトで述べている。

• 「カメラを止めるな!」は2007年11月に6日間限定で、東京で先行公開された。すぐに口コミで拡がり、劇場は満席となった。2018年6月に東京の2劇場で本格公開され、10月末には北海道から沖縄まで、日本全国の300劇場で上映される大ヒット作品となった。

• エイジアン・ポップ・アップ・シネマによるAMCでの上映会には、狂気沙汰の日暮監督役を演じた濱津隆之氏が舞台挨拶に訪れた。劇場舞台では伊藤直樹在シカゴ総領事が挨拶した他、Q&Aも行われ、タカハシ・マサミ氏が濱津氏の通訳を務めた。「カメラを止めるな!」の制作費は$27,000、撮影日数は8日間という驚くべき低コスト映画。しかし、「お金が全てじゃない」ことを証明できる映画の一つに違いない。

主役:濱津隆之さんインタビュー

• 出現したゾンビに驚くよりも本物の恐怖シーンの撮影に狂喜する日暮隆之監督役を演じた濱津隆之さんは、以外にも柔和な表情を持つ、自分を飾らない人物だった。

Q:濱津さんは大学卒業後に吉本興業に入られて、研修後にコントをやられていました。その後DJに変身、30歳になる前に役者の道に入られました。今回映画の主役になられてどんなお気持ちですか?

• 濱津:あー、いやー、マジかと思ったですね。嬉しいというよりも、それ以上にプレッシャーみたいなものを感じてはいましたね。一応その様なポジションを頂いたので、よし、やらなきゃという事にはなりましたね。

Q:どんな経緯でEMBUゼミナールのオーディションに?

• 濱津:今37歳なので、6,7年役者をやっていたんですよ。去年、映画に興味を持ってオーディションに応募しました。

• EMBUの企画で、毎年2人の監督を呼んできて2本の映画を作っています。オーディションの応募者の中から24人が選ばれ、その24人から監督がそれぞれ12人ずつ選ぶんです。上田監督の方に選んで頂いて、それからいろいろな事が積み重なって今ここにいるという感じです。

Q:オーディションで、ああいう感情的な監督の演技もして見せたのですか?。

• 濱津:オーディションの時、相手のことを怒りながら褒めて下さいと言われて、相手の女の子とやった事はありますけど。

Q:リハーサルをやるうちにどんな気持ちに?

• 濱津:この役が一番不安でしたね。私生活でもキレたことないんですよ。

Q:でも思い切りやってますね。

• 濱津:何とかやれましたけども。(笑)
• ああ言う役は本当に初めてだったので、ああ言う風にやるのなかなか大変でした。ま、自分ではあるので、自分自身が出ればいいなと思ってやっていました。

Q:撮影現場はどこですか?

• 濱津:茨城県の水戸にある、浄水場の廃墟です。無料で撮影に貸し出している所で、上田監督が最初の視察で決めたようです。敷地も広くて、上手い具合に地下に潜っていくトンネルがあったり、階段があったり、変なパイプの謎のマシンもあって、一つ一つが全部、本当に完璧な所ですね。

Q:実際の撮影は何日で?

• 濱津:映画全体は8日間で撮りました。浄水場のワンカット部分は近くの施設に泊まって、2泊3日で撮るのを2回やりました。
• 1日2回ぐらいが限度だったんです。1回やるとみんな血だらけになるので、リセットしてまた初めから撮らないといけない。1日に3回が限度ですね。
• 全部で6回撮りましたが、最後まで撮り切ったのは4回です。カメラマンが転んだ時にポーズボタンを押してしまったりして。
• 6回やるうちで、前の方が良かったというのはなかったですね。最初の一回も、それで終わらせるつもりで撮っていましたから。みんな全力でしたし、前に撮ったのを振り返るようなことはなかったですね。

Q:監督の役を演じて、これから監督になりたいのでは?

• 濱津:そんなことないです。無理です。束ねられないです。
• ワークショップの時に自分も監督をやらされたんですが、絵コンテなどもやったりして、全然無理でしたね。

Q:上田監督が映画の日暮監督みたいに半狂乱になったことは?

