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ミッドウェスト刀剣会“刀ショー”
日本刀剣保存会による審査に300点の依頼

• ミッドウェスト刀剣会の“刀ショー”が4月24日から26日までの3日間、シャンバーグにあるハイアット・リージェンシー・ウッドフィールドで開催された。
• シカゴ・ショーの開催主催者マーク・ジョーンズ氏によると、今年は日本から日本刀剣保存会のメンバーが訪れ刀や鍔などの審査を行うため、例年より多くの参加者が集まったという。
• 会場には日本刀を始め、鍔や目抜きなどの装剣具、鎧兜、骨董美術品や古書、日本映画のDVDなどが展示され、売買も行われた。

• 刀などを入れておく袋を並べていたのは杉本光司氏でマイアミから参加した。金糸銀糸が織り込まれた袋は豪華で、宝物の刀を入れておくにはぴったり。刀の鞘や鍔などを傷から守る働きもしてくれる。
• これらの袋は着物の帯で作ったもので、刀を入れる袋として販売しているのは杉本氏だけだという。同氏によると、一生に一度締めるぐらいの立派な帯だが所有者の没後は引き取り手がなく、そのような帯を買い付けて再利用しているのだという。刀用、脇差し用、短刀用など様々なサイズが揃っている。
• 杉本氏は、実は空手八段。4月に米国空手連盟に殿堂入りし、オハイオ州で式典が行われたという。現在は中南米やヨーロッパなど13カ国で空手を教えている。
• 刀のコレクションを始めてから45年。学生時代に居合道をやっていたがその時は買えず、渡米後に初めて刀を買ったのがコレクションの始まりだという。
• 一方、空手の生徒で刀を集めている人は余り多くはない。刀を持つと、結構お金がかかると杉本氏は話す。刀を研ぎに出すと、50センチから60センチの刀ならば3,000ドルほどかかる。その上に目抜き、淵頭、鍔、などの装刀具を付けるとまたお金がかかる。刀を1本買うだけで結構大変なのだという。
• かつて杉本氏も自分のコレクションをフロリダからシカゴに運んでいたが、飛行場で落とされ切っ先が欠けるという事故があり、「以来刀は持ってこない」と話した。

• カナダから出展したサンテ氏は二十代初期に刀に関心を持った。侍魂にずっと興味を引かれているという。日本へ行こうと2回試みたが、遂に実現しなかった。しかし、カナダにいても良い刀を買うことができるという。日系人も多く住んでおり、刀の所有者が没すると、その家族が売りに出すのだという。サンテさんは、子ども達が刀の保存を引き継がず売りに出すのは非常に残念だと話す。「彼らの伝統がどこから来たのか理解すべきですよ。それを理解していなければ、将来へのベースがないと思うんだが」と語った。
• サンテさんは30年に亘ってコツコツと本を読み、刀の勉強を続けてきた。「本を読んでより学び、それから年月をかけて集める、これが自分にできるベストな道だ」と語った。

日本刀剣保存会幹事・研ぎ師・吉川永一氏に訊く

• Q:鑑定家の目はどうやって養われるのですか?
• 吉川:いい刀をたくさん見る。すると自然にいい刀の波紋や肌、姿、そりの強さが分かります。時代によってそりの浅いものから深いものまで、いろいろあります。刀は戦のたびに改良されるんです。
• 日本刀が一番良くなったのは元寇以来です。元寇は文永と弘安に2回来ましたが、2回とも日本は台風で救われました。
• モンゴルの鎧は皮をなめした柔らかいもので、日本の刀で切っても跳ね返る。これは武器を変えなければ言うことで鎌倉幕府が全国に指令を出し、厚さがあって幅が広く、切っ先が大きくてもっと切れやすく突きやすい、そういう刀に作り替えさせました。刀の造り、焼きも全部変えました。それで一気に日本刀が武器として凄く効力を増したんです。こうして作られたものが、日本の黄金期の刀と言われています。
• ですから、今の人たちも鎌倉時代の黄金期の太刀を持つのが夢だと思っている人が多いんです。

