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21世紀における日本の新しい役割を語る

北岡伸一国際大学学長、森本敏元防衛大臣、
前原誠司元国土交通大臣、上田勇衆議院議員

• 北岡伸一国際大学学長、森本敏元防衛大臣、前原誠司元国土交通大臣、上田勇衆議院議員が4月30日フェアモント・ホテルで講演し、「21世紀における日本の新しい役割」特に防衛政策について語った。4人のシカゴ訪問は日米間の対話を促進しようという超党派的なアプローチ「Mt. Fuji Dialogue Delegation」によるもので、シカゴ・カウンシルが主催した。

• 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の座長でもある北岡伸一国際大学学長は、日本の防衛政策の変化について、①国家安全保障会議が2013年12月に設定されたことにより、縄張り主義になりがちな政府関係者らが総合的な政策を出せるようになったこと、②自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)協力法など安全保障関連法案が与党内で承認されたこと、③武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則が昨年に策定されたことを挙げた。 

• 北岡氏は、日本が憲法第9条にある国際社会への武力行使禁止を厳守することを明確にした上で、独立国として軍を持つことを禁じる条項を変える必要があることを説明した。
• 日本は朝鮮戦争後、その解釈を変え、独立国として最小限の自衛能力を持つこととなった。一方、日本人の多くは軍事力をできる限り避け、平和は平和的手段のみで維持するべきだという考え方が強い。このために日本が攻撃を受けた時のみに自衛隊が戦うことができ、攻撃を受けている他国を助けに行くことはできない。また、日本のテリトリー外で事態が発生した場合には救助に行くことはできない。
• 北岡氏は、急速な技術開発が進む中で領域を定めることは重要性に欠ける。現状では地域の安定と平和のための効率的な貢献ができない。故に安倍政権は安全保障法制を改訂しようとしていると述べた。

• 北岡氏は更に、改訂のコンセプトは日本の防衛政策をよりフレキシブルにしようというもので、ロシアのクリミア半島侵攻を見ても分かるように、組織的・計画的に行われたかどうかについての判断は難しいと語った。
• 最後に北岡氏は日本が目指すところはハードパワーではなく、国際法を厳守するというソフトパワーであり国際問題は外交で解決するという信念があると述べ、中国や北朝鮮など日本周辺の安全環境が悪化している中で、安倍政権が野党の理解を得て安全保障法制の改訂を行うのは可能だと語った。

• 現在拓殖大学の教授を務める森本敏元防衛大臣は「19世紀は帝国主義と植民地化の世紀だった。20世紀には大きな戦争があったが、国際社会は国際法を顕著に進化させた。しかし、21世紀に入って15年、国際秩序は軍事介入によって侵害されている」と述べ、現状を説明した。

• アジア太平洋地域では中国が他国の領土、海域へ影響力を拡大し、宇宙やサイバー・スペースまでその手を伸ばしている。中国は国際法を自国に有利に解釈し、日本の南西海域にある9ドットラインや9ダッシュラインに自国の権益が及ぶと主張している。これらの動きが国際秩序の現状を顕著に変えている。
• 中国は南シナ海のフィリピンの領域である暗礁を埋め立て、地上レーダーシステムを建設。9ドットライン、9ダッシュラインを自国に取り込もうとしている。このレーダー基地を軍事機基地に変換すれば、米空軍にとってもアジア諸国にとっても南シナ海でのコミュニケーションに重大な影響が出る。日本においては、2012年9月に尖閣諸島を国有化して以来、その水域に中国船が再三入り込んでいるが、日本は中国を挑発すること無く、細心の注意を払いながら自国の領域を守っている。
• 中国は、太平洋を米国と分かち合うことを期待している。太平洋の東側は米国、西側は中国という構想で、中国はすでに東に向かって海軍と空軍の勢力を徐々に伸ばしている。中国はまた、中国を起点とするシルクロード経済圏構築構想「一帯一路」に着手している。この構想は、インド洋からペルシャ湾、中東、北アフリカ、ヨーロッパへとつなぐことになる。
• 森本氏は結論として、日米防衛協力指針(ガイドライン)が決定されたのは非常に重要なことだと述べ、日米同盟の強化、オーストラリアとの協力、ASEAN支援による安定、平和、繁栄への貢献が重要だと述べた。
• また、日米が協力し、中国にアジア太平洋地域の安定のために積極的に協力させる事がきわめて重要な日米同盟のテーマであり、これがカギとなると語った。

