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オペラを身近に! 
ミニ・コンサートと活動紹介イベント
日系人強制収容を描くオペラ
「An American Dream」も3月上演

• オペラを日本・日系コミュニティに身近に感じてもらうことを目的に、リリック・オペラ若手歌手によるミニ・コンサートとリリック・オペラの活動紹介イベントが昨年12月12日に総領事公邸で開催された。
• リリック・オペラでは今年3月に、日系人強制収容時の人間模様を描いた「An
American Dream」をハリス・シアターで上演する。また、2020年には「蝶々夫人」の上演を予定している。同オペラのライアン・センターには昨年6月までバリトン歌手の大西宇宙(おおにし・たかおき)氏が所属していたことから、リリック・オペラと日本コミュニティとの繋がりが強まった。
• 因みに大西氏は12月1日にニューヨークで行われたPremiereオペラ財団国際声楽コンクールで見事に優勝を果たし、同時に、「ホロストフスキー特別記念賞」を受賞した。大西氏は今年2月にカーネギーホールで、シベリウスのクレルヴォ交響曲のソリストを務める。

• 同紹介イベントにはリリック・オペラの総監督でプレジデント兼CEOのアンソニー・トルード氏を始め、同オペラのメジャー・ギフツ・ディレクターのアンバー・カレン氏、リリック・アンリミテッドのバイスプレジデントのカイエン・ハリス氏、An American Dreamのステージ・ディレクターのマシュー・オザワ氏らが出席。日本側からはシカゴ日本商工会議所、シカゴ日米協会、シカゴ定住者会などから代表者が出席した。

• ミニコンサートでは、昨年ピッツバーグ・オペラのレジデンシーからライアン・センターに入った若手テナー歌手エリック・フェアリング氏がマドリン・スレティドー氏のピアノで、伸びのある歌声を余すところなく聞かせてくれた。モーツアルトを得意とするフェアリング氏は、マジック・フルートも披露、最後にはア・クリスマス・ソングを歌い、各々の胸に最高のクリスマス・シーンを蘇らせてくれた。

• フェアリング氏はアイオワ出身で、9歳の頃から地元のミュージカルで歌ったり、学校や教会の合唱団で歌っていた。同時に、水泳の選手でもあった。
• 人生の岐路は、高校のシニアの時にやって来た。高校最後のミュージカルに役がもらえず非常にショックを受けたが、声楽の先生のアドバイスに従い、クラシックのコンクールに出場した。そこで優勝などと言うマジカル・ストーリーはないが、初めてクラシックを習ったことで、クラシックに対する自分の情熱に気が付いた。自分の声がどんなにクラシックに合っているかを自覚し、歌詞にも魅了された。
• かくしてフェアリング氏はクラシックの道に進み、早い時期にいくつかの成功を収めた。2016年にボストン音楽院で修士号を収め、ピッツバーグ・オペラのレジデントとなり、2シーズン中にフィガロの結婚でクルツィオやバジーリオを、新オペラAshes & Snow (現タイトルSavage Winter)で主役を務めた。現在26歳で、将来を期待されている。

• 現在フェアリング氏はリリックのライアン・センターに属し、プロフェッショナルとしての訓練を受けると共に、リリック・オペラにも出演している。「ライアン・センターのプログラムは米国でベストだ」とフェアリング氏は言う。所属期間中にプロとして活躍するための技術だけでなく、人脈や劇団との繋がりなど、多くの機会が提供され、同センターを去る時にはフリーランスとしての全ての準備が整うのだという。

• 一人前になるまでに、主要キャストが事故や急病で出演できなくなった時のために代役として準備しておくカバーの仕事がある。短時間で連絡を受けて舞台に立ち、代役であっても正規キャストと同じ質のパフォーマンスが求められる重要な仕事だが、事故が起きなければ舞台に立つ機会は無い。だが、キャストに何かが起きれば大きなチャンスになる。大西氏もライアン・センター時代にはカバーの準備を怠らず、いくつかのチャンスを掴んだ。
• フェアリング氏も昨年秋には3つの役をカバーし、この春にも2つをカバーをする。出演者ほどの練習時間もなく、準備万端で待機しておくことは、出演者として役を演じるよりも難しいと語る。フェアリング氏は自宅のリビングルームをカバーする舞台と同じセッティングにし、立ち振る舞いなどをいつも練習しているという。「主要な役につけるまでに10年から15年ぐらいかかります。カバーを通じて多くの経験を積むことができます。忍耐、これが成功への第一歩ですね」とフェアリング氏は語った。