• Q:小さい時から刀を見ていたんですか?
• 吉川:祖父は11歳から。研ぎ師です。今皆さんが展示会で見ている刀は、研ぎ師が研いでファンデーションや口紅でお化粧をしたものが並んでいると思って下さい。
• 研ぎ師は刀を研いでいる時に真っさらにしますから、本当の肌の表面を見るわけです。だから刀に対しては研ぎ師が一番勉強しやすい。
• 刀は必ず手に持って、バランスを見ることです。昔の刀というのは長いものを下から(切っ先の反対側)切って短くしているものがずいぶんあります。
• 刀は身を守るためのものですから、長身の父から小柄の息子が刀を譲り受けたら長すぎて使いづらい。だから下から詰めた「磨上(すりあげ)の刀」というのがたくさんあります。だから、形だけでなく、バランスが一つの見極めになります。

• Q:作られた土地で刀を見分けることもできるのですか?
• 吉川:土地によって鉄の材料が違うのは、室町時代までですね。それまでは刀工が住んでいる土地の鉄を使っているから、ある程度お国柄で分かります。江戸時代になると交通網が発達して交流が可能になる。また、刀を作る業者が町に集まって来るから、地元の特徴が無くなってきます。それが一つの新刀の見分け方でもあります。
• 刀は関ヶ原の合戦以前のものを古刀、それ以後のものを新刀と大きく2つに分けています。

• Q:偽物もあるのですか?
• 吉川:今の時代になって来ると、偽物も巧妙に作られています。刀で一番大事なのは中心(なかご)なんです。侍が手に持つ所に入っている部分です。そこに作者の名前が切ってあり、裏側には年号が切ってある。そこの部分だけは本物だけども、上は60年も後の刀だったりすることがあります。女性の肌に例えると、20歳の名前が書いてあるのにシミ・ソバカスがある40歳、50歳の肌をしているということです。上と下を溶接したものもあるんです。極端な話ですが。

• Q:天皇の刀も見ているそうですね。
• 吉川:月に二回、吹上御所のそばにあるお研ぎ場で刀の手入れをしています。天皇の刀は殆どが明治天皇のものです。明治天皇は日本刀をとても大切にした人で、会津藩、岩崎家、毛利家、島津家、徳川家などから献上されています。だから素晴らしい刀がたくさんあるんです。
• 祖父以前の代から続いていて、今は私になっています。(研ぎ師の)人間国宝の方もたくさんいらっしゃいますが、刀にはそれぞれ癖がありますから、昔から知っている方が癖が分かり易い。刀って微妙なんですよ。

• Q:刀を錆びさせないためには?
• 吉川:湿度が低い所に置いておけば錆は遅い。しかし鞘は木ですから湿度が必要です。そういう相反するものが2つくっついているのが刀なんですね。美術館でも刀の維持が一番大変だと言っています。
• ただ油を塗っておけば良いというものではなく、置き場によっては塗った油が錆を呼ぶこともあります。そういう面では刀は非常にデリケートです。

• Q:アメリカ人は刀の収集だけでなく保存も目的にしていますね。
• 吉川:そうです。私達の会は明治43年から繋がっていて、日本では一番古い会です。日本刀の年代、備前や大和などの産地を一般の人にも分かり易く説明して、最終的に保存して頂きたいということです。
• たとえば、鎌倉時代から600年、800年経っています。一人が800年の刀を所有できるのはほんの一瞬ですよね。これから先800年後まで繋げるためには、次の次の次の代まで大切にしなければ。たった一人の持ち主が刀を放っておくと、刀は1年で錆びてしまいます。だから自分のものと言うよりも、日本の宝である刀を一瞬だけ預かった気持ちでいて下さいと言っています。それは大事だと思うんですよね。

• Q:シカゴには以前にも来られたのですか?
• 吉川:私が40年前に来た時は、シカゴのショーが一番大きかったです。その時の中心的人物は全部日系人でした。ロサンジェルスでもニューヨークでもそうでした。日系人の方が刀を非常に大切にして、それを見ているアメリカの方達がサポートしていました。
• でも日系人の方達がだんだんお年寄りになられて亡くなって、今は日系人ではないアメリカの人たちがまとまって、こういう理想的な審査の機会を作るようになりました。だから刀を知っているアメリカの人達が、変な日本人よりも侍魂はもっています。
• 今回は3日間の審査で300点を見ます。40年前は600点を見ました。アメリカには良い刀もあります。それを分かっているアメリカ人は手放しませんよ。

• Q:ありがとうございました。


マイアミから参加した杉本光司氏


Exhibiter サンテ氏


骨董品の展示も多い

日本刀剣保存会の吉川永一氏


マーク・ジョーンズ氏