絆3 アベノミクスと震災復興

 東日本大震災から3年が経ち、アベノミクス現象と復興の進展についての講演が3月13日、シカゴ連邦準備銀行で行われた。講演者はJETROシカゴの曽根一郎所長の他、震災当時JETRO仙台事務所の所長だった中川明子氏が、現地が受けたダメージと復興努力について語った。また、震災で大きな被害を受けた家庭用木製品総合メーカー(株)光大産業の根本昌明社長も出席した。

Japan is Back

 JETROシカゴの曽根一郎所長は日本の経済復帰、アベノミクスと中西部における日本とのビジネス機会について講演した。

 アベノミクスの効果は:
・GDP成長率
 2013年の第3四半期は1.1%、前年同期の▲3.2%から飛躍した。
・日経平均株価日経
 \16,291 (Dec. 30, 2013)。安倍政権発足時のDec. 26, 2012は\10.230だった。
・為替
 \105.30 (12/30, 2013)。Dec. 26, 2012は\85.15だった。
・失業率
 3.7%(2013年第4四半期)。2012年の平均は4.3%だった。
・短観による景気動向指数
 2013年12月の大企業は18(前年同期▲3)
 中型企業は9(前年同期▲5)
 中小企業は3(前年同期▲12)
※製造業・非製造業の中小企業の50%以上がポジティブな見方を示すのは22年ぶり。

2014年GDP成長率予測
 日本政府予測は1.4%、民間エコノミストの予測は0.84%。4月に消費税が5%から8%に引き上げられるが、その影響は一時的と見られ強い経済が維持される。
 2017年までのGDP成長率の長期予測は、IMF(2.0%)、世銀(1.1%)、日本政府(1.0%)

東京オリンピックのインパクトは
300億ドルから200億ドルの経済効果があると予測されている。また、約80%の企業が日本経済における需要が顕著な高まりを見せると見ている。更に、33.4%の企業がビジネスにポジティブな効果があると見ている。

海外からの日本投資の促進

 JETROでは海外から日本への直接投資を促進するため、担当者を倍増する。また、海外企業向けのワンストップ・サポートを強化する。

 2003年度から2012年度間にJETROでは1万件を超えるプロジェクトを通して、約1,000社を海外から日本へ誘致した。日本へ進出した企業は米国が約32%、中国が約11%、ドイツが約10%となっている。
 海外投資促進についての詳細はwww.jetro.go.jp/en/invest/incentive_programs。

 東北地方へは既に、Amazon.com、Ikea、Toys R Us、GEが進出している。

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東日本大震災を乗り越える

 震災当時JETRO仙台の事務所長だった中川明子氏(現・展示事業部長)は「大震災を乗り越える」というタイトルの下、JETROの支援プログラムと米国による支援に対する感謝について語った。

 大震災による東北と他地域の死亡者と不明者数は1万8,520人、全壊・半壊・火事・浸水により被害を受けた建物は41万3,945軒。(2014年2月10日現在)

 震災後JETROでは支援のための調査を開始、水産加工業のダメージが最大で即座の復興は難しかった。内陸部の製造業は1ヶ月から2ヶ月の間に復興した。
 復興の障害となるのは福島第1原発事故に起因する不正確な情報と放射能物質汚染のウワサの拡散だった。JETROでは国外の報道関係者や食品輸入業者、シェフらを招待し、正確な情報提供に努める一方、製造業に対しては現地トレイド・ショーの開催や、国外トレイド・ショーへの参加を支援するなど、ビジネス機会の提供に努めた。
 シカゴではマコーミック・センターで開催される「Home + Housewares Show」にこの3年、被災地の企業が参加している。今年は3月15日から18日にかけて開催され、被災地から4社が出展した。

JETRO福島に関して

 福島県は果物の産地として知られ、特に桃で有名。2005年から桃の輸出を始め、年間70トンを輸出していたが、福島第1原発の事故で輸出が止まった。JETROでは福島県庁と協力し、タイの果物の輸入業者を招待して安全性を訴え、2012年からたタイへの桃の輸出に成功した。その後、マレーシアへの輸出も決まり、2013年には両国へ3.1トンを輸出した。

