柳家東三楼さんを特別ゲストに、JCCC新年会
シカゴ日本商工会議所(JCCC)の新年会が1月14日の正午からルネッサンス・シャンバーグ・コンヴェンション・センター・ホテルで開催され、約530人の会員やゲストが一堂に会した。
同新年会は司会役を渋佐和佳奈氏(ニチエン・プロダクション)と満潮開氏(G2.com, Inc.)が務め、まず2024年能登半島地震の犠牲者のために黙とうが行われた。そして、後藤美郎氏のリードによる日米国歌斉唱で新年会の幕が上がった。
庄野晃彦会頭挨拶
当日午前の会員総会において、昨年に引き続き2024年度の会頭に就任した庄野晃彦会頭(米州住友商事会社)は「JCCCは1966年に58企業・機関で設立され、現在では全米諸都市の商工会議所の中にあって法人・個人を含め会員数500に及ぶ大規模な組織団体になるに至るまで発展する事ができました。この事はひとえに長年に亘る会員の皆様のご理解と地域の方々のご支援によるものと改めて心より感謝申し上げます」と挨拶し、会員や地元の人々の支援に感謝の意を表した。
また、庄野会頭はJCCCが掲げる三大ミッションについて説明した。
1.会員サービス事業:時代ごとに必要とされるニーズへの事業を企画・実施し、日米ビジネス交流に努める。
2.教育支援事業:JCCC設立後まもなく設立したシカゴ双葉会日本語学校補習校と、1978年に創立した全日校の両校を運営し、駐在員子女とシカゴ在住の子供達に高いレベルの教育機会を提供する。
3.地域貢献事業:JCCC創立25周年事業として1991年に設立したJCCC基金を通じ、青少年や人材育成プログラムの支援などを実施する。既に基金設立以来600万ドル余りの寄付を行い、地域企業市民としての役割を果たしている。
また、シカゴ日米評議会主催のシカゴ・ジャパニーズ・ピクニックやジャパン・フェスティバル等のイベントなどに広く参加し、日本紹介と日米交流を継続している。
庄野会頭は「この様な事業活動を通じて本会議所の存在意義を見つめ直し、地域の多くの方々からの温かい支援に感謝しつつ、日系企業及び日本の当地におけるプレゼンスの向上に引き続き務めて参りたい」と述べた。
また庄野会頭は、シカゴ日本商工会議所の発展は会員各位や諸先輩方の尽力のお陰と礼を述ると共に、多数の企業より提供された新年会開催のための寄付や賞品、実行委員の派遣などに対して礼を述べ、今後の変わらぬ支援と協力を呼び掛けた。
柳淳総領事挨拶
挨拶に立った柳淳在シカゴ総領事は、能登半島地震被災地出身の新年会参加者とその家族や友人にお見舞いの言葉を述べ、またバイデン大統領をはじめ、多くの米国の友人からシャンバーグ姉妹都市の滑川市(富山県)を含む能登半島被災地の方々へのお見舞いのメッセージや支援提供の申し出を頂いたことに感謝したいと語った。
そして、柳総領事は在シカゴ総領事館の重要業務3点について語った。
1.日系企業支援:在シカゴ総領事館管轄10州の各州知事、自治体の長やコミュニティから日系企業は高い評価と信頼を受けており、また、日系企業は中西部各地の経済や雇用のみならず、米国企業市民として地域コミュニティや日米交流に貢献している事などで各地元で愛されている姿に敬意を表すると話した。その上で、新規投資や工場開設、周年記念等でお役に立てることがあれば、遠慮なくご相談頂きたいと呼び掛けた。また、地元との理解深化、双方向の貿易投資機会拡大を目的として、JETROとの協力事業である企業視察訪問「草の根キャラバン」も再起動して行く。
2.邦人の安心・安全の確保:これは在シカゴ総領事館の最優先任務であり、米国の法律の適用や行政省当局の対処、総領事館の人的な制約などがある中ではあるが、邦人の安全と安全の確保に努めて行く。
