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石田徹也回顧展シカゴで開催:
不可思議だが見る人の心に呼応する異界な現代絵画

• 現代画家・石田徹也の回顧展「Tetsuya Ishida: Self-Portrait of Other(石田徹也:他人の自画像)」が10月3日から12月14日まで、シカゴ市ノースサイドにあるギャラリーWrightwood 569で開催される。

• 同展覧会には今年4月から9月8日までスペイン・マドリッドにあるソフィア王妃芸術センターに展示されていた石田の作品70点以上が展示される。ソフィア王妃芸術センターでの展覧会には30万人を大きく上回る来場者があった。
• シカゴでの展示会場となるWrightwood 659は、1920年に建てられたビルの内部を建築家の安藤忠雄が全く新しい空間に再構築したもので、昨年10月に完成した。

石田徹也とは

• 石田徹也は2005年に31歳で死亡。だが武蔵野美術大学を1996年に卒業すると画家として生き、短い間に180点を超える作品を描いた。その作風は不可思議で暗く異界だが、作品一点一点を凝視すれば、絵と見る人の心が共鳴し、呼応し合う不思議な力がある。

• 石田はバブル崩壊後の「失われた10年」と言われる不景気の真っただ中で青年期を過ごし、大量解雇、早期退職、オートメーション化などによる人の尊厳軽視を見て来た。終身雇用社会は崩れ、契約社員が増え、企業は人を荷物のように配属先に送り込む。

• 画家となった石田は生活のために夜間に工場などで働き、社会や人々を直視して来た。石田には多くの人々が心に持つ、先行き不安、恐れ、プレッシャー、疎外感など、頭に浮かぶイメージを可視化してキャンバスに描く力を持っていた。

• 例えば、営業に出て一日中歩き回っても何一つ売れないことがある。訪問先で傷つき心がうずく。そんな時にはうずくまりたくなるだろう。そんな辛さを形にした石田の絵が、同じ思いを持つ人々を共鳴させる。

• 遺族が立ち上げた石田の公式サイトでは「自らが選んだ自画像とも思える描写は、日本の社会における個人の人権の尊さ、学校教育の問題、管理された日本の社会構造を痛切に批判し、人々の心の問題を表現している」と解説している。

• 石田の作品の魅力は、描写の正確さにもある。人物の描写は均衡が取れ、複雑な動きや角度も正確にリアルに描かれている。詳細な描写も目を見張るものがある。展覧会では、印刷物や画像では分からない石田の筆遣いやペイントの塗り方など、石田の技術にも直接触れることができる。

• 石田の公式サイトによると、石田は2歳の頃から紙をねだり、良く絵を描いて遊んでいた。小学生の頃には教科書やノートの余白、テスト用紙の裏側など、スペースがあればそこに絵を描いていた。11歳の時には、故郷静岡県の法務局が小・中・高校生を対象に公募した「人権マンガ」で最優秀賞を受賞した。
• 大学時代には第6回グラフィックアート『ひとつぼ展』でグランプリ受賞、24歳でACA日本ビジュアル・アート展1997グランプリ受賞など、いくつかの賞を受賞している。また、大学卒業後は毎年複数の展覧会に出展し、個展も何度か開いている。だが無名だった。

• 同公式サイトによると、石田が踏切事故で死亡した翌年の2006年、作品がNHK「新日曜美術館」で紹介され、多くの鑑賞者に衝撃を与えることとなったという。石田の両親は多くの作品を静岡県立美術館に寄贈している。
• その後、日本各地で石田の作品展が開催され、現在も続いている。また、作品展は海外でも行われるようになり、2015年にはイタリアの第56回ベネチアビエンナーレ、セントラルパビリオンで展覧会が行われた。

• この時に石田の作品に惹かれたのがスペイン屈指の美術館・ソフィア王妃芸術センターのキューレイター、テレサ・ヴァラスケス・コーツ氏だった。石田の作品に失われた10年を生きる若者の心を映し出す比類無い質を見た同氏は「Tetsuya Ishida: Self-Portrait of Other」というタイトルを付け、ソフィア王妃芸術センター分館ヴェラスケス宮殿で今年の4月12日から9月8日まで石田徹也回顧展を開いた。同展覧会には7月末までに313,000人が訪れた。

• Wrightwood 659での石田徹也回顧展は、ソフィア王妃芸術センターとシカゴに本拠を置くハルステッドA&Aファウンデーションの協力で企画されている。また、2019シカゴ・アーキテクチャー・バイエニアルとも関係しており、安藤忠雄が再構築したWrightwood 659にあるTadao Ando: Museums and Galleriesには安藤が直島(瀬戸内海・香川県)に建築した美術館の模型や写真なども展示されている。安藤ギャラリーの展示はアルファウッド・ファウンデーションが展示している。

• 尚、石田展開催中はいろいろなプログラムが行われる。情報は
https://wrightwood659.org/

• 石田徹也回顧展: 10月3日から12月14日まで
チケット:
General Admission $16
場所:Wrightwood 659
659 W. Wrightwood Ave,
Chicago, IL
開館日と時間帯:
木(12:00pm ・8:00pm)
金(12:00pm ・8:00pm)
土(10:00am ・7:00pm)
※事前予約が必要で、申し込みはオンラインのみ。
https://tickets.wrightwood659.org/event


石田徹也作品「接触」1998
©Tetsuya Ishida, 2019; Photograph: Takemi Art Photos, courtesy Kyuryudo Art Publishing Co., Ltd.



「めばえ」1998
©
Tetsuya Ishida, 2019; Photograph: Takemi Art Photos, courtesy Kyuryudo Art Publishing Co., Ltd.


「迷子」 2004
©
Tetsuya Ishida, 2019; Photograph: Takemi Art Photos, courtesy Kyuryudo Art Publishing Co., Ltd.


「帰路」 2003
©
Tetsuya Ishida, 2019; Photograph: Takemi Art Photos, courtesy Kyuryudo Art Publishing Co., Ltd.


「スーパーマーケット」1996
©
Tetsuya Ishida, 2019; Photograph: Takemi Art Photos, courtesy Kyuryudo Art Publishing Co., Ltd.