チョコレートと醤油のコンビネーション:美味しいデザートを創作
チョコレートと醤油を組み合わせ新しい味わいのデザートを試食するイベントが、シカゴ市にあるブラマー・チョコレート社のR&Dアプリケーション・ラボで開催された。
チョコレートと醤油のコンビネーションという発想は、キッコーマン・フーズの辻亮平社長とブラマー・チョコレートのチーフ・リーガル・オフィサー兼バイスプレジデントのロバート・カー氏のカジュアルな会話の中から出てきたもので、公邸シェフの伊藤聡氏、キッコーマン、ブラマーR&Dチームの協力で実現した。
試作されたデザートは、醤油を合わせたチョコレートをトッピングしたアイスクリーム、ミルクシェイク、タッフルの3種で、約30人の来訪者が試食した。
洋菓子のチョコレートと日本伝統調味料の醤油を組み合わせるという奇想天外な試みだが、これはシカゴにおける長年の日米交流が生み出した、互いの文化に敬意を払い理解を深めるという相互努力の成果の一つだと言える。
ウィスコンシン州ウォルワースにあるキッコーマン・フーズは来年、醤油製造工場開設50周年を迎える。また、シカゴ・大阪姉妹都市提携も来年、50周年を迎える。そして、2019年にブラマー・チョコレートを買収した不二製油の本拠も大阪にある。チョコレートと醤油を組み合わせたデザート作りと試食会は、時には甘く、時には辛い日米関係の上に実現したイベントだった。
ブラマー・チョコレートは北米最大、世界3位の業務用チョコレート製造会社で、世界に16工場を持つ。不二製油は植物性油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材の4つの事業を持ち、グローバルに展開している。
キッコーマンも周知の通り、日本国内外に8工場を持ち、今や醤油は世界の調味料となるまでにグローバル化している。
挨拶に立った田島浩志在シカゴ総領事は「皆さんと同様に、創作された新しいデザートの試食を楽しみにしていた」と述べ、会話から出て来たアイディアを数ヶ月のうちに具現化したロバート・カー氏をはじめ、ペンシルヴェニアに本拠を置く不二製油/ブラマー・チョコレートの米州を統括する六川尚宏社長、キッコーマン、R&Dチームに感謝の気持ちを表した。
そして「新しいデザートを作るというアイディアを聞いてワクワクする思いだった。それが実現したことで、我々は日本とシカゴ間で長年の間に培った良好な関係を実演することになった」と述べた。
また、田島総領事は在シカゴ日本総領事館のミッションについて「日米間の絆強化の助けとなること、日米関係促進の助けとなること、特に今日のイベントのような文化協力の助けとなることだ」と話し、「チームの方々が準備して下さったユニークなデザートの試食を皆さんで楽しみながら、これからの協力イベントやフレンドシップについて話しましょう」と挨拶を結んだ。
R&Dアプリケーション・ラボのマネージャー、マリー・ローウェン氏は「我々は醤油とチョコレートのコンビネーションに当たり、身近なアイスクリームから着手し、それからバリエーションを広げて行きました。
とても楽しい仕事でしたし、醤油についての学びも楽しいものでした。私はブラマーで約12年、チョコレートとビールやワインとのペアリングなどの仕事をしてきましたが、チョコレートと醤油は奇妙な気がしました。しかし、そうではありませんでした。どんなマジックが起きたか、皆さんに試食してもらうのに胸が躍る思いです」と語った。
このプロジェクトの初期から助言していた公邸シェフの伊藤聡氏は「スイーツにちょっと塩を足すのは良くある話ですし、個人的には味噌のプリンを作ったりしていましたので、これとこれが合うのではないかと(チームに)提案したぐらいです。日本ではカカオ味噌やカカオジャムが発売されているので、チョコレートと醤油は合わないことはないと思いました。ですからラボの人達にとって(マッチングは)それほど難しくはなかったのではないでしょうか。それを形に仕上げることは大変だったと思います」と語った。
Creation 1: Ice Cream with Soy Sauce-flavored Chocolate Topping
ローウェン氏の説明によると、アイスクリームのトッピングはブラック・ココ・パウダーなど複数のココ・パウダーを練り合わせたものに醤油を加えたもので「それは単に塩気ではありません。醤油はうま味をもたらしてくれました。それはちっと表現できませんが、違う味わいです。うま味が何か魔法をかけたようです」と話す。
試食を終えた田島総領事は、香ばしさとうま味があるアイスクリームのトッピングについて「ローストした味がする。大変美味しい。だがちょっとだけ醤油が弱い感じがする。もう少し醤油を使ってもらったら良かったかも知れない」と話した。
