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パネル・ディスカッション
自然災害、緊急対応と
グローバル・パートナーシップ

• 絆5:東日本大震災5周年追悼イベントの一環としてパネル・ディスカッション「自然災害、緊急対応とグローバル・パートナーシップ」が3月14日、在シカゴ総領事館広報文化センターで開催された。同パネル・ディスカッションの目的は、自然災害に直面した生の経験やそれから学んだ教訓、今後のより効率的な緊急対応を促す切っ掛けにしようというもので、フィリピンの巨大台風ハイヤン、昨年ネパールで起きた巨大地震、日本の国際緊急援助システム、東日本大震災時のNGO活動などについて発表された。

日本の国際緊急援助

• 勝部司氏(国際緊急援助コンサルタント、国連災害評価調整チームUNDAC)は日本の国際緊急援助の体制について語った。
• 日本災害救援隊(Japan Disaster Relief Team)は外務省主管の国際協力機構(JAIC)によって実践されている。主に洪水以外の自然災害救援のために派遣されるが、ビル崩壊、爆発、感染症災害などテクニカル災害にも派遣される。
• 日本災害救援隊の中には医療救援チーム、都市捜索救援隊、専門家チーム、救援物質送付チームがあり、状況に応じてチームが派遣される。例えば地震災害では都市捜索救援隊が発令より10時間以内に派遣される。チームは90人と4匹の捜索犬から成り、滞在期間は10日間。期限が過ぎると代わりのチーム派遣される。約1,000人の隊員が待機している。
• 紛争地帯での災害や洪水、大規模災害にはPKOから自衛隊が派遣される。
• 日本の国際緊急援助は1987年から2015年11月までに493回派遣されている。テント、毛布、シートなどの緊急援助物資はマイアミ、ガーナ、デュバイ、シンガポールにある倉庫に保存されている。
• 勝部氏は日本の国際緊急援助と国連災害評価調整チームの両方でコーディネイターを務めている。コーディネイションは非常に責任の重い仕事で、被災地の状況査定、地元政府の援助、また、世界各国からやって来る救援隊の調整などに当たっているという。

• この様な仕事を目指す人のために、どの様にすれば良いか勝部氏に訊いた。
• 勝部氏は総合政策学部で学士号を取得後、英国ブラッドフォード大学の紛争解決学で修士号を取得した。「その時の関心事に常に真摯に立ち向かい、一生懸命勉強・仕事をするということです。それが最終的には迂曲歪曲を経て自分のミッションになっていくと思います。一生懸命にやったことは後々自分のアセットとなって戻ってきます」と語った。

ジャパン・プラットフォーム

• ジャパン・プラットフォームとは日本政府、経団連、海外で活動する46のNGOの共同体で、リソースを各団体に転用し、海外で活動するNGOに資金協力をしている。
• 椎名規之氏は2011年の東日本大震災発生時、ジャパン・プラットフォームの事務局長だった。大震災発生後、東北地方には国内のNGOの他、海外で活動する日本のNGOも救援に入って来た。この他、国際的なNGOや外国のNGOもやって来た。これに加え、東北の被災者の間でNGOが組織され始めた。椎名氏はこの様な状況下でコーディネイトは非常に難しく、海外で活動する日本のNGOと国内のNGOが競い合う状態になったという。

• 困難を極めたコーディネイションは椎名氏に数々の教訓をもたらした。
• 「日本での活動は海外よりも難しい」という日本のNGOのメンバーの話から、それは地元の人々とのコミュニケーション不足と、被災者の声を聞くという救援活動の基本認識の欠如から来ているのではないかと気が付いた。
• 海外で活動する日本人NGOの人々にとって、海外から支援を受けるのは初めてのことであった。これを通して支援を受ける国の人々がどの様な気持ちで支援を受けているかを理解し始めたようだという。
• 椎名氏は、コミュニケーションの改善、信頼構築、敬意を払う、異なる受け取り方などはクラシックな教訓であり、再度取り組むべき事だと語った。

効率的な危機管理チームの構築とは

• リスク・マネージメントの専門家ジェリー・シキック氏は「コミュニケーションは誰もが直面する第一の問題だ」と述べ、効率的な危機管理チームの構築について語った。
• シキック氏が言う、明確にすべき6点は:
• 何をやろうとしているのか?
• やるべき事をどの様に実現するのか?
• 具現化に協力してくれる組織はあるか?
• どのように資金・資源を遣り繰りするか?
• チームにどんな技能が期待できるか?
• どの様に権限を最大限に使用できるか?
• 最後にシキック氏は「シームレス・コミュニケーション」の重要性を強調した。シームレス・コミュニケーションとは、すべての言葉が理解されること。「これはおそらく最大のチャレンジ。ある意味を持って何かを言うが、それはその様に解釈されるとは限らない」とシキック氏は述べた。