復興状況

 震災による避難者数47万人は28万人に減少した。殆どの避難者は仮設住宅に居住。

 公共インフラは安定した改善を見せている。道路の99%、鉄道の89%が回復している。

 製造業は、ほぼ震災前のレベルに回復している。しかし、漁港の回復はまだ37%に留まっている。しかし、漁獲高(重量)は震災前の70%、水産加工業は75%まで回復している。
 ダメージを受けた農地の回復は63%。福島県の進入禁止地区を含めて2万1,480ヘクタールの農地が津波によりダメージを受けた。2013年7月までに1万3,470ヘクタール(63%)が回復している。

 雇用状況は、求人数が求職者数を上回る。就業者数は震災前までほぼ回復しているが、ひどいダメージを受けた地域では就業者数が回復していない。また、建設業界では労働者不足となっており、求人側と求職者のミスマッチが起きている。

 福島第1原発事故による避難者数は14万6,000人。日本政府は2013年度予算で73億ドルを福島の復興促進に充てている。その後の復興支援も優先項目となっているが、長期避難者が元の家に帰れるメドは立っていない。

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後を引く放射能物質のウワサ
海外に目を向けなければ生き残れない

 シカゴのHome + Housewares Showに出展した木製家庭用品メーカー光大産業の根本昌明社長にお話を伺った
 光大産業は福島県本宮市、福島第1原発から約60キロ離れた所にある。震災が起きた2011年3月11日、根本社長は中国工場に出張していた。急きょ帰国したが、東京から福島に帰るまで3日を要した。
 第二工場の天井が落ち、地盤沈下で給排水設備が全部ダメージを受け、被害額は億単位という大きな被害を受けた。しかし、社員が総出で復旧作業に当たり、根本氏が会社に戻った14日の夕方には「明日から操業できます」と報告してくれた。
 会社には、お客様に物を作ってお届けするという供給責任がある。製品作りは始まったが物流が寸断されて納品に困った。ガソリンも手に入らなかった。
 根本氏は「追い詰められるとみんなの知恵が出てくる」と話す。困っているという情報を発信すると、こんな手伝いができるという応答が数多くあったという。段ボールの供給会社の好意でガソリンを入手することができ、2週目からは全国に納品できるようになったという。
 根本氏は「絆という一言では済まされない日本人独特の縦横の繋がりがあり、それで助け合う」と話す。
 一方、心ない中傷もあった。光大産業の社員が大阪のガソリンスタンドに給油に行くと、洗車してからもう一度来るように言われたという。
 その様な中傷に対して根本氏は「それだけ日本は平和ボケしていると思います。原発って、誰のための福島原発だったんですか。福島県民のためのものだったんですか? そうじゃない。
東京電力から供給してもらっている人のための施設だった訳でしょう」という。

 放射性物質による汚染というウワサは、光大産業のビジネスにもダメージを与えた。「大阪以南の(取引先は)、福島の木材ではちょっとまずいから、というのがあったり、キャンセルもありました」と語る。そのダメージは売上全体の約15%に当たる。そして、ウワサによるダメージは、まだ戻っていないという。

 根本氏はその対策を海外進出に求めた。2012年1月にはJETROの支援でニューヨークのトレイド・ショーに初出展した。シカゴには昨年のトレイド・ショーから参加している。その時に、ショーを見に来ていた日本のデパートのバイヤーが光大産業の製品に目を留め、商談ができるようになったという。「日本で福島の光大産業ですと言っても、ノーサンキューで終わってしまいますからね」と根本氏は語る。海外に出たことによって国内のビジネスに繋がるという、まさにビジネスの逆輸入となった。

 シカゴでは、日本のヒノキで作った正目のまな板や寿司トレイなどを紹介している。世界認証木材としてFFCの認可を受けており、肉用、魚用など色々なまな板を展示した。ヒノキは水切れが早く、ヒノキチオールで抗菌作用があるという。

 根本氏は「僕の考えは、海外に出て海外の人に認めて貰い、逆輸入することです。海外の家庭用品の店でうちの製品が並んだ、海外で認められているということになればね。それをやろうとして一生懸命にやってます」と語った。
 光大産業は今年1月、フルコンテナで初めて製品を出荷した。

 光大産業は中国に工場があることから、国際貿易に不慣れではなかったが、製品の輸出はしていなかった。国内シェアは高いが、日本の少子化などを考えると30年先、50年先を見据えなければ生き残れない。「自分が社長の時代はいいですけど、次にバトンタッチする時にどうなるでしょうか。日本の企業は中小企業であっても、やはり海外を見て、商売をしなかったら生き残れないと思います。海外展開は4本柱の1本にはしようと思います」と語った。

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