関西経済連合会会長松本氏、関西とシカゴランドの絆を強化

松本正義会長歓迎レセプションで、シカゴと大阪関係強化を祈念し乾杯する日米ビジネス人

 関西経済連合会(公社)会長の松本正義氏の歓迎レセプションが10月5日、ワールド・ビジネス・シカゴの主催で開催された。会場となったシカゴ市リバーノース近隣にあるイベント会場The Ivy Roomには、日米双方から多くのビジネス人が参集した。

 同レセプションはシカゴ姉妹都市インターナショナル大阪委員会委員長の名嘉君代氏が司会を務め、松本氏を紹介した。

 松本正義氏は住友電気工業(株)の取締役会長を務め、関西経済連合会の他、2025年日本国際博覧会協会(公社)の共同会長、大阪マラソン組織委員会の会長も務めている。松本氏はシカゴマラソンが開催された10月8日に、シカゴマラソンと大阪マラソンの姉妹マラソンパートナーシップへの調印もシカゴ訪問の目的の一つだった

ワールド・ビジネス・シカゴのCEO、マイケル・ファスナート氏

  シカゴ側からは、ワールド・ビジネス・シカゴのCEOでシカゴ市のチーフ・マーケティング・オフィサーのマイケル・ファスナート氏とニデックOKK USA Corp.のプレジデント、ジェフリー・スミス氏が歓迎の挨拶を述べた。

 ファスナート氏は「松本氏は50年前のシカゴ-大阪関係のキーパーソンだった」と述べ、シカゴ市と大阪市だけでなく、シカゴ地域全体と関西地域全体との経済関係による繁栄を歓迎すると共に、松本氏のリーダーシップを歓迎した。また、ファスナート氏は10末にはシカゴ市の強力な派遣団が大阪と東京を訪問すると語った。

ニデックOKK USA Corp.のプレジデント、ジェフリー・スミス氏

 スミス氏は大阪に10年間在住し、大阪を第二のふるさとと呼ぶ。スミス氏はシカゴ市と大阪市の橋の数を出席者に問いかけ、シカゴ市は少なくとも380橋を持ち、大阪は八百八橋と言われる多数の橋を持つと話した。

 その上でスミス氏は「シカゴと大阪の姉妹都市プログラムは、両都市の向上への架け橋だった。この2都市を繋ぐ架け橋をみんなで強化することを望んでいる」と語った。

 

柳淳在シカゴ総領事

 柳淳在シカゴ総領事は、シカゴと関西との関係強化のために来訪した松本氏を歓迎し、日本酒の愛好家と聞いている松本氏を、総領事館は酒テイスティングでもてなしたいと挨拶した。

 会場には酒ディストリビューター数社による酒テイスティングのテーブルが用意され、柳氏は日本の国酒である酒を試飲し、家庭や会社のイベントで日本酒を飲んで欲しいと奨めた。

 

松本正義氏プレゼンテーション

松本正義関西経済連合会長、住友電気工業取締役会長、2025年日本国際博覧会協会共同会長、大阪マラソン組織委員会会長

 住友電気工業に勤める松本氏はシカゴ地区への駐在で、1973年にオヘア空港に降り立った。そこで巨大なオヘア空港や壮大なシアーズタワーに圧倒され、突き上げるような奮起に震えた。そして「米国のトップ・セールスマンになるんだ」と熱望を抱いた。50年後の今、松本氏は望んだ総ての指導的地位を手中に収めている。

 ポーディアムに立った松本氏は「関西経済連合会会長としてシカゴと大阪間のビジネスの架け橋を加速させ、まさに大阪一番の橋にしたい」と述べ、①関西地区の概要、②関西経済連合会の活動、③Expo2025 大阪・関西万博についてプレゼンテーションを行った。

 

関西地区の概要

 1.関西地区とは大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県の6府県から成り、広い意味では福井県、鳥取県、三重県、徳島県を含み10府県となる。

2.日本の首都は19世紀半ばまで関西にあり、観光スポットの宝庫となっている。

日本の国宝の56%、世界遺産の24%、重要文化財の47%、国立公園の18%が関西にある。

 また、大阪市は住みやすさにおいて、世界で10位にランクされている。(The Global Livability Index 2023より)

3.関西の経済規模は8,000億ドルを上回り、イリノイ州、オランダ、サウジアラビアに匹敵する。

4.日本全国に対する関西地区のGDP比は1970年の大阪万博時の19.3%から2019年は15.3%に落ちている。ゆえに関西経済連合会の役割はGDPの引き上げと経済復活となる。

5.大阪・関西地区の可能性:

・2014年夏にオープニングが予定されている梅北第二プロジェクト。ここではグリーンとイノベーションの統合により豊かな未来のライフスタイルを実現する。

・けいはんな学研都市。京都、大阪、奈良の3府県にまたがる丘陵地に建設整備を進めているサイエンス都市で、30年の歴史を持つ。150を超える研究施設、大学施設、文化施設などがあり、各施設には研究者や職員など約12,000人が就業している。この都市には既に25万人が住んでいる。

