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2019「東北アップデイト」
東北に投資し、復興に直接参加する
アメリカ人をフォーカス

• 東日本大震災を乗り越え、前向きに生きようとする東北の様子を直に伝える「東北アップデイト」が3月11日、シカゴ市内にあるCHEZで開催された。
• 東北アップデイトは2012年以来、JETRO(日本貿易振興機構)シカゴ事務所、在シカゴ総領事館、シカゴ日米協会、シカゴ日本商工会議所、シカゴ姉妹都市インターナショナル大阪委員会の共催で毎年開催されており、今年で8回目となる。

• 今年は、東北に投資し、東北でビジネスを展開し、東北の復興に直接参加しているアメリカ人に焦点を当てて行われた。
• 講演者のロブ・ロブレリオ氏はクラフト・ビール醸造の専門家で、ウィスコンシン州マディソンで5店舗を展開する「グレート・デイン・パブ&醸造」の共同創始者でありバイス・プレジデント。
• もう一人の講演者はミッシェル・ビシャー氏で、ブルックリン・ミュージアムの買付けマネージャー。バイヤーとして創造性豊かな職人や芸術団体との関係づくりに焦点を当てている。
• JETROシカゴのラルフ・インフォザート所長は「2人の講演はまさしく、我々がやりたい事そのものだ」と述べた。

宮城県について

• 宮城県庁国際経済・観光局長の古谷野義之氏が復興の様子、宮城県の魅力、海外投資勧誘とビジネス機会について語った。

• 宮城県は東京から新幹線で90分の所にある。
• 人口は231万人、県内のGDPは約840億ドル。日本三景の一つ松島があり、仙台の七夕祭りは有名。
• 2011年3月11日の大震災により、宮城県では10,566人の死者、1,224人の行方不明者が出た。(2018年5月末現在)。被害総額は830億ドル(9.098兆円)(2018年2月末現在)。

復興

• 宮城県は2014年から2017年までの再建ステージから既に開発ステージ(2018-2020)に入っている。
• 開発の5つの柱は①耐災害性のあるコミュニティ作り、②市民一人一人が復興努力のカギとなること、③復旧に留まらず大々的な再構築の実施、④社会問題解決のための進歩的コミュニティの開発、⑤完全な復興のモデルとなること。

海外投資

• 宮城県のヴィジョンは、海外投資によりGDP を1,000億ドルに伸ばすこと。
• 宮城はハイテク電子機器、自動車、精密機械、IT、農林水産、食品などの産業があり、東北大学構内にシンクロトロン施設が2023年までに完成する。
• 宮城は交通・輸送網が発達しており、北米、中国、韓国へのダイレクト・コンテナ・サービスもある。
• 工業・商業用地、賃貸料が安く、教育設備が整い、教育を受けた技術を持つ労働力がある。注目すべき点として、20代から30代の若い世代が労働人口の27.3%を占める(275,000人)

• 宮城県が提供する海外投資者へのインセンティブ詳細はhttps://www.pref.miyagi.jp/site/faeng/launching.htmlで。

ロブ・ロブレリオ氏と 東北

日本との繋がり

• ロブレリオ氏は大学時代からクラフトビール醸造に興味を持ち、カリフォルニアで醸造を学ぶ。その後シカゴにあるシーボル醸造科学大学で学び、遠くはシベリアまで旅してビール醸造を追求した。
• 「ビジネス成功の秘訣は、情熱、友情、そしてコミュニティがあることだ」とロブレリオ氏は言う。同氏は恩返しとして、コミュニティ貢献を続けている。

• ロブレリオ氏と日本との繋がりは、兄のジョン・ロブレリオ氏だった。1980年代から1990年代にかけて京都に住み、現在は英国オクスフォード大学で日本研究の教授を務める。

• ジョン氏の友人だった清澤哲也氏がロブレリオ氏の店があるマディソンにやって来た。英語を学ぶ大学生だったが、クラフト・ビールに非常に興味を持っていた。ロブレリオ氏のもとでビール醸造を学び、帰国後は商社を経て有限会社マザーバインズで苗木、発酵資材、醸造などの営業やコンサルティングを担当している。

日本進出を暖める

• ロブレリオ氏は清澤氏と長く連絡を取っており、いつか一緒にビジネスをしたいと考えていた。日本でクラフトビールが伸びていることから真剣にプロジェクトを考えようと、ロブレリオ氏は2014年に日本へ行き、清澤氏と日本国内を見て回った。情熱と友情はあったが、どこでビジネスをするのかというコミュニティがなかった。

宮城との出会い

• ちょうど1年前、宮城県の派遣団がロブレリオ氏のグレート・デインを訪ねたいと
• JETROから連絡があった。JETROとは2014年の訪日以来、連絡を取り合っていた。
• その時に宮城の派遣団から海外投資者への助成金の話を聞き、興味を持った。だが、ビールへの高課税、大ビールメーカーとの競争、若い企業への融資問題、特に東京への流通システムなど多くの挑戦があった。
• ロブレリオ氏は昨年、実際に宮城を訪問した。清澤氏が長野県にある松本ブルワリーのコンサルタントをしていたことから、ロブレリオ氏もその仕事に加わった。
• その後宮城に行き、仙台市を見た。そこでロブレリオ氏が感じたものは、同氏が探していたコミュニティだった。若者が多く活力があり、ロブレリオ氏のクラフトビールのスタイルにピッタリの町だった。
• JETROが弁護士、会計士、不動産業者など、ビジネスに必要な人々を紹介してくれた。