3.シカゴ日本商工会議所について:シカゴ日本商工会議所は日本語弁論大会や基金を通じた日本語教育機関の活動支援、日本祭りやピクニックなどの日系人・日本人間交流、日米交流、双葉会全日校・補習校の運営などに尽力しており、その活動に感謝すると同時に、総領事館でも一緒に取り組んで行く。
最後に柳総領事は、日米両国が初めて指定した「日米観光交流年」について説明した。これは2024年から2025年3月までの期間内に、観光だけに限らず、ビジネス人の交流、姉妹都市関係の交流増進を目指して実施される。総領事は「皆様と一緒に盛り上げて行きたいと思いますので、よろしくお願い致します」と語った。
トム・デイリー市長挨拶
シャンバーグのトム・デイリー市長は、ルネッサンス・コンヴェンション・センター・ホテルでのJCCC新年会を歓迎する一方、シャンバーグ議会を代表し、能登半島地震で影響を受けた日本コミュニティの家族に哀悼の意を表した。
そして、「シャンバーグは余り知られていないかもしれないが、60社以上の日本企業がビジネス拠点を置くイリノイ州で2番目に大きな都市であり、日本と親密な関係を持つこの地にお住いの新年会参加者の皆さんに親しみを感じる」と述べ、その様な強い繋がりがある日本の住人の方々に、震災から立ち直り復興する間、シャンバーグはコミュニティサポートを申し出たいと語った。
デイリー市長は日本とシャンバーグの良好な関係の賜物として、ラピュタロボティクスの米国初の拠点としてシャンバーグに事務所を開設した事や、経済開発の件でサンスター社の幹部の訪問を受けたことなどを話し「今、我々は日系企業の大きな投資を受けている」と語った。
また、シャンバーグに住む日本人の人口は外国人居住者の中で4位を占め、外国生まれに起源を持つ人々の中で、日本を母国とする人はトップを占めると話し「シャンバーグは日本コミュニティと日系企業を喜んで歓迎し、シャンバーグがイリノイ州の中でビジネスの場であることを皆さんが見出してくれると確信している」と語った。
本年の抱負
本年の抱負で、シカゴ双葉会補習校3年の岸凜太郎君は「小さなことでも貢献できる人間」としてやって行きたいと、次のように語った。
岸君がかつて住んでいたミャンマーでは、4月に新年の祭りがあり、人々は互いに水を掛け合って身を清め、相手の幸せを祈る。暑いミャンマーでは、咽喉が渇いた人のために道路のいたるところに水を満たした壺が置かれている。
このようにミャンマーでは利他の精神が息づいていて、ミャンマー語には「感謝をする」という事を表す言葉がない。「相手に何かをしてあげた側が、相手にとって良い事ができた、自分が徳をするチャンスに巡り会えた」というように解釈し、相手にお礼を期待することがないのだという。
一方、世界では戦争や紛争が繰り返されている地域があり、この様な時代に向き合うためのキーワードは「利他」ではないかと岸君は考えるようになった。
「私はミャンマーの give and take ならぬ give and give にしてちょうど良いという知恵に感銘を受けました」という岸君は、「世界中の人々が自分を見つめ直す新年のこの機会に、利他の心を持ってスタートすれば世界が一皮むけるチャンスになるのではないでしょうか」と聴衆に呼び掛けた。
岸君は高校卒業を間近に控え、今後の人生に関わる大きな決断をする節目に差し掛かった。これまでも自分にできることはないかという思いで生徒会活動を続け、現在は生徒会会長として活動している。
「これからも自分にできる範囲で give and give の精神にシフトして行き、小さな事でも貢献できる人間として精進して行きたい」と今年の抱負を語った。
柳家東三楼さん公演
昼食後は、お楽しみの柳家東三楼さんの落語公演が始まった。
