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絆5:東北経済セミナー
継続する復興へのチャレンジ-
原発から海外企業誘致まで

• 東日本大震災5周年記念「絆5プロジェクト」に関連したイベントの一つ、「東北経済セミナー」が9日、グラント・ソーントンの会議室で開かれた。
• ジェトロ・シカゴ所長曽根一朗氏が「新しい東北の創生」と題して実地に見た被災地域の復興状況と東北経済予測のアップデートを報告。続いて親会社が仙台市にあるアイリスUSAのCEO大山晃弘氏が「東北蘇生への挑戦」について話した後、宮城県経済商工観光部次長の高砂義行氏が「宮城県の復興とビジネスチャンス」について話した。

• 開会の挨拶で岩藤俊幸在シカゴ総領事は、東北産の食品の購入と観光の推進が東北経済の復興をサポートする二つの方法だと述べ、厳しい検査を通ったものだけが市場に出回ることを許されていると食品の安全性を強調した。同時に福島第一原子力発電所の周辺を除く東北地域の安全と観光地としての魅力にも言及した。

「新しい東北の創生」

• まず曽根一朗氏が被災地の復興について最新情報を報告した。それによると、震災による避難者数は47万人から17万4千人に減少、インフラの大部分は回復し、工業生産指数は震災前のレベルに戻っている。放射能の除染作業が継続する一方、避難命令は順次解除されつつある。復興に向けての努力はたゆまず続いているが、まだやるべきことが山積しており、本当の復興には長い時間がかかると思われる。

福島第一原発の廃炉に向けて

• 30年から40年かかると言われている福島第一原発の廃炉に向けてのプロセスは順調に進んでいる。原発は冷温停止の状態で、4号機の使用済み核燃料除去は2014年に完了した。放射能汚染水は、①汚染源の除去、②地下水の汚染源からの隔離、③汚染水の漏れを防ぐ、という三つの基本方針の下にコントロールされており、そのほか「凍土」を用いて水がしみこまないように壁を作る「凍土壁」といったような多重対策も取られている。
• 外洋に流出されていた低レベルの汚染水に対応するため、2015年2月末から浄化処理物質の設置などの追加対策が取られており、同時に総合的なリスク・アセスメントが行われている。
• 原子炉からの核燃料の除去は10年以内に終了する予定で、その後も廃炉プロセスは継続する。
• これまで1986年のチェルノブイリ、1979年のスリーマイル島、1957年の英国ウィンドスケールなど、いくつかの原発事故が起こっているが、福島でも活動した米国の遠隔ロボットシステムの代表者によると、これらのうち廃炉が完了しているものは一つもないという。「福島での作業ペースは早まっており、他のケースを考慮すればむしろかなりの成果を上げている」と代表者はいう。
• 福島県内のほとんどの地域の放射能レベルは、現在ECや米国の大都市と同等になっている。放射能値の測定と検査によって、福島産の食品や農産物は現在日本中で最も安全なものとなっている。「福島の住民はみな噂や間違った情報の被害を被ってきた」と曽根氏は語った。
• 福島にとって将来が嘱望される分野は生命科学と再生エネルギーの二つ。福島ではこの分野で外国企業を様々な方法で誘致しており、現在では震災前の2.5倍の外国企業が県内でビジネスを運営しているという。

「東北蘇生への挑戦」

• アイリスUSAの大山晃弘氏は仙台市出身。親会社アイリス・オーヤマがどのように東北復興の手助けをしてきたかを語った。
• アイリス・オーヤマの大山健太郎社長は、19才で父親の小さなプラスチック成形会社を引き継ぎ、以後50年にわたって事業を拡大。現在では従業員7千人、グループ総売上26億7500万ドルの規模を持ち、家庭用プラスティック製品の大手グローバル会社となっている。日本国内の8生産拠点で15,000種の製品を生産し、さらに毎年1,300品目の新製品を開発、総売上の56%を占めている。国内外に23のグループ企業がある。

• 大震災に見舞われた時、本社オフィスと本工場に被害があったが、約500人の従業員は無事だった。震災3日後388人が社に復帰。その努力の甲斐あって会社は2週間後に業務を再開した。予想外に早い再開だった。
• 従業員の多くが被災したが、アイリスは業務を続けるよう依頼した。製品を生産することで社会に貢献できると信じたからだった。

