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“Walk in U.S. Talk on Japan”
坂場三男元大使、今日の日本について語る

• 坂場三男元シカゴ総領事が9月18日にシカゴを訪れ、アベノミクスから安全保障関連法まで現在の日本が抱える問題について講演した。坂場氏は駐ベトナム大使、駐ベルジン大使を務め、現在は横浜市立大学で教授を務めている。
• 坂場氏のシカゴ訪問は11年ぶりで、会場となった在シカゴ総領事館広報文化センターには日米から多くが出席した。
• 今回の講演は日本政府の「Walk in U.S. Talk on Japan」プログラムの一環で、坂場氏一行はシカゴの他、ミネソタ、マディソン(WI)、ミルウォーキー、アーバナシャンペーンで講演した。同行していたシゲオカ・ケイジ氏(イトチュー・ペトロリアムUSA社元社長)は日本独特の商社について、愛知県豊田市職員のフワ・エリ氏は女性の職場進出を促進するウーマノミクスについて、トリニティ大学(イスラエル)の学生ニシカワ・アキラ氏は日本と海外の教育の違いについて語った。

坂場元大使の講演

• 坂場氏の講演は、日本の経済状況、社会問題、エネルギー問題、TPP、そして保全問題に及んだ。

経済近況

• 約20年に及んだ経済低迷とデフレからの脱却や経済復興を目指し、安倍晋三首相は2012年12月に首相就任後、3本の矢から成るアベノミクスを打ち出した。
• 第一の矢は金融緩和策。第二の矢は財政政策で、民間企業に国家予算を投じて経済を活性化しようというもの。これらの2つの矢は100%とまでは行かないものの、上向きの結果をもたらしている。
• 第三の矢は規制緩和により民間企業や個人が実力を発揮できる経済社会を作ろうという構造改革。
• 日本は昨年、1.5%のインフレ率を達成したが、今年は原油価格の下落や中国を含む外国の経済減速があり、2.0%のインフレ率達成はかなり難しくなっている。
• また、日本はGDPの220%に及ぶ公債を抱えている。この様な状況下で財政拡大による民間企業への資金投入は批判もあるが、経済の活性化が実施されなければ税収も上がらない。安倍首相は財政政策を継続しており、経済活性化により公債問題に取り組もうとしている。

エネルギー政策

• 2011年の東日本大震災により福島第一原発がダメージを受け、以来日本の原子力発電はすべて停止した。その後4年間、石炭、ガス、オイル、水力、風力、ソーラー等を使って発電して来たが、十分なエネルギーを供給するには他の道を探る必要がある。また、温室効果ガスの排出も考慮しなければならない。再生エネルギーによる発電は全体の11%というのが現状でもある。
• こういった背景から、日本はニュー・エネルギー・ミックス政策を打ち出した。この政策には原発使用が含まれており、全体の20%を原発で賄う。福島第一原発事故以前は30%だった。

経済における社会的インパクト

• 日本人の平均年齢は47歳、米国の37歳に比べると10年高齢化が進んでいる。日本女性の平均寿命は87歳、男性は80歳で、高齢化社会問題が深刻化している。年金が国家予算の3分の1を占め、収支均衡予算を圧迫している。

• この問題に少子化が拍車をかけている。このままでは社会保障制度の維持は難しく、日本政府は一つの対策として、女性の労働市場参入を促進している。現在のところ、15歳から55歳までの女性のうち60%が家庭外で働いている。このパーセンテージを少なくとも、先進国平均の70%に引き上げる。そのためには子どもを持つ女性が外に出て働けるように、子どもを預かるデイケア・センターを増設する。

• もう一つの対策として外国人労働者に門戸を開く。特に看護、介護、建設分野で外国人労働者を歓迎する。これを実現するための政策が現在検討されている。
• 最後の労働力不足対策はロボティクスだが、ロボットは税金を払わないのが問題。ここには何らかの対策が必要になる。
• 遅かれ早かれ米国やヨーロッパ、その他の国々にも高齢化社会問題はやって来る。日本は経済を支えながら社会を活性化する高齢化社会のモデルになることを目指す。

安全保障関連法と日米同盟

• 坂場大使のシカゴ講演日、安全保障関連法が可決した。これにより集団的自衛権の行使が可能になり、緊張が高まる東アジアで日米同盟がより強固なものになる。米軍が他国に攻撃された場合には、自衛隊が助けに行くことができるようになったと坂場氏は語った。

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日本独自の総合商社

• Itochu Petroleum Co.の元社長、シゲオカ・ケイジ氏は日本独自の総合商社について語った。
• 日本の面積は米国の4%だが、米国の約40%に当たる1億2,000万の人口を持つ。「これは日本が豊かな人材を持つということ」だとシゲオカ氏は語る。
• 四大商社は三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事。それぞれ1873年、1876年、1858年、1919年に創業した。「これらの商社は古いが、時代遅れではない」とシゲオカ氏は強調する。

• 日本の商社は天然資源を輸入し、メイドインジャパン製品の輸出からスタートした。現在はラーメンから衛星まで3万のアイテムを取り扱っている。取り扱い品種が多いためディヴィジョンに分かれ「Division Company」と呼ばれている。また、日本全商社の売り上げは2012年のGDPの19%を占めた。

• 商社は1980年代までビジネス仲介者としての役割を果たし、コミッションが主な収入源だった。しかし、大企業が自ら海外に進出するようになり、ビジネス環境が変わった。
• シゲオカ氏は、生き残りのための「キーワードは変革」だという。それぞれの商社には海外において多岐に亘る経験を持つ人材が豊富だった。これによりオイル、タンカー輸送、オイル貯蔵などの利益が見込めるビジネスに投資することができた。
• シゲオカ氏は「人材は非常に貴重な財産であり、生き残りのための変革を可能にすることができた」と語った。


坂場三男元大使


講演会場