 関西経済連合会では、梅北第二プロジェクトのオープニングや2025エキスポにより、潜在している大阪・関西の経済発展の可能性が実現すると期待している。

 

関西経済連合会の活動

1.関西経済連合会は、第二次世界大戦終戦から1年後の1946年に創設され、戦後の復興を活動理念に掲げ発足した。以来77年を経た現在、同連合会は大阪市北区中之島センタービルに本拠を置き、年間予算10億円、スタッフ100人で運営し、会員企業1,300社を持つ。

2.戦後復興に続く現在の関西経済連合の活動理念は:

 常に関西地区を一つと意識し、ビジネス人の討議に基づく独自の研究・調査活動を行い、政府への政策提案や研究・調査に基づく実践行動を通じ、関西地区からの日本経済開発を目指す。

3.松本正義氏は2017年に第15代会長に選出された。当初の急務は大阪・関西への2025年万博誘致で、2018年12月に誘致に成功した。

日本はアセアン諸国と歴史的にも地理的にも近い事から、関西経済連合会はアジア諸国との交流の歴史を持つ。2019年4月には大阪とアセアン諸国間で経済協力合意書に署名し「ABC (Asia Business Creation) プラットフォーム」を確立した。

 この経済協力合意は大阪・関西とシカゴ間でも実行できる。マラソン・プロジェクトや民間企業関係を通して、シカゴと大阪は共に繁栄できると確信している。 

4.関西経済連合会は2019年12月に、2030年の関西地区のあるべき姿「関西ヴィジョン2030」を発表した。

 そのコンセプトは「関西は、グループの生き残りのために頭から未知の水中に飛び込むファースト・ペンギンの精神を持つパイオニアの地区である」というもの。

5.関西ヴィジョン2030は、ABCプットフォーム、イノベーション、分散化と広い地区における運営管理の統合、マルチ・ステークホルダー資本主義(三方よし)、多様性、スポーツ、DXの7本の柱で表される。分散化と統合、マルチ・ステークホルダー資本主義を特に重要視している。

6.関西経済連合会は関西地区の交通網の強化に尽力している。その中には下記のプロジェクトがある。

・ニュー・ハイウェイ・プロジェクト

・北陸新幹線の大阪乗り入れ

・関西地区3空港のリノヴェーション。関西国際空港のT1リノヴェーションは2025年春のオープンとなる。

 

エキスポ2025 大阪 関西 日本

1.エキスポの概要

・正式名:Expo 2025 Osaka, Kansai, Japan、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)

・期間:2025年4月13日-10月13日(184日間)

・テーマ:いのち輝く未来社会のデザイン

・サブテーマ:いのちを救う、 いのちに力を与える、 いのちをつなぐ

・コンセプト:未来社会の実験場

・参加国:153の国または地域、8つの国際機関の参加が予定されている。

2.開催地:大阪府の夢島、英語表記はIsland of Green

3.特長

建設が始まっているウーデン・リングのイメージ
(松本氏プレゼンテーションより)

世界最大の木造建築物「ウーデン・リング」が既に建設に着手されている。

 これは円周2km、直径600mという大きさ。 

4.未来社会のショーケース・プロジェクト

最新鋭のテクノロジーを駆使したエキスポ会場の運営、展示、メンテナンス

・スマート・モビリティ・エキスポ-EVバスによる来場者の移動

・ヴァーチャル・エキスポ-空飛ぶ自動車から見る夢島(Flying Yumeshima)

・アート・エキスポ-ウォータープラザ、ウォーターショー

 多くの最新鋭テクノロジーが披露される。

5.2025エキスポ公式キャラクター

(松本氏プレゼンテーションより)

 キャラクター名は「みゃくみゃく」。みゃくみゃくとは命の躍動であり、英知や知識、産業、テクノロジー、文化などみゃくみゃくと生み出される遺産であり、脈打つ切望や夢でもある。このキャラクターは非常に人気があり、わくわくさせるものだという。

 

 松本氏は「皆さんに大阪でお会いするのを楽しみにしています。エキスポ会場でお会いしましょう!」とプレゼンテーションを結んだ。

Q&A

 質疑応答コーナーでシカゴ新報は、エキスポ会場で参加国のパビリオン建設が遅れている事について質問。これについて、2025年日本国際博覧会協会の共同会長を務める松本氏は「エキスポ2025年のナンバー2として、今承知している限り問題はない」と答えた。

 同氏によると、ウクライナ戦争などにより、環境は大幅に代わり、資材コストは天を衝く勢いで高騰している。また、日本は2024年より労働環境規制の強化を実施し、労働力の確保も難しくなっているという。

 いずれにしても日本政府は予算を持っており、各国の事情を踏まえ各国政府と話し合いを続けているという。

 同協会では既にタイプA、B、Cの3つアイディアを持っている。各国が独自に企画しパビリオンを完成させるA案が一番良いが、それができない国には協会がパビリオンを建設し貸し出すというB案、協会が大型のパビリオンを建設しスペースを各国が分かち合うというC案。