Creation 2: Milkshake
2番目のミルクシェイクは「すぐに日本にある塩チョコレートを思い出した」と話し、「冷やして出した方がいい。冷えてないととても甘く感じるから」と感想を語った。また「一つのボトルに違った味を加えたらどうだろうか。例えばオレンジジュースに果肉が入っているように、ジュースを飲んで果肉を噛んで全体を飲むというようなものはどうだろうか」とイマジネーションを膨らませた。
Creation 3: Truffles
3番目のトラッフルは「他の人に一番勧めやすい」と話し、「日本でチョコレートを試食した時の生チョコを思い出させる。とても美味しかった」と語った。
試食の参加者には3つの試食品を書き込んだ紙が配布され、試食の度にメモを取った。そして最後に、試食品の人気投票が行われた。
R&Dヘッドのメリサ・ティソンチェック氏は閉会の挨拶で「素晴らしい人達、素晴らしいアイディア、素晴らしい心をここに歓迎したい」と述べ、「このラボでやりたいことは、皆さんに来て頂き、異なる文化からアイディアを持ち寄って頂き、それを何か鼓舞される形で我々のサービスを改善して行くことです」と語った。
********************************************************************
インタビュー
試食に参加したヨーゲン・ハリーさん(ブラマー、ファイナンス部門)はチョコレートと醤油のコンビネーションについて「2つのブランドがイノベーションを率先し、新しい需要を生み出す機会を作ることは素晴らしいと思う。個人的にはチョコレートと醤油の甘辛のコンビネーションは好きで、楽しみました。一番好きなのはトラッフルですね」と語った。
甘党だというマーク・スラサー氏(ジェネラル・マネージャー、EG、ペンシルヴェニア)は「大変良い試食会だった。ミルクシェイクはちょっと塩辛すぎたが、アイスクリームとトラッフルは甘辛味だったね。私が好きなのはグミ・キャンディなんだけど」と話し、甘党には塩味が強く感じられるようだった。
ケリー・クロット氏(人事部シニア・ディレクター)は「とても楽しいイベントでした。自社製品を理解する良い機会でしたし、プロダクトラインの拡張を探索する本当に良い機会だったと思います。残念ながら私はお腹に問題があって、試食はできませんでしたが」と語った。
ニール・フルトン氏(ブラマー、ジェネラル・マネージャー)は「醤油とチョコレートについて考えたこともありませんでした。だから、どのように2つのものを合わせていろいろなデザートになるのか見るのは非常に良い事でした。皆さん、非常に見る目がありますね。一番好きなのはタッフルでした」と語った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ペンシルヴェニアの北米本拠から重役会議のためにシカゴ入りしていた六川尚宏社長は、試食会について「最高の企画だと思います。過去にはウィスキーとチョコレートのペアリングをやったことがあります。今回は醤油ですので、次は何をやるか考えなくちゃいけないですね。チョコレートと何か違うものをいろいろと考えて行きたいですね」と語る。
六川氏によると、醤油も発酵食品であり、チョコレートの原料のカカオ豆も発酵のプロセスを経るため、発酵同士で相性はいいはずだという。天然の食品原料を如何に組み合わせてうま味などを引き出す事が、一つの課題なのだと語る。
今後のチョコレートの行方について六川氏は「シカゴはいろいろなアメリカの製菓会社の発祥地で『キャピタル・オブ・キャンディ』と呼ばれています。(不二製油の本社がある)大阪は食の街、食い倒れの街です。そのシカゴと大阪が交流していますので、我々も時流に乗っていろいろと(自社製品を)広げていきたいと思います」と話す。
また、ブラマーが現在力を入れているのは、甘みはそのままで砂糖を少なくしたチョコレート。アメリカではBetter For You (BFY)と言い、一つの高級セグメントになっている。
六川氏は「皆様に健康を提供できるような、そういうチョコレートを開発していますので、虫歯の心配も無くチョコレートを楽しんで下さい」と語った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
JETROシカゴの根本裕之所長は試食について「とても美味しかった」と話した。日本企業の不二製油がアメリカ大手のブラマー・チョコレートを買収し、それによって製造拠点を持ち、北米に販売網を開き、世界第3位の業務用チョコレート会社として乗り出したという話を聞き、今回のイベント開催をより興味深く思ったという。
根本氏は「こういう取り組みが次の一歩に繋がっているのかなぁと思いました」と語った。