酒グルメ、日本各地の料理を探索

日本酒と和食のペアリングを味わう、40人の業界プロフェッショナル。

 レストランや日本酒の卸、小売店など業界のプロフェッショナルを迎え、プレミアム酒と料理のペアリング・イベントが10月3日、在シカゴ総領事公邸で開催された。在シカゴ総領事館の主催によるもので、ブレイクスルー・ビヴァレッジ・グループの酒エキスパート、トナ・パロミノ氏やコンビニ&カンパイの共同創始者で酒エキスパートのジュン-ジュン・ヴィシェイクル氏による日本酒についての説明や、公邸シェフ西村晃子氏による料理のプレゼンテーションが行われた。また、酒造りについてのビデオも上映され、好評を得た。ビデオの視聴はhttps://www.youtube.com/watch?v=AME4TTw0fjQ

 出席者を歓迎した柳淳総領事は、西村シェフによる和食とその料理に合う日本酒を紹介することを嬉しく思うと話し、食材は日本貿易振興機構(JETRO)の提供によるものだと食材入手情報にも言及した。

 柳氏は、日本酒は蒸留酒と思われがちだが米と麹と水で醸造されるもので、和食だけでなく、フランス料理やイタリア料理、アメリカ料理にも良く合うものだと紹介した。

 また、日本酒は日本各地にある蔵元と呼ばれる醸造所で作られ、地元の土地や気候、歴史を反映している。酒という言葉は日本の国酒を意味し、冠婚葬祭になくてはならないものであり、酒を知ることは日本の歴史や伝統、風土を知ることに繋がると語った。

  柳氏は、和食が2013年にユネスコ無形文化遺産として登録されており、日本酒の伝統醸造技術が2024年のユネスコ無形文化遺産に登録されることを期待していると述べ、「日本酒と西村シェフの和食を楽しんで欲しい。そして、その素晴らしいペアリングの経験を友人やお客様と分かち合って頂きたい」と乾杯の音頭を取った。

 酒市場についてのプレゼンテーション

 イリノイ州に本拠を置くBreakthru Beverage Group酒エキスパートのトナ・パロミノ氏によると、同社の2022年の日本酒の売り上げは、前年比46%の伸びを見せた。イリノイ州に限らず、全米的にも日本酒の販売は好調で、過去10年間10%以上の伸びを見せているという。

  特に2022年の同社の顕著な伸びの一因は、COVID-19による2021年のレストラン営業自粛にあるとパロミノ氏は語る。ほとんどの場合、日本酒は日本レストランで飲まれていたことから、日本酒販売も大きな打撃を受けた。

 だが、レストランがテイクアウトに方向転換したことが希望の光となったとパロミノ氏は語る。顧客達も寿司をテイクアウトし、日本酒をリカー・ショップで購入し、自宅で寿司と一緒に日本酒を飲むようになったという。

 2022年半ばにはレストラン営業がほぼ通常に戻り、日本酒の売り上げも大幅に延びた。日本酒の伸びは一過性のものではなく、パロミノ氏によるとBreakthru Beverage Groupの2023年の1月から5月までの販売額は前年同期比10%以上の伸びを見せている。また、特定の酒ブランドは年間、数百ケースが売れているという。

酒マーケティング・トレンド

 好調の陰には酒業界の国際化への努力もありそうだ。かつては日本酒の伝統的スタイルをそのまま米国に持ち込んでいたが、1年を通して販売される生酒に季節性を出したり、燗をつけて飲む酒を冷酒にしたり、うま味よりも爽やかさやフルーティさを出したり、安酒よりもプレミアム酒に重点を置いたり、漢字だけだったラベルに英語を入れるなど、アメリカ人の嗜好を重視し酒へのアクセスを容易にする工夫が行われて来ている。

 

日本酒と和食のペアリング

 西村晃子シェフの料理は、酒ソムリエの資格を持つ在シカゴ総領事館の小島佐和子氏がシェフに代わって説明した。また、料理にペアリングする日本酒はトナ・パロミノ氏とジュン-ジュン・ヴィシェイクル氏によって選ばれ、ヴィシェイクル氏が説明した。

1.ホタテ貝柱とブリのカルパッチョ

ホタテ貝柱とカンパチのカルパッチョ (手前), ホタテ貝柱とチェダーチーズの西京味噌マリネ (右), 黒毛和牛(チャック・テンダー)のローストに赤ワインと醤油のソース添え (左), カニ・クリーム・コロッケのポモドーロ・ソースかけ (上)

