著者ハドリー・スイ氏が語る「おいしそう!! 究極のアニメ・デザート・クックブック」
「おいしそう!! 究極のアニメ・デザート・クックブック」の著者ハドリー・スイ氏と、同書イラストレーターのモニーク・ナルボネタ・ソーザ氏を迎え、日本のお菓子やアニメ、イラストレーションのプロセスなどについてのオンライン講演会が11月17日、シカゴ日米協会の主催で行われた。
今年6月に発売された同書には、アニメシーンで良く見かけるお菓子やスナックの60レシピ以上が素敵なイラストと共に掲載されている。スィーツが好きな人ならば、手元に置いておきたい一冊だ。
講演会の最後には桜餅やキノコのチョコレート作る実演も行われた。
ハドリー・スイ氏はニューヨークのブルックリンに本拠を置くフード・スタイリストでペイストリー・シェフであり、レシピ開発者でもある。
スイ氏が初めて日本に行ったのは高校を卒業し大学に行くまでの期間だった。埼玉県吉川市にホームステイし、現地の高校にも通い、すっかり日本文化のファンになってしまった。特に和菓子や日本のお菓子に魅せられ、シカゴ大学では国際研究を学んで学士号を取得した。大学卒業後にはシカゴにあるフレンチ・ペイストリー・スクールでペイストリー・シェフの資格を取得し、ニューヨーク市で立ち上げたペイストリーブランド「Hadley Go Lucky」は若者の人気を呼んでいる。
日本には和菓子と洋菓子がある。また、和洋折衷のお菓子もある。食パンをくり抜いた中にアイスクリームやフルーツなどを詰め込んだ渋谷トーストは、スイさんの大好きなペイストリーの一つ。
スイさんが吉川にホームステイ中、ホストファミリーのお母さんがミスター・ドーナッツに連れて行ってくれた。そこで食べたまんじゅうは非常に手の込んだもので、魔法で作ったように思えた。味も最高だった。
また、ホストファミリーのお母さんが、茶屋で抹茶を飲ませてくれた。そこで初めて食べたのが練り切りの和菓子だった。二口ほどしかない小さな和菓子だったが、本当に魔法のお菓子のように思えた。
吉川市の越谷南高校に通っていた時、クラスメートが駄菓子屋に連れて行っていくれた。そこには色とりどりの、いろいろな味のキャンディやお菓子があった。それらのお菓子はコンビニでも買うことができた。
米国に戻って大学に入り、できる限り早く日本に戻りたいと思った。そのチャンスは大学3年生の時にやって来た。同志社大学に留学し京都に住んだ。その間に京都の職人の学校で料理のクラスを取った。そこでは料理だけでなく弓矢作りや和紙作りなどのワークショップにも参加し、日本の伝統工芸を直に経験することができた。
また、練り切りの和菓子作りを習いたいと思った。和菓子は白豆のペーストに色付けし、椿やもみじの形のお菓子にする芸術品だった。この経験により、スイ氏は和菓子作りに深く傾倒することになった。
社会人となったスイさんは、フード・スタイリストとなり、クライアントから依頼される食べ物の写真を撮るための芸術的な仕事に就いた。スイ氏はフード・スタイルについても著書を出している。
しかし、スイさんは日本文化やお菓子に非常に触発されており、フード産業の次のステップとして、何かをしたいと思っていた。だが、フルタイムの仕事を持ちながら、次のステップに踏み出すことは容易ではなかった。フード・スタイリストとして仕事をする10年のうちに、心の中で変化が起きていることは確かに感じていた。
まさに日本のお菓子やアニメは、スイ氏が日本語や日本文化の勉強を深める入り口だった。「おそらく、これらの経験が、私がこのクックブックを書きたいと思ったことにアンダーラインを引いていると思います。とてもワクワクしていました」と語る。
かくしてスイ氏はアニメの中のお菓子のクックブック制作に着手した。
同書の中には、きのこの山とは違うきのこのチョコレート、どら焼き、アニメ風マフィン、あんみつ、たい焼き、わらび餅、焼きいも等々、ファンシーなレシピが収められている。
このクックブックをどの様に組み立てようかと思案したスイ氏は、お菓子や食べ物を買える場所という切り口で、6つのカテゴリーに分けた。もちろん複数の場所で買えるものもある。
6つのカテゴリーは:
・お祭り(夏祭りや地元の祭りだけでなく、学園祭も入る)
・コンビニ
・パン屋
・駄菓子屋
・家(バレンタインデーのチョコなど家で作るもの)
・一緒に(友達とシェアするもの)
スイ氏がどうしてもクックブックに入れたかったものは、アニメの「お馴染みシーン」。特にフォーカスしたのは「遅刻のトースト」。多くの少女アニメの中で、朝ご飯のトーストを口にくわえて家を飛び出す姿がある。このキャラクターをイラストレーターのソーザさんが素晴らしく描き出している。
イラストレーター、モニーク・ナルボネタ・ソーザ氏
モニーク・ナルボネタ・ソーザ氏は出版業界のデザイナーとして10年の経歴を持つ。特に本のデザインが好きだった。
スイ氏のおいしそうの企画が来た時、ソーザ氏は他の仕事を抱えていた。ソーザ氏の上司は、おいしそうのイラストを担当するにはアニメの審美眼が必須と考え、日本のアーティストを探していた。しかし言葉の壁があり、国際的なアーティストや地元のアーティストを探すことになった。
ソーザ氏は仕事の合間を見て、おいしそうの企画書やアイディアを見てみようと思った。そして、トーストをくわえて家を飛び出すキャラクターを含め、お菓子や食べ物のスケッチを始めた。そして上司にスケッチを見せると、おいしそうのイラストの仕事を任されることになった。仕事は2倍になったが、おいしそうのコンセプトにワクワクする思いで、ぜひやりたいと思った。
仕事にはiPadを使う。ソフトはイラストレーターやフォトショップを使い、グラフィックのソフトも使う。個別に描いたキャラクターは、サイズや色を自由に変えることができ、本の適材適所にレイアウトすることができる。画面のイラストを最高にレンダリングするには、最初のスケッチが非常に重要となる。ソーザ氏は常に最終的な印刷のことを考えているという。
ソーザ氏は現在、夫と共に東京に住んでいる。
桜餅の作り方
講演の最後に、スイ氏は桜餅の作り方を実演した。
同氏によると、桜餅には道明寺スタイルと長命寺スタイルがあり、前者が関西風で後者が関東風。今回の実演は道明寺スタイルで、餅米の粒が残るものだった。
作り方の詳細は、英語面参照。