台風ハイヤン、フィリピン

• 在シカゴ・フィリピン総領事のジェネロゾ・キャロージ氏は2013年にレイテ島タクロバン市を襲った巨大台風ハイヤンについて語った。死者6,000人、行方不明者1,000人、負傷者20,000人、120万に及ぶ民家の全・半倒壊の被害が出、1,600万人に影響があった。
• フィリピンの経済は2000年から2013年まで7%という良好な経済成長率が続いていたが、台風後の2014年第1四半期には5.7%に落ち込んだ。
• 台風の翌日、国連の救援隊が入って来た。続いて国際赤十字、米国、日本、オーストラリア、イズラエル、インドネシア、韓国、UA、UKから救援隊が入って来た。
• キャロージ氏はハイヤンから学んだ教訓として、食料確保、緊急手段、救援隊の受け入れ体制などの準備を整えておくこと、予報に付いての投資、警報システムの改善を挙げた。台風が直撃したレイテ島では、危険が近づきつつあることを殆どの住民が理解していなかったとキャロージ氏は語った。

巨大地震、ネパール

• 在シカゴ・ネパール名誉総領事のマーヴィン・ブラスティン氏はカトマンズを2015年4月に襲った巨大地震について語った。死者数は9,000人、重傷者は18,000人だった。
• 被災地に入ったブラスティン氏は、救援隊の人々は工夫に富み粘り強い人達でシェルター作りに励んでいたが、簡単には変えられない地元の人々の伝統や生活習慣が考慮されていなかったと話した。一方、あの状況の中で圧倒されるほど親切な人達だったと話した。
• ブラスティン氏はネパール政府に受け入れ準備がなかったことが一つの教訓だと話した。50カ国から義援金が送られてきたが、ネパールには受け入れるファンドがなかった。また、義援金の多くが医療費に使われ、学校や再建のためには分配されなかった。更にカトマンズの地勢も復興を阻んでいる。道路などのインフラ整備も悪く救援物資を運び込むことができない。
• ブラスティン氏は「ネパールは素晴らしい国で、素晴らしい人々、倫理観、宗教、温かい歓迎ムードがある」と述べ、「しかし人々は厳しい環境の中で暮らしており、資源を持っていない。だから皆さんが大なり小なりの援助を申し出て下さればありがたい」と訴えた。
• ブラスティン氏はネパールのためのファンドレイジングに尽力しており12校ぐらいの学校を建てたいと献身している。

災害時の役割と準備

• 岩藤俊幸在シカゴ総領事は、東日本大震災を通じて国際コミュニティの支援の温かさを学んだと述べ、世界への感謝の気持ちを忘れてはならないと話した。
• 教訓として学んだことは2つ。1つは災害時に自分の役割を考えること、もう一つは次の災害に直面する時のために最良の準備をしておくこと。
• 東日本大震災発生時、フィンランド日本大使館の公使として赴任していた岩藤氏は、災害発生時前に日本を発ち直行便でヘルシンキ空港に到着する日本人のために、空港でブリーフィングを行う手はずを整えた。これにより家族を気遣って帰国する人達を助けることができた。
• フィンランドは震災支援のための長いリストを出してくれた。その中から必要とされるものを日本に打診したが、回答は皆無だった。岩藤氏は「誰も実態が分からず、誰もが支援したいと思っている。短時間のうちに状況を把握し采配することを考えておく必要がある。100%の準備は難しいが、経験を元に最良の準備はできる。一人一人がそれを考えよう」と語った。


フィリピンに大きな被害をもたらした台風ハイヤン(写真提供=共同)


地震により大きな被害を受けたネパール(写真提供=共同)


東北を襲う巨大津波(写真提供=共同通信)


ネパールに向かう日本の国際緊急救援隊(写真提供=共同)

勝部司氏


椎名規之氏


ジェリー・シキック氏


ジェネロゾ・キャロージ在シカゴ・フィリピン総領事


マーヴィン・ブラスティン在シカゴ・ネパール名誉総領事


岩藤俊幸在シカゴ日本総領事