 濃厚で香り豊かな胡麻油と爽やかなライムの果汁を組み合わせ、鮮魚をより食べやすいように仕上げた一品で、パリッとした大根の漬け物の付け合わせも趣を添えた。

 ペアリングとして推奨される日本酒は、惣誉 辛口 純米酒(栃木県)。

 2.ホタテ貝柱とチェダーチーズの西京味噌マリネ

 西京味噌は塩分が少なく甘めの京都の味噌。これに漬け込んだ貝柱にチェダーチーズを挟んで串焼きにしたもので、西京味噌の香ばしさが立ち昇る一品。どちらも麹を使う酒と味噌の発酵効果の融合を楽しめる一品だった。

 推奨される日本酒は、八海山 雪室貯蔵三年 純米大吟醸酒(新潟県)。

3.黒毛和牛(三角バラ)の寿司

黒毛和牛(三角バラ)の寿司

 三角バラはその形状から唐辛子と呼ばれ、肩から腹部近くの三角形の部位で、美しい霜降りで知られる。黒毛和牛特有の甘い脂身の味わいやうま味を、西村シェフが握り寿司に仕上げた一品。寿司に使われた三角バラは生やたたきではなく、西村シェフが注意深く完全に火を通したもので、火が通っていながら霜降りが見える絶品だった。

 推奨される日本酒は、高天神Sword of the Sun 本醸造酒(静岡県)

4.黒毛和牛(チャック・テンダー)のローストに赤ワインと醤油のソース添え

 この部位は赤身が多いが、サシも入り柔らかい。西村シェフが肉の柔らかさとジューシーさを保つために、注意深くローストした一品。ソースは醤油をベースに野菜の甘さを生かしたローストビーフにぴったりのソース。

 黒毛和牛の寿司とローストビーフは、西村シェフが腕によりをかけて黒毛和牛の本格的な風味を引き出した絶品だった。

 推奨される日本酒は、坤滴Tears of Dawn 大吟醸酒(京都府)

5.カニ・クリーム・コロッケのポモドーロ・ソースかけ

 日本の大人も子供も大好きな洋食、コロッケ。今回は西村シェフがスノー・クラブの身をたっぷり入れたカニ・クリーム・コロッケに、イタリアで人気のポモドーロ・ソースをかけた贅沢な一品。

 推奨される日本酒は、水芭蕉 吟醸酒(群馬県)

6.そして、抹茶、黒ゴマ、餅を主な食材にしたデザート・プレートは:

抹茶クレーム・ブリュレ (左上), 抹茶チーズケーキ (右下), アイスクリームとシフォンケーキ (右上), イチジクとオレンジを柔らかい餅で包んだ餅大福 (左下)

・抹茶クレーム・ブリュレ

・抹茶チーズケーキ

・黒ゴマの香りを効かせたアイスクリームとシフォンケーキ

・季節のイチジクと爽やかなオレンジを柔らかい餅で包んだ餅大福

 推奨される日本酒は、

・富久長 水月 純米吟醸酒(広島県)

・獺祭45 にごり 純米大吟醸酒(山口県)

  その他、レセプションではカンパリ梅酒、出羽桜 出羽燦々 純米吟醸酒(山形県)、真澄 奥伝寒造り純米酒(長野県)、Heaven Sake 白鹿 純米吟醸酒(兵庫県)が提供された。

 乾杯では、羽化スパークリング オーガニック純米大吟醸酒(福島県)が使用された。

参加者のフィードバック

 日本酒と和食のペアリングを実食した参加者は、口々に下記のような感想を述べた。

・非常に情報に富んでおり、色々な酒と様々な料理とのペアリングがあった。

・和食が良く説明されていて、非常に繊細な味付けだった。

・日本料理は芸術だと思う。

・酒に関するプレゼンテーションと、酒と和食のペアリングの説明は非常に良かった。一方、日本の飲み物についてディスカッションをすることができたのも良かった。

・調理に対する女性ならではの繊細さがあり、非常に楽しめた。

・酒の醸造プロセスを学んだのは非常に興味深く、酒はどんな料理にも合う事を学んだのも良かった。

・イベント進行にも配慮され、非常に良く企画されたイベントだった。また、酒と料理のペアリングは卓越したものだった。

 

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