 リードタイムを考慮して、もう一つ考えているのがタイプX。これは協会側がボックス型のパビリオンを提供し、建設予算が十分にない国々がボックスを組み合わせて自国のパビリオンを作るというもの。

松本氏はこの様な対処策を用意しているので、2025年4月13日の開催に厳しい問題はないと語った。

 (参考ニュース:大阪・関西万博の会場建設費について、大阪府/大阪市と経済界は11月1日、最大2350億円に増額する方針を決めた。2018年の当初予算の1.9倍となる。)

 松本氏のプレゼンテーション後には、名嘉君代氏の音頭により「50周年を迎えたシカゴと大阪のパートナーシップとこれからの50年に向けて」と乾杯が行われ、酒テイスティングのテーブルを出していたブレイクスルー・ビヴァレッジ・グループ、ワイン・コネクション、コンビニ&カンパイ、オームラサキ・ビヴァレッジ・カンパニーの酒エキスパート4人が挨拶した。

 カリフォルニア米が日本の蔵元で日本酒に

  酒テイスティングにテーブルを出していたオームラサキ・ビヴァレッジ・カンパニーの販売とマーケティングのディレクター、マイケル・ジョン・シムキン氏にお話を伺った。

 シムキン氏が奨めていたのは「羽化」というブランドで、まさに日米合作の日本酒だった。羽化ブランドにはブラック・ラベル・オーガニック純米大吟醸、ドライ・オーガニック純米大吟醸、羽化スパークリング酒オーガニック純米大吟醸の3種がある。

 使われている米は、アメリカ生活が長い人には良く知られている国府田(こうだ)農場で作られている国宝ローズのオーガニック米だ。そのオーガニック米が福島県の蔵元で酒に生まれ変わる、まさにサナギが美しい蝶に羽化するようだ。なぜ国府田米なのか、なぜ福島で醸造されるのか、カギを握るシムキン氏に伺った。

Q:なぜ日本酒に興味を?

シムキン:私はワイン・ビジネスをやっていました。妻が埼玉県出身の日本人ですから、日本酒はカジュアルに飲んでいました。私はずっとニューヨーク在住です。

 2003年のある夜、ニュージャージーで行われた日本とのネットワーキング・イベントで、新潟の醸造所の人と知り合いました。彼はMBAを取得したばかりで、日本酒の輸入会社を米国に設立しようと考えており、私に助けを求めました。 

 私は2年間、新潟と米国を往来し、彼と共に日本酒の輸入業者となりました。ニイガタ・サケ・セレクションズと言います。私は新潟県の11の蔵元から18ブランドの酒を米国市場に出すのを助けました。それが私の酒ビジネスの始まりです。 

 あれは2019年のことです。国府田農場の三代目、ロス・コーダ氏が私にコンタクトして来ました。カリフォルニア米を祖父の出身地の福島に持って行き、国府田米で酒を造りたいと思っていたからです。創始者の国府田敬三郎氏は1908年にアメリカに移住し、国府田農場を開き、そのブランド「国宝ローズ」は高い評価を得ています。ですから家族の故郷の福島で日本酒にしたかったんです。

 ロス氏と私は国府田米を福島県二本松市に送りました。そこにある人気酒造で醸造してもらうことにしました。

 人気酒造社長の遊佐勇人氏は、老舗の奥の松酒造社長の遊佐丈治氏とは兄弟です。勇人氏は奥の松を出て、老舗の酒ではなく自分の酒を造るために別の会社を作ったのです。 

 ある時、遊佐勇人氏、市島酒造の市島健二氏、それともう一人の蔵元の人物と私の4人で東京で夕食を共にしました。我々は醸造したばかりの羽化の生酒を飲んでいました。

 彼らにカリフォルニア米に違いがあるかどうか羽化について訊くと、彼らは「違いは分からない。(日本の米の酒と)同等の質だ」と答えました。

 「羽化」という漢字はmetamorphosis、またはtransformationです。文字通り毛虫が美しい蝶に変わるように、国府田米を日本に送りそれが酒に変身するという意味を込めたブランド名です。

 私はもう酒業界で20年以上になりますよ。

Q:良いお話、ありがとうございました。

   羽化ブランドについての詳細はhttps://ukasake.us/jp/

マイケル・ジョン・シムキン氏は、米国市場参入を望む酒造と米国との懸け橋となっている。

マイケル・ジョン・シムキン氏とは

 ニューヨーク生まれのマイケル・ジョン・シムキン氏は大学時代に日本と東アジア研究を専攻し、新潟県の青木酒造、朝日酒造、市島酒造で修業している。 

 シムキン氏は権威あるワイン教育機関the Wine & Spirit Education Trust (WSET)で最高のレベル3の資格を持つ。また、新潟県政府や新潟県酒造組合の要請により、日本酒のカリキュラムをWSETに入れるために仲介した人物でもある。

 自らの心と精神は日本にあるというシムキン氏は、20年以上に亘り米国市場に参入を望む蔵元を支援する架け橋となっている。

  

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