リリックとコミュニティ活動
日系人強制収容を描くオペラ

• リリック・オペラ・ハウスは世界で2番目に大きい。世界一はニューヨークのメトロポリタン劇場だが、リリックはメトロポリタンより100席少ないだけで、3,600席を誇る。ヨーロッパの平均は1,800から2,200席だという。
• リリックのアンソニー・トルード総監督は「オペラは素晴らしい芸術、エンターテインメントであり、誰にも分かり易いストーリーを物語るもの。そこに国境や民族間の壁はなく、何世紀も語り継がれている」と話す。

• トルード氏によると、リリック・オペラが教育的、文化的なサービスを通して、地元コミュニティと共に活動するイニシアティブを7年前に立ち上げた。この一環として企画したのが、日系人強制収容を背景とする人間模様の描写「An American Dream」。

• この企画を担当するカイエン・ハリス氏は、シアトルで「An American Dream」を見、劇場で収容生存者やその子孫達にも会った。ハリス氏は「これは非常に感情的、かつ美しく書かれたオペラで、シカゴでもやらなければと思った。誰もが理解する必要のあるストーリーです」と語る。

• ステージ・ディレクターを務めるマシュー・オザワ氏は日系アメリカ人4世で、過去に何度かハリス氏と仕事をしたことがあると言う。
• オザワ氏の父はハートマウンテン収容所で生まれているが、オザワ氏は日系と言うよりもアメリカ人として育ち、先祖のルーツ日本については余り知らずに育った。シンガポール留学中に歌舞伎に出会い、以来何度も日本を訪問している。過去にシカゴに10年ほど住んだことがあるが、現在はミシガン大学で教授を務めている。
• オザワ氏は「急に家を出て行かなければならない時に、何を持っていくのか。なぜ過去と繋がりのあるものがそれほど大事なのか。これはピュジェット・サウンド・アイランドに住んでいた人々の経験を元にしたストーリーで、信じられないほど今日の我々の社会に関係している」と語る。

「An American Dream」
あら筋

• 第二次世界大戦中の1942年、ピュジェット・アイランドの農家に住むコバヤシ・マコト一家は、強制収容されることになる。アメリカ人の退役軍人ジム・クローリーがやって来て、妻のエヴァを外で待たせ、コバヤシ家の家を二束三文で買おうとする。そこにFBIがやって来て、マコトを逮捕する。マコトは状況下のプレッシャーにより、家をジムに売ってしまう。娘のセツコは、FBIに連れ去られるマコトと、その家で再会することを約束する。

• エヴァはドイツ系ユダヤ人で、米国に移民として来たばかり。ドイツにいる両親を心配し、米国に両親を呼び寄せたいと望んでいる。
• 荷造りを済ませ、家を出るばかりのセツコの元に、ドイツからエヴァ宛の手紙が届く。怒りで平常心を失ったセツコは、その手紙を盗んでしまう。
• セツコと母のヒロコが去って数週間後、ジムとエヴァが家に住み始める。エヴァはセツコが隠して行ったひな人形を保存しておくことにする。
• 時が経ち、セツコの居場所を知ったエヴァはセツコに手紙を出し、セツコの大切なものを預かっていると知らせる。
• 1945年8月に戦争が終わり、セツコはジムとエヴァが住むピュジェット・アイランドの家へやって来る。セツコがエヴァに盗んだ手紙を返すと、それはエヴァの両親の運命を知らせるものだった。泣き崩れるエヴァを慰めるジム。そこにマコトが家のドアを叩く・・・。

• オペラ「An American Dream」は、3月15日(金)午後7時からと3月17日(日)午後2時から、2回の公演が行われる。
• 場所はHarris Theater(205 E. Randolph St., Chicago)、チケットは55ドルから125ドル。


「ア・クリスマス・ソング」を歌うエリック・フェアリング氏


ミニ・コンサートと活動紹介イベントにはリリック・オペラの関係者と日本のコミュニティ関係者が集まった