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加藤勝信自民党総務会長がシカゴで講演
「日本経済の現状・課題と日米経済関係」

• 4月末から5月初めにかけて中西部を訪問中だった加藤勝信自由民主党総務会長が5月1日、シカゴ市内にあるシカゴ・ユニオン・リーグ・クラブで講演した。今回のシカゴ訪問で加藤氏はJ.B.プリツカー州知事と会談した他、シカゴの製造業支援イノベーション・センターmHUBや、デジタル・スタートアップ・コミュニティを支援するインキュベーター1871などを視察した。

• 日米首脳はこれまで首脳会談を10回、電話会談を29回実施するなど個人的な信頼関係を築いており、日米間の絆は強い。
• 経済関係の絆も強く、これまでの日本企業の対米直接投資は約4690億ドルにのぼり、約86万人の直接雇用を創出している。
• イリノイ州では日本企業が730か所に拠点を構え、約47,000人の雇用を創出し、州経済に大きく貢献している。

• 加藤氏は衆議院議員6期目で、官房副長官、一億総活躍担当大臣、働き方改革担当大臣、厚生労働大臣など日本経済に関する課題に取り組んで来た。また、昨年5月には厚生労働大臣としてワシントンを訪れ、米国のアコスタ労働長官と労働分野における協力覚書を交換した。
• 加藤氏は「こうした経験を踏まえて、日本経済の現状や課題について話したい」と述べ、本題に入った。

• 米中の貿易摩擦、中国経済の減速、英国のEU離脱などが今後の景気動向に対する懸念材料となっているが、日本では安倍政権がスタートした2012年12月から景気の回復基調を続けている。回復期間は今年の1月で73か月を超え、戦後最長の景気回復期間記録を更新した。
• 安倍政権が掲げた3本の矢、金融政策、財政政策、成長戦略を展開する中で、日本のGDPは政権スタート時の493兆円から550兆円に、11.5%成長した。この間に就業者数も474万人と大きく増加している。
• 長い間死語となっていたベースアップも復活し、毎年の労使間の賃金交渉では定期昇給も含めて2%以上の賃上げが行われている。

• 安倍内閣は若い層の支持率が高いという特徴がある。この背景にあるのは完全失業率2.3%、有効求人倍率1.63倍という好調な雇用情勢と、新卒の売り手市場だと加藤氏は見ている。この様な背景から、安倍政権は今後も経済第一の姿勢で取り組むという。
• 既に始まっている日米間貿易協議はウィンウィンの関係を重視して行く。

少子高齢化・人口減少

• 安倍政権は少子高齢化・人口減少という課題に対して、様々な政策を講じて来た。
• 第二安倍政権の6年間で人口のボリュームゾーンである団塊の世代が65歳を越えた。
• ベビーブーム当時は1年間に約260万人が生まれていたが、昨年生まれたのは93万人。
• 15歳から64歳までの生産年齢人口で見ると、444万人減少したことになる。
• しかし、様々な政策を打ち出した結果、就業者数は474万人と逆に増加した。その主要因は女性の就業者の増加と、高齢者65歳以上の就業者の増加。女性と高齢者が労働市場に出て来て、経済を支えて来たということが言える。

• 今後、更に少子高齢化が進むことを考慮すると、子育て支援や介護サービスの提供など、働く意欲や能力を持つ女性や高齢者が能力を発揮できる環境を作って行かなければ日本の経済成長を遂げることはできないと加藤氏は語る。これが安倍政権のスローガン「一億総活躍社会の実現」であり、重要な政策の一つだと言う。

• それに加え、多様な働き方を推進する「働き方改革」を進めている。これは長時間労働の是正、同一労働、同一賃金などで就業者の処遇を改善する。
• 女性の就業率は正規・不正規という雇用の違いはあるが、単に就業率の視点で見れば米国を上回る状況になっているという。
• 女性の場合、子供を産み育てる時期に一旦就業率が下がる。これをM字カーブと言うが、この状況も改善されて来ている。

経済成長の3要素

• 経済成長に必要な3要素は、①機械やソフトウェアへの資本投入、②就業者数に労働時間を掛けた労働投入量、③全体の効率を示す指標。
• 労働投入量で見ると、1990年代からずっとマイナスだったが、女性や高齢者の労働市場参加の拡大で、2015年以降はプラスに転じた。
• 一人一時間当たりの名目GDPで見ると、日本の労働生産性の水準は決して高くなく、米国と比べると6割から7割の水準となっている。
• 経済の持続的な成長を図る上で、この労働生産性をどう上げて行くかが大きな課題とであり、そのためにはAIやIOTの活用が求められる。
• アコスタ労働長官によると、米国でも生産年齢人口が毎年0.2%ずつ減少しており、女性や高齢者を労働力として取り込むことが課題となっている。また、IAやIOTの導入により生産性の改善にどの様に取り組むかという課題をアコスタ長官と共有したという。

• 日本の生産年齢人口は、2025年に団塊の世代が75歳を超える。2040年には団塊の世代の子供が65歳を超える。2000年から2025年にかけて日本の生産年齢人口は17%減少し、2025年から15年後の2040年にかけて更に17%減少すると予想されている。そうした将来を目前にして、働ける人の割合、或いは総労働時間をいかに増やして行くのか、いかに生産性を上げて行くのかが課題になる。安倍政権は生産性の向上と、労働者の能力を高めて行くという「人づくり」を大きな柱にしている。

社会保障の持続性

• 社会保障の持続可能性は、支える側と支えられる側の比率が大きなポイントとなる。
• 高齢者を支える若い人とは、何歳までを言うのか?通常では65歳がボーダーになるが、65歳から74歳の人達が支える側になれば、将来の見通しが随分変わって来ると加藤氏は言う。
• 日本政府が実施した体力測定の結果を見ると、この20年間で高齢者が5歳若返っている。という結果が出ている。健康寿命が延びて、働く意欲のある高齢者がどう働いて行くのか、それが大変大事なポイントだと言う。
• その対策として、安倍政権では予防と健康づくりに力を入れ、散在しているデータを集めてビッグデータとして使えるようにする。そして、より良い健康・予防づくりの手法の開発を進める意向。

• 高齢化は米国を含め世界の国々で進んでいる。アジアでは韓国やベトナムなどの高齢化は日本よりも速いスピードで進んでいる。日本が高齢化対策で答えを出すことができれば、日本がリーダーシップを発揮し、他国の高齢化問題への助けとなることができる。

Q&Aセッション

• 講演後のQ&Aセッションで、日本に派遣労働者が多いのはなぜか?近代経済国の中で、これだけが矛盾しているように思う、との質問が出た。

• これに対して加藤氏は、非正規と言われるパートタイムや派遣で働いている人は、特に女性を中心に増加しているのは事実だが、アンケート調査によると30代から50代の女性で不本意ながら非正規で働いているという人は12%から13%と低い。
• 子育てなど様々な条件があって、その中で非正規を選ぶという風に推察できるが、必ずしも処遇に満足しているわけではないという実態が浮かび上がっている。例えば正規社員にはボーナスが出るが、非正規社員には出ない。
• 安倍政権では働き方改革の中で、正規・不正規の不合理な差別を禁止する政策を打ち出した。大企業は2020年4月から、それ以外の企業は2021年4月から適用される。


「日米間貿易協議ではウィンウィンの関係を」と話す加藤勝信氏


加藤氏の講演を聞く出席者