シカゴ双葉会全日校卒業式
―母校を誇りに次のステージへ―
眩しい春の青空に恵まれた3月13日、シカゴ双葉会日本語学校全日校の卒業式が厳粛な雰囲気の中で行われ、小学6年生14人と、中学3年生6人が卒業した。
卒業生は一人ずつ長谷川雄一校長から卒業証書を授与され、清々しい達成感を噛みしめた。
校長式辞
長谷川校長は式辞で、卒業証書はそれぞれ小学校6年間、中学校3年間の教育課程を収めた証となり、卒業は人生の大きな節目の一つになると、その大切さを説明した。
小学部の卒業生が行事ごとに自信を付け仲間を大切にしながら成長する様子を見て来た長谷川校長は、印象深かった事として、担任の先生が授業で話したアフリカの子供達について、「アフリカの子供達の幸せとは何ですか?」と生徒が質問した事に触れた。長谷川校長は「皆さんは6年間で文字を学び本を読み、視野を広げて来ましたが、世の中にはまだ答えが見つからない物事がたくさんあります。これからも自分にできることを常に問いながら学習を深めて下さい」と小学部の卒業生を励ました。
また長谷川校長は、コロナ禍や多くの友達との別れを経験した中学部の卒業生に向かい「人は人との出会いで心を広げ、人との別れで心を深くします。これからは出会う人との縁を大切にしながら自らの道を切り開いて行って下さい」と、それぞれの道に歩み出す卒業生を鼓舞した。
そして長谷川校長は卒業生全員に対し、生まれた時に取り上げてくれた看護婦さんの名前やシカゴに到着した時の飛行機の機長の名前を覚えているかと問いかけ、「皆さんは家族や友達など大切な人々だけでなく、名前も知らない多くの人達に支えられて生きている事を忘れず、皆さんもいつか家族を守り社会の一人になって欲しいと願っています」とはなむけの言葉を贈った。
最後に長谷川校長は、保護者の方々のこれまでの理解と協力に感謝の言葉を述べた。
来賓祝辞
来賓の柳淳在シカゴ総領事は、楽しい事も辛い事も貴重な時間を共に過ごして来た仲間との絆を大切にして頂きたいと話し、シカゴという新しい地で不安を乗り越えて来た卒業生達を思いやった。
そして、全日校中学部、現地校、日本の中学校へ進む小学部の卒業生、日本の高校へ進む中学部の卒業生それぞれに、今までの学校生活を思い出にするだけでなく「自身の糧として一層輝いて欲しい、日本に帰ってもアメリカでの思い出を大切にして、これからも何らかの形で日本とアメリカの架け橋になって頂きたい」と祝辞を贈った。
また柳総領事は、日本から遠く離れたシカゴで子供達の成長に向かい合って来た保護者の方々の苦労を思いやり、校長、教頭をはじめ教職員の方々、シカゴ日本商工会議所双葉会学校運営委員会、総ての関係者の方々に感謝の気持ちを述べた。
同じく来賓の大塚優双葉会会長は、「双葉会の会長が何なのか皆さんは分からないと思いますが、我々も陰ながら双葉校を魅力ある学校にしようと努力して来た人間の一人で、シカゴの仲間だと思って頂ければと思います」と卒業生に語り掛け、「この時を皆さんと一緒に過ごせた事に本当に感動しています」と感動の涙をまぶたの裏で乾かしていた。
そして、大塚会長は「皆さんは人の心を震わせ感動させることができる人間なんだという事に自信を持って頂きたい。これからの長い人生で困った時や悩んだ時に、『自分は人を感動させることができたのだ』という事を思い出せば、少し気持ちが楽になるかも知れない。それを是非胸に刻んで、次のステージに向かって下さい」と祝辞を贈った。
田村穣前校長を始め、双葉校で教えた多くの先生方から卒業を祝う祝電が届き、卒業生の門出を祝う暖かい言葉が贈られた。
また、坪井繁幸PTA会長から卒業生に文房具セットが贈呈された。
送辞
小学部5年生の伊藤大智さんは送辞で、先輩と過ごした日々について話し、「熱心に勉強に取り組んだり、仲間と力を合わせて運動会の練習に励んだりしている皆さんの姿を見て、私達も頑張ろうという気持ちが高まりました。常に私達の手本となってくれた6年生の皆さんには、感謝の気持ちでいっぱいです」と語った。
そして、「4月からは私達が最上級生になります。6年生の皆さんのように下級生にとって頼もしく手本になれる存在になれるか心配ですが、皆さんに教えて頂いたことを胸にシカゴ双葉会日本語学校全日校小学部を引っ張って行きます」と力強く送辞を結んだ。
中学部2年の森彩華さんは送辞で「2年生が中心となって進めた運動会や双葉フェスティバルを成功させることができたのは先輩方の頼もしい姿があったからです。私達では解決できない問題に対して的確なアドバイスを下さり、どんな時でも自分に自信をもって行動する事の大切さを教えてくれました。この様な先輩方は、後輩である私達が尊敬する存在でした」と、溢れる感謝の気持ちを語った。
そして森さんは「来年は私達が先輩に代わり、学校のリーダーとなってみんなを支えなければいけません。先輩方が作り上げて来たこの学校の基盤を大切にし、さらに上に積み上げて行けるよう全力で精進します。卒業生の皆さんの未来が希望溢れるものであることを心から祈念いたします」と送辞の言葉を贈った。
答辞
小学部6年生の高山希彩さんは答辞で、諦めずに続けることの大切さを学んだ体験について語った。上手にできない事を続けるのが苦手だった高山さんは、苦手な事を克服しようと取り組むクラスメイトの姿に触発され、そのクラスメイトのようになろうと努力した。そして「私はこの1年間で大きく変わることができたと思っています」と胸を張って話した。
そして、在校生には「皆さんには元気よく挨拶をしたり、仲間と行動したり、多くの長所があります。その長所を伸ばして下さい」と言葉を贈った。
先生方には、授業やお話で多くを学び、毎日知識が増えて学校に行くことが楽しみだったと話し「これからは多くの知識を生かして行きたいと思います」と元気に語った。
両親には、分からない問題を分かるまで教えてくれた事など「今まで助けてもらったことに心から感謝しています」とお礼を述べ、「私達6年生は、この6年間で学んだことや感謝の気持ちを胸に、未来に羽ばたいて行くことを決意しています」と答辞を結んだ。
中学部3年の古屋希実さんは答辞で「3年間はあっという間でした。何気なく過ごして来た仲間達との時間も、今となっては掛け替えのないものに思えます」と話し、現地校との交流や問題意識を共有した双葉フェスティバルなど、足並みを揃えて苦難を乗り越えて来た多くの経験や思い出を語った。
そして「この様な意義のある活動ができたのも先生方や保護者の皆様、在校生の皆様の支えがあっての事です。私達は感謝の気持ちでいっぱいです」と話し、「私達は全日校からそれぞれの道に進みます。この学校が母校であることを誇りに思い、それぞれの場所で頑張って行きたいと思います」と力強く答辞を述べた。
卒業式の最後には卒業生と在校生が向かい合い、在校生は卒業生を送る歌を、卒業生は「旅たちの日に」を歌い、卒業生には最後となる校歌を斉唱した。