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興味津々「シカゴ在住若手研究者による研究発表会  3」
―ビッグデータで本音をあぶり出したい―

 第3回「シカゴ在住若手研究者による研究発表会」で、浅井顕太郎氏は「俺たちにデータを!  経済学者のビッグデータの活用法」について発表した。浅井氏はシカゴ大学の博士課程3年生。
浅井氏の専門分野は計量経済学。研究目的を「買い手や売り手が入札したり、ものを買ったりすることはデータで判るが、その人達が一体、本当は何を考えているのか、本音をあぶり出したい」と語る。
売り買いに限らず、男性と女性はどういう相手が好きで、どういう風に結婚を決めるのか。「相手のこういうことが好きだ」と心の中に秘めながら行動した結果が結婚というデータに現れてくるが、本音はどうなのか。これをデータからあぶり出したいという。この本音のことを専門的には「Primitive」と呼ぶ。

なぜビッグデータがいいのか

 例えばgoogleが収集しているような膨大なデータを「ビッグデータ」という。なぜビッグデータがいいのか?
経済学者は様々な行動に関する仮定をおいて、モデルを構築して均衡を計算する。そして、その均衡を実際にあるデータに当てはめる。仮定とは根本的に人々がどの様に思ったり、どの様な条件で行動しているかというもの。
しかし、仮定は正しいのか? 浅井氏は「できれば、仮定はおきたくないと考えている。もしビッグデータがあれば、こういった仮定を緩めることができる」と話す。
どういうことなのか? 例えばフランス料理では、素材の良さを出すヌーベル・クイジーンが流行っている。しかし、新鮮な材料がなければクリームを加えソースでしっかりと味をつける。
これと同じように、ビッグデータが無ければ経済学者は仮定を加える。素材のビッグデータがあれば仮定を緩めることができる。「なるべく素材の本質を示したい」と浅井氏は言う。

 こうした研究は過去から行われ、納得できる均衡が出されている。その正しさを浅井氏は第二価格オークションで説明した。
第二価格オークションは封印された価格で入札し、入札額が一番高い人が勝つが、実際に支払う金額は二番目に高かった入札額となる。このため、一番と二番の入札額に大きな差があっても、一番の人は大きな損をすることなく、自分が思っている価値価格で入札することができる。第二価格オークションでは「自分の価値価格」が入札の均衡となっている。
価格を増やして競り合う第一価格オークションでも、競り合っている相手があきらめた時点の価格となるため、落札した人は2番の人の価格を支払うことと同じとなり、胴元に入る金額は変わらない。
第二価格オークションの手法はeBayやヤフオクなどで使われている。入札価格のビッグデータがあれば最適の最低価格を設定することができ、胴元側は「100万円以上の入札しか認めません」というような最低価格を設定し、売り手の売り上げを増やすことができる。eBayやヤフオクなどは様々な商品の価格分布データを集めて、最適最低価格を設定しようとしているという。

 果たして結婚はどうなのか。現在の均衡が効率的なのか調べて、より効率的な均衡が出せれば効率的なお見合いを企画できる。浅井氏は「結婚市場の本音を知りたい」と話す。
初歩的なマッチング理論では、同性内で「こんな人が好き」という共通の好みを持つ場合、大卒は大卒同士、高卒は高卒同士で結婚するのが均衡となっている。
ただし、これには
1.どの様なタイプの相手にも同じ出会いのチャンスがある。
2.プロポーズして振られても気にしない。
という仮定がある。果たしてこの仮定は正しいのか?

 例えば自分の職場など、出会いの場は自分の周辺で起きたりする。現実には自分に近い人に出会いのチャンスがあり、結婚することが多い。すると自分が抱いていた好みを反映していない可能性もあり、(1)の仮定は崩れてくる。
また、本当に振られても気にしないだろうか? 例えば、一番好きなのはAさんだが振られそうだから、受け入れてくれる確率が高そうなBさんにプロポーズすることもあり得る。こうなると(2)の仮定は崩れる。
出合い系サイトのビッグデータがあれば、これらの疑問を検証できるという。
見合い系サイトで誰と出会い、誰のプロフィールを閲覧して実際に誰にEメールを送ったかのデータが入手できれば、どの様なタイプの相手にも同じ出会いのチャンスがあるという(1)の仮定を緩められる。
また、どの様なタイプにEメールを送って、どのぐらいの確率で返信が来るかもデータで判る。振られた確率によって誰にプロポーズするか確率が変われば、(2)の仮定は崩れる。
いろいろな人にメールを送って返信の確率を見て自分の価値を実験し、その上で本当に出会いたい相手にメールする賢者もいるという。
浅井氏は自分が得られるデータと、オークションや出合い系サイトなどのビッグデータがあれば仮定を緩め、最終的にはヌーベル・クイジーンに近いような素材を生かした均衡を出すことができると語った

浅井顕太郎氏