• 濱津:ないです。一回も怒らないですね。引っ張って行くというか、自然にみんなが着いて行くような感じの人ですね。トラブルさえも楽しんで行こうというような人です。ワークショップの期間も長かったので、チームワークみたいなのが出来上がってましたね、上田監督のお陰で。

Q:役名と皆さんの名前が殆ど同じでしたね。

• 濱津:みんなの名前が役名と一文字違いぐらい。監督が我々をオーディションで取ったのも一人一人の状態に魅力を感じてくれたので、いつも通りの、その人のままでやってくれと言うことでした。それもあって、一文字だけ違う名前にしたみたいです。ちょっとだけ自分とズレたところにいる別人というぐらいの感じでやってくれっていう、はい。
• 役者陣はやりやすかったですね。本当に監督はみんなに見せ場を作ってくれて。

Q:TOHOシネマズ日比谷の舞台挨拶、凄かったですね。泣いている人もいましたね。

• 濱津:東宝が初めて開いた日。あれは凄かったですね。僕も泣きそうになりました。
• みんな衣装を着て、その上にバレないように普通の服を着て客席に座って見ていました。見終わってからキャストが全員客席に立って、お客さんが驚くという流れだったんですけど、その前にお客さん達が立ってスタンディングオベーションを初めてくれたので、どうしていいか分からずにみんなが客席で埋もれているという時間がありました。良かったです、ホントにあれは。お客さんの拍手を聞いていて泣きそうになりましたね。

Q:この映画の筋書きが分かってしまうと面白くないので、今回の取材に苦労するところなんですが、好きなシーンを3つ上げて頂けますか?


• 濱津:録音マンがお腹を下して舞台裏の所でしゃがみ込むシーンが好きですね。監督役の自分がそのままメイクさんにメイクしてくれって言うんですけど、その時のメイクさんの「えーーっ」ていうリアクションが好きです。完璧なリアクションで凄いなと毎回笑っています。
• 自分のシーンですか? 風呂から上がって来た時に反抗的な娘がこの台本を読んでいて、それが嬉しくて、娘が部屋を出て行った後に、壁に掛かっている娘のキーホルダーをチョンと叩くシーン、あそこですね。

Q:今後のご予定は?

• 濱津:映画は今のところはありませんが、既に撮っている「魔法少年ワイルドバージン」が2019年に公開されます。テレビドラマの出演もちょくちょくと来ています。
• それと、急に街で声を掛けて頂けるようにはなりましたね。家族は母、姉、兄ですが、喜んでくれています。

Q:今後どんな役をやりたいですか?

• 濱津:もらう役が全て初めてなので、特に考えたことはないですね。役者をやって行くと言うことしか考えていません。コメディは好きですね。ナンセンスコメディを舞台でやっていたので。

Q:先月までアルバイトでラブホテルのお風呂掃除をされていたとウキペディアにありましたが、本当ですか?

• 濱津:本当ですよ。忙しくなって止めましたけど。ウキは誰でも作れるので、誰が出したか分かりませんが。

Q:映画が大ヒットして、これからお金は入るのですか?

• 濱津:この映画に関してのギャランティーは一切もらっていません。映画のお陰でみんな仕事のオファーをもらえるようになったので、そう言う意味で収入は増えてきていると思います。
• 日本では周りの人達から、もらった方がいいよと言ってくれる人が多いですが、当事者はそもそもこんなことになるとは思ってないし、企画自体もEMBUゼミナールもたぶんここまでの事になるとは思っていなかったというのが前提としてあるので、出演料に関してのモヤモヤみたいなのは、中にいる人間達には一切ないです。

Q:これから花嫁候補が出てくると思いますが、どんな女性が好きですか?

• 濱津:自分がそんなに普段喋らない、おとなしくしている方なので、真魚みたいにハチャメチャの方がいいかも知れませんね。

Q:どうもありがとうございました。


「カメラを止めるな!」が初上映されたAMCリバー・イーストの舞台に立つ濱津隆之氏


映画作りに半狂乱となる監督役を演じる濱津隆之氏


シカゴを訪れた濱津隆之氏