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レッド・プラネット、
火星の生命をを探る (1)


NASAは2014年12月16日、火星探索機キュオリオシティが通常の10倍ものメタンを計測したと発表した。メタンは生命の元になる有機化学物質。この他、掘削した岩のサンプルから有機分子も検出したと発表した。

 「メタンの一時的な急上昇は、キュオリオシティの近くにメタンの発生源があることを示している。考えられる発生源として、生物的または水と岩の作用による比生物的な理由がある」とキュオリオシティ科学チームは述べている。

 NASAは2013年9月19日に「キュオリオシティで6回にわたって火星の大気成分を分析した結果、生命活動の証拠となるメタンは検出できなかった」と発表していたが、今回はそれを覆す発表となった。
NASAによると、キュオリオシティに搭載されているサンプル分析ラボを使い過去20ヶ月で十数回のメタン計測を行ったところ、2013年の終わりから2014年の初めにかけての2ヶ月間で、10億分の7のメタン濃度を4回計測した。その前後の平均濃度は10億分の1程度のレベルで、4回とも急上昇後は通常のレベルに戻ったという。

2014年12月16日付けのサイエンティフィック・アメリカンによると、10億分の1の濃度で年間約200メートルトン(1メートルトンは1000kgに相当)のメタンが火星の大気に放出されているという。一方、地球では年間5億メートルトンのメタンが大気に放出されている。地球のメタンの主な発生源は、澱んだ水の中に生息する嫌気性細菌や動物の消化器官だが、ミネラルを多く含む岩に熱い湯が流れ込んだ場合にもメタンが発生するという。
火星の希薄なメタンは、炭素を豊富に含む隕石や彗星、惑星間を漂うチリなどが火星の表面に降り注ぎ、それらに紫外線が当たることによってメタンを発生させていると見られている。しかし、今回報告された4回にわたるメタン濃度の急上昇はそれでは説明できない。別な見方として、火星の地中にある包接化合物、網状に結晶した氷の中に閉じ込められていたメタンガスが放出されたのではないかとキュオリオシティ・チームでは考えている。

一方、微生物による可能性もある。NASAの発表によると、キュオリオシティはカンバーランドと呼ばれる地域で掘削した岩の粉の中から有機物質を検出した。これらは火星の土から初めて発見された有機物質で、火星でできたものか隕石によって運ばれて来たものか、いずれかだと考えられる。
炭素と水素を含む有機分子は生命の基礎的要素だが、生命がなくても存在する。キュオリオシティが火星の大気や岩から検出した有機分子により、火星で微生物が育まれたかどうかを決定付けることはできないが、これらの発見は現在の火星が化学的に活発であることや、古代の火星が生命を育むに適した環境であったことを明らかにしているという。

 研究チームは、キュオリオシティが検出した炭素化合物が、キュオリオシティ内部に閉じ込められて地球から運ばれて行ったものではないかと言う疑問にも取り組んでいる。広範囲に及ぶテストや分析から、検出された有機分子は火星のものだという自信を深めているという。

 一方、有機分子のうちどれが火星のものであるかを見極めるのは、容易ではなさそうだ。火星の岩や土に含まれるミネラルの一種である過塩素酸塩はラボの中で熱を加えた時に有機分子構造に変わることから、有機分子が火星で発生したものであることに不確かな部分も残ると言う。

 「火星の岩に有機炭素があったことが確認されたことは、かなり期待できる。有機物がどの様に作られ保存されたか、その過程を知らせてくれる重要なものだ。また、地球と火星の違いやゲイル・クレーターの堆積岩によって示されている環境が有機物質の堆積に良い環境であったか否かの情報も得ることができる。より多くの有機構成物が含まれると思われるマウント・シャープの岩を調べることが今後のチャレンジだ」とキュオリオシティ参加科学者のロジャー・サモンズ氏は述べている。

 NASAはキュオリオシティが調べた火星の水についても報告している。この水は30億年以上前にゲイル・クレーター内にあった湖底の岩に含まれていたもので、湖底が形成される前から火星は多くの水を失い、湖底が形成された以後も多くの水を失い続けたことが分かると言う。
キュオリオシティの分析によると、水の分子は数十億年前に採取した岩の中に閉じ込められたもので、キュオリオシティのラボ内で加熱によって岩石の外に出た。これによって火星の水の歴史が分かるという。水の分子の中の重水素と水素の割合を見ると、水が作られた時の環境が分かる。

現在の火星の大気中にある水と岩から出てきた水の重水素と水素の割合を比較すると、岩の水の重水素は大気中の水の半分ほどしかない。これにより岩ができた後に多くの水が失われたことが分かるという。一方、岩の水の重水素は、火星に最初にあったと推測される水と比べるとその割合が3倍高い。これにより岩が形成された段階で、火星はすでに多くの水を失っていたことが分かるという。

火星の水の存在は、望遠鏡による観察に頼っていた時代から予想されていた。実際に水の存在が確認されたのは、2008年5月26日に火星の北極近くに着陸した探査機フェニックスによるものだった。着陸時に、噴射によって吹き飛ばされた土の上に白い粒が現れた。それが蒸発して消えたことから氷ではないかと指摘され、同年8月1日に土壌から水蒸気が出ていることが確認され、水の存在が明らかになった。
以後も火星の水探しは続いていたが、当時は火星の平均気温はマイナス40度からマイナス50度(華氏)だと想定され、真水の流れは無いとされていた。
水の流れがあったことが発表されたのは2012年9月27日のことだった。キュオリオシティが水の流れで丸くなった石の写真を送って来たことで、太古の川底の存在が明らかになった。同時に温暖な時期があったことも確認された。そして、火星の水の存在は周知の事実となった。現在、火星の気温は華氏60に達する地域があることが分かっている。

 火星の水や生命の存在は、科学的な裏づけを待ちながら徐々に報告されている。一方、NASAが公開している写真には、生命があった、もしくは現在も生命が存在すると思われる光景がたくさんある。それらについての説明はないが、いずれ明らかにされる日が来るだろう。

掲載の写真は2004年4月23日に探査機オポチュニティが撮影した火星のメリディアン・プラナム地域にあるクレーターの写真。写真説明によると、クレーターの直径は約8メートル。クレーターの周りには瓦礫が散乱しており、クレーターの右側をずっと見ていくと、擬人化した動物の彫刻のような頭の部分がある。
この写真はNASAのジェット・プロパルジョン・ラボラトリーのウェブサイトに収録されている。写真番号はPIA05990。
ウェブアドレスは http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/pia05990

探査機オポチュニティが撮影した火星のクレーターの写真(Image Credit: NASA/JPL/Cornell)


上の写真の右上の部分に、動物を擬人化した彫刻のようなものが
見える。
(Image Credit: NASA/JPL/Cornell)


メタン発生のイメージ図
(Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SAM-GSFC/Univ. of Michigan)