• 前原誠司元国土交通大臣は「政権が交代しても日米関係の重要性を外交・安全保障の基軸においた」と述べ、「時代の変化とともにガイドラインを見直すことは重要であるが、今回見直された日米防衛協力指針が総て妥当であるかについては国会で検証し、安全保障法制が国会に出された段階で、日米同盟は重要だという観点から議論したい」と語った。

• 前原氏は今後の日米関係強化の観点からTPPについて、安全保障で協力している2カ国が経済・貿易の分野でも同じプラットフォームを作り拡大していくことは地政学的にも極めて大きな意味があると語った。
• また、イスラム国、中国の影響力拡大など、戦後作られた国際秩序への挑戦が始まっているが、我々はしっかりと対応して行かなければならない。問題意識に立ちながら、同盟関係を強
• 化するためにも、党派を越えて取り組みたい」と述べた。

• 最後に上田勇衆議院議員は安全保障法制改訂法案の概略について語った。同氏は同法案見直し委員会のメンバーとなっている。

• なぜ安全保障法制改定の討議が今なされなければならないのか。そのファクターは2つ。
• 一つは日本を取り巻く安全環境が基盤から変わって来たこと。これは地域における勢力の均衡が、技術革新、大量破壊兵器の拡散によりシフトして来ている。
• 二つ目はテロリズムや輸送の侵害などで安定が脅かされ、日本の保全に大きな影響を与えていること。

• 安全保障法制改訂のポイントは、憲法第9条にある軍事力行使の制限を踏まえた上で、

• 米軍が予期せぬ攻撃を受けた場合、日本の保全に貢献する米軍を守るための自衛隊の武器使用についての権限を明確にすること。

• 輸送サポートの拡大。戦争以外の救援や医療サービスの国際協力が行われている場合、国際社会の平和と安定のためにサポートを拡大する。

• 緊急時における米軍との協力強化。現在の法律では周辺事態となっているが、改訂が必要。

• 平和活動地域の拡大。苦難に面している現地市民や難民を助ける。

• 武器使用の制限を緩和する。それによって自衛隊が広範囲の活動に参加できるようになる。

• 憲法第9条の解釈により、部分的な集団自衛権の行使を可能にする。制限内で行使されてきたが、その制限を緩和する。

• これらの改訂によって、緊急時だけでなく通常もより良い日米合同運営が可能となり、日米同盟による抑止力がより強力なものとなる。

• 司会者より4月27日に決まった日米防衛協力指針(ガイドライン)についての日本での反応について質問があった。
• これに対して北岡氏は、同ガイドラインはまだ国会に提出されていないが、地域の保全や平和に重要な意味があることで、議会は説得可能だろうと述べた。
• また、日本のメディアは概して批判的。日経はサポートしているが、朝日、読売、毎日、テレビ・コメンテイターらはネガティブ。一般市民は戦争に巻き込まれるというイメージを持っており、理解を得るには時間がかかるだろうと語った。

• なぜ日本のメディアは批判的なのか。シカゴ新報の質問に答え、北岡氏は「権力に反対するのは正しいことだという長い伝統が強すぎる。日本の議会は約15年前までは野党が何でも反対というのが習慣だった。だからメディアは政府を批判するものだという考えが強すぎる。昔はそうでもなかったかも知れないけれども、今日本のメディアが政府をあまり批判するというのは、結局中国や北朝鮮を利するわけです。そういうことが考慮されていないんです」と語った。


シカゴ・フェアモントホテルで講演

北岡伸一国際大学学長


森本敏元防衛大臣

前原誠司元国土交通大臣


上田勇衆議院議員