三代目柳家東三楼さんは1976年生まれの東京出身。1999年4月に三代目柳家権太楼師匠に入門し、2003年に寄席文化に貢献した人物に贈られる「岡本マキ賞」を受賞した。2014年に真打ちで柳家東三楼を襲名し、2016年に「第71回文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞」を受賞した。2019年にニューヨークに移住後は、アメリカやカナダで英語での落語公演を行っており、日本の伝統芸能である落語を世界に広めたいという情熱をもって、活発に活動している。
東三楼さんは真打ちになって10年、アメリカに移住して5年を記念してツアーに出た。初めて車を買い、畳と座布団と緋毛氈を車に入れて米国各地とカナダのトロントを回った。もちろん一部は空路。4月22日にカーネギーホールで行う落語公演がツアーのゴールだという。
東三楼さんはアメリカに来てRAKUGO Association of Americaという団体を作った。RAAと略される同団体に寄付をお願いしているが、「間違ってRifle Association of Americaに寄付した人がいたりする」とさっそく会場の笑いを誘った。
枕の小噺で笑いを誘った東三楼さんは、英語のショートストーリー「The Monkey」で雰囲気を盛り上げた。家族連れの車が事故を起こし、全員病院に運ばれた。同乗していたサルに警察官が尋問すると、子供はゲームに夢中、お母さんは居眠り、お父さんはお酒を飲んでいた。さて、誰が運転していたのか…
そして東三楼さんは本題の英語の落語「動物園」に入った。何の仕事に就いてもモノにならない男が動物園で仕事をすることになった。経験不問で楽な仕事だと男は喜んだが、ホワイトタイガーのぬいぐるみを着て檻の中をウロウロすることに。園内のアナウンスがホワイトタイガーとブラックライオンの決死の戦いが始まると入場者に呼び掛けている。直ぐに男の檻にブラックライオンが入って来た。余りの成り行きに震える男の運命はどうなるのか…。縮こまるホワイトタイガーと大口を開けて迫って来るブラックライオンのアクションが大迫力の落語だった。
落語はやはり江戸の情景。一息ついた東三楼さんは、美味しいサンマの塩焼きも食べられない厳しい武家社会の殿様を描く「目黒のさんま」を日本語で演じた。
500人を超える聴衆の拍手を浴びた東三楼さんには、庄野会頭より花束が贈られた。
福引大会
柳家東三楼さんの熱演の後は、お待ちかねの福引大会となった。
その前に「運試し」として、じゃんけん大会が行われた。各テーブルで勝者を決め、その中から10人の勝者が決まるまでじゃんけんが続く。勝ち抜いた10人の勝者は舞台に上がり、3人が勝ち残るまで柳総領事とじゃんけんを続ける。さらに3人で決戦を行い1位、2位、3位を決めるという趣向で、スリルと笑いで大いに盛り上がった。
いよいよ福引大会が始まり、豪華賞品が当たる6位から1位までの福引が舞台で行われた。また、全日空と日本航空のシカゴ-東京往復航空券が当たる福引と、行先を選べるユナイテッド航空の航空券が当たる福引が行われた。会場は歓声とため息が交錯し、大いに盛り上がった。
中尾敦新年会実行委員長挨拶
新年会の実行委員長を務めた中尾敦氏(全日空)は、能登半島の犠牲者の冥福を祈り、JCCCが開始している被災者のための募金活動への協力を呼び掛けた。寄付要領はJCCCウェブサイトhttps://www.jccc-chi.org/に掲載されている。
中尾氏は、今年は諸事情で通常よりも規模を縮小しての開催となったが、極寒中に530人の参加を得て、会場の一体感が増し、柳家東三楼さんの落語も一層楽しめたのではないでしょうかと感想を語った。
また、新年会のスポンサー企業やボランティアで実行委員を務めてくれた23人の会員企業の皆さんにお礼を述べ、「シカゴ日本商工会議所は、シカゴ地域で半世紀を超えて日本と繋がりのある皆様のお役に立てるよう努めて参りました。今後とも皆様のお力添えをお願い致します」と呼び掛け閉会の挨拶を結んだ。