• アイリスグループに所属するダイシンのホームセンターには、震災の翌日、暖房用の灯油などあらゆる生活必需品を求める人々の長い列ができた。中には客に転売して利益を得るため大量の灯油を購入しようとした者もいた。憤慨した店長は一般の顧客に灯油を無料で提供した。店長はこの行為のため解雇されるのではと心配したが、今ではダイシンストアの社長になっている。

東北復興への貢献

• アイリス・オーヤマではまず3百万ドル相当の現金と物資を地元に寄付することを決定。物資は地元の切実な需要に応えたものだった。ついで被害の大きかった地域の高校から卒業生を採用することを決め、さらに電力不足に対応するためLED照明を増やす努力をした。震災の後国内の原発はすべて操業を停止した。それまで一般的に使用されていた照明をLEDに変えることで50%の電力節約になるからだった。東北、さらに日本全体の資源節約につながるLEDビジネスを手がけたアイリス・オーヤマは、今では日本の照明産業で3位を占めるに至った。
• また社長大山健太郎氏の提唱で、地元のビジネスリーダーを育てる「東北未来創造イニシアティブ」が立ち上げられた。震災のために職を失った人たちやビジネスを失った経営者のために、1年間のセッションを通して支援やガイダンスを提供する。参加者の多くが地元でビジネスを立ち上げる援助を受けた。
• 最後に地元の農家へのサポートが挙げられる。良質の米で知られる東北の農業を助けるため、アイリスは新技術による精米所を建設。収穫した米の鮮度を長く保つ技術によって、東北産の米は他地域産の米に十分太刀打ちできる競争力を持つことになった。

• 東北をさらにサポートするために次に必要なことは、アイリスがそのグローバルな関連会社のネットワークを通じて東北産の商品を世界に提供することだと大山氏は語った。

「宮城県の復興とビジネスチャンス」

• 高砂義行氏が宮城県のインフラ、新しいコミュニティの建設開発、産業の回復について話した。

インフラについて

• 県内の道路や橋の約95%は再建されている。また港湾のコンテナ取扱量は震災前のレベルまで回復しており、さらに新しいコミュニティの建設も進んでいる。

新しいコミュニティの建設について

• 現在2つの方法でコミュニティ建設を進めている。一つは住宅地を高台に建設し、代わりに工業施設を低い土地に移すことによって住民の津波被害を最小限に抑えるという案(図1参照)。もう一つは県南部で実施される「多重防御システム」と呼ばれるもので、沿岸地域を農地にし、住宅地を内陸部へ移す。護岸堤防・道路・鉄道などが津波の防波堤の役割を果たすことになる(図2参照)。

• 宮城県の人口は約230万人。震災直後およそ32万人が避難し、現在約47,000人が仮設住宅で暮らしている。政府予算による建設予定住宅15,000軒のうち8,000軒の建設が終わっている。

産業の回復について

• 高砂氏によると、宮城県の産業復興に立ちはだかる壁は人口の減少だ。県外避難者6,000人が宮城県に戻らないままだという。県の産業・ビジネスをグローバル市場に拡大するため、県ではロサンゼルスや姉妹州のデラウエア州で宮城県食品展を開催したり、各種の世界会議を仙台に招致するなどの努力をしている。また宮城県での新たな事業活動の促進と経済復興を目指し、税優遇制度や規制緩和などのインセンティブで国内外の企業を誘致している。
• 2011年にはトヨタ自動車が県内に生産工場を設置、地域における自動車関連産業の拡大に貢献している。また2012年には東京エレクトロンも宮城県で事業を開始。現在150以上の外国企業が県内で活動している。

• 東京の北東に位置する宮城県は東京から新幹線で1時間半、車で5時間の距離にあり、国際貨物を扱う複数の港と仙台空港を抱える。仙台空港は、観光・ビジネス・運輸などへの更なるサービス向上のため、近く私有化される予定になっている。
• 宮城県は低コスト、良質の労働力など企業にとってビジネスの好条件に恵まれていると高砂氏は強調した。


女川駅(写真提供=共同)



アイリス・オーヤマの商品例

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



住宅地を高台に建設し、代わりに工業施設を低い土地に移すことによって住民の津波被害を最小限に抑えるという案

「多重防御システム」と呼ばれるもので、沿岸地域を農地にし、住宅地を内陸部へ移す案


曽根一朗ジェトロ・シカゴ所長


アイリスUSAのCEO大山晃弘氏


宮城県経済商工観光部次長の
高砂義行氏