毛利親房氏

• その中で知り合ったのが、仙台の秋保ワイナリーのオーナー毛利親房氏だった。建築家だった毛利氏は地域のワインブランドを作り、地域の魚介類や農作物と組み合わせて地域経済を活性化し、グリーン観光産業も活発化させようと、ぶどうの栽培から始めてワイナリーを作った人物で、毛利氏の活動理念はロブレリオ氏の心を打った。
• また、毛利氏は広い人脈を持ちアキウツアーリズムファクトリーの取締役も務めていることから、仙台市秋保の定禅寺通りにパブの出店地を見つけようとしてくれていいるのだという。仙台市内で、醸造設備を入れる広さのある場所は非常に高く、適切な場所を見つけることは難しかった。

• ロブレリオ氏は「宮城」というブランドで出店プロジェクトを進めている。「成功する限り、我々のクラフトビールをまずは東京へ、それからほかの都市に広げていきたい」と語った。

ビール神社とコミュニティ貢献

• この他にも多くの出会いがあり、ロブレリオ氏には既に自分のコミュニティという気持ちが育っていた。
• 石巻市北上町十三浜字白浜に、「ビール神社」と呼ばれる鹿嶋神社がある。約500年ほど前に建立された神社で毎年酒を奉納していたが、100年ほど前に米の不作で酒が造れず、代わりに麦酒を奉納した。翌年は豊作で酒を奉納したが、伝染病が発生し多くの死者が出たことから、麦酒を奉納することになったという伝説がある。

• ビール神社に興味を持ったロブレリオ氏が訪ねてみると、津波に流され、残ったコンクリートの土台の上に小さな祠が建てられているだけだった。
• 地元では鹿嶋神社の再建を願っており、清澤氏の人脈から一般社団法人ウィーアーワン北上の代表理事を務める佐藤尚美氏に出会った。佐藤氏は震災で夫を亡くし、3人の子供を育てる傍ら、復興に献身的な活動をしている。

• ロブレリオ氏は佐藤氏と鹿嶋神社の宮司に会い、ビールのホップ栽培を提案した。神社の再建のめどが立たず、諦め掛けていた時に奇跡のような話だと、涙が止まらない住民もいたという手紙を佐藤氏から受け取った。
• 鹿嶋神社のそばは海水浴場だった。だが震災後は海水浴に行く人もいなくなった。住民は海水浴場を復活させるよりも、毎年7月14日に祭事を行うことに決めた。昨年は500人ほどが集まったという。
• それを聞いたロブレリオ氏は、祭事でビール・フェスティバルをやろうと提案した。それで神社再建のためのファンドレイジングもできる。今年はロブレリオ氏がフェスティバルにビールを提供するという。

ミッシェル・ビシャー氏

• ビシャー氏は昨年9月に、木工芸品を製作する石巻ラボラトリー、宮城県南部の阿武隈山系北端にある採石の大蔵山スタジオ、山形県米沢市にある米沢紅花染めの新田など10か所を訪れた。

石巻工房

• 石巻ラボラトリーは、東日本大震災のわずか4か月後、2011年7月にオープンした。石巻の海のすぐそばで、地域の人々の就労の場と交流の場を作ることを目的に、クリエーターやデザイナーが集まって工房を開いた。木の表情を生かすシンプルで頑丈な家具を作る一方、ワークショップを開いて誰もが木工作品を作れるように指導している。
• ビシャー氏は高校生が作った木のベンチを紹介した。野外授業で使えるようにと、生徒たちが考案したものだという。
• 石巻ラボラトリーの作品はウェブサイトhttp://ishinomaki-lab.orgで見ることができる。

大蔵山スタジオ

• 今から約100年前、初代・山田長蔵が伊達冠石の採掘を創業した。多くの地元民が農業や林業のかたわら、採石業に従事していた。伊達冠石は石積み工事や墓石材などに使われていたが、その唯一無二の表情が彫刻家やアーティスト目を引き、次第に彫刻作品やモニュメントに加工されるようになった。
• 四代目の山田政博氏は人々が集う豊かな里山の風景を作ろうと、大蔵山の整備・緑化事業に着手。同時に、地元の木や土を使って文化施設を徐々に建て行った。
• 五代目の山田能資氏は、大蔵山の自然に寄り添いながら、山の命を次世代へ伝えることを企業活動の要としている。
• 大蔵山スタジオの50ヘクタールの敷地には、伊達冠石や山で切り倒した木材、土などを活用した多目的サロン、図書館、石舞台野外劇場、円錐形の石塔などがある。

新田テキスタイル

• 米沢紅花染めの新田は1884年の創業で、紅花と言う自然染料を使い手作業で染めている。濃い赤から薄いピンクまで、素晴らしいグラデーションを出すのが新田の特徴で、他の染料と重ね染めすることで100色の色相を出すことができる。今も手織り機で織物を作っている。

• 10か所の東北の伝統的な工房を回ったビシャー氏は、人間性と文化が織りなす工芸品は、日本の伝統芸術であると同時に非常にモダンでもあるという。
• 職人たちがその手によって、心を込め、情熱をもって作り出す工芸品を見たのは、たぐいまれな経験だったとビシャー氏は語る。
• ブルックリン・ミュージアムはリノベーションのために、一時日本コレクションの展示をやめていた。ビシャー氏は「これからまさに日本の展示が再開されるところで、その展示に東北からの工芸品が追加展示されるのを楽しみにしている」と語った


ロブ・ロブレリオ氏


宮城県の派遣団をマディソンに迎えたロブレリオ氏(同氏プレゼンより)


「ビール神社」と呼ばれる鹿嶋神社(ロブレリオ氏のプレゼンより)


ミッシェル・ビシャー氏


ビシャー氏が紹介した、高校生チーム製作の木のベンチ


宮城県庁国際経済観光局長の古谷野義之氏


「東北アップデート」会場では東北産の日本酒テイスティングも行われた