安倍首相、オバマ大統領、和解、そして世界平和
安倍晋三元首相(1954-2022)は歴代首相の中で最長の任期を務め、日本史上最も影響力を持つ首相の一人だったと言える。安倍氏は国内外の改革において、多大な貢献をした人物として想い出されるだろう。ここに日米関係の強化と世界平和の拡大に尽力した安倍元首相の活動を振り返り、敬意を表したい。
2015年と2016年、安倍晋三首相とバラク・オバマ米大統領は、象徴的な意味において日米の和解への道を完結し、日米同盟と世界平和のために共に尽力する事を確認した。両首脳が共に歩んだ道はいくつかの「初めて」という事実を含む。安倍氏は日本の首相として初めて米国両院合同連邦議会で演説した首相であり、オバマ氏は現職大統領として初めて広島平和記念館を訪問した大統領であり、安倍氏は真珠湾にあるUSSアリゾナ記念館を初めて訪問した日本の首相だった。
1941年-戦時下における日米両国
1941年12月7日の日曜日、米国の統治領だったハワイの真珠湾にある米海軍基地が、大日本帝国海軍航空隊の数百機による急襲を受けた。これにより米艦艇や航空機が破壊され、2,400人以上の米国市民と米軍従事者が死亡した。翌日、フランクリン・ルーズベルト大統領は閣僚会議後、両院による連邦議会で演説することを決めた。
「昨日、1941年12月7日-記憶に刻まれる屈辱の日-アメリカ合衆国は大日本帝国海軍航空隊により、突如として意図的な攻撃を受けた」。
「この計画的侵略に打ち勝つのにどれほどの時間がかかろうとも、米国民は正義をもって必ず大勝利を手にするだろう。地の果ての敵から我々を護るだけでなく、この様な背信行為により我々が二度と危険に瀕する事がないように確実に対処をしなければならない。この私の主張は、議会と国民の意志を読み取っていると確信している。戦争行為は存在している。米国民、米国領土、米国の利益が深刻な危機にさらされたことに疑いの余地はない。米軍への信頼と共に、限りない国民の決意と共に、我々は必ず勝利を手にする-神のご加護を。1941年12月7日の日曜日に、いわれのない卑劣な日本の攻撃があり、アメリカ合衆国と日本帝国間が戦争状態にあることにより、連邦議会に宣戦布告を求める」。
ルーズベルト大統領が演説を終えた33分後、米議会は対日戦争を宣言した。太平洋で無数の命が失われた4年後の1945年8月6日、米国は戦争で初めて使われた原爆を広島に投下し、14万人といわれる市民が死亡した。その3日後に第二の原爆が長崎に投下された。日本は一週間のうちに降伏し、太平洋戦争は終わった。
2015年、米国連邦議会における安倍首相の演説
2015年4月29日、安倍首相は米国両院による連邦議会の演壇に立った。そこは1941年にルーズベルト大統領が対日戦争を求めた場所だった。両院合同の連邦議会で演説する初の日本の首相として、安倍氏は「希望の同盟へ」と題した演説を行った。
安倍首相は「世界の平和と安定のためにより大きな責任を持つ」という決意を宣言した。安倍氏は戦後最も影響力を持つ政治家の一人として、どちらかといえば地理的・政治的に世界から距離を置いていた日本の海外政策を改革しようという固い決意を持っていた。「互いに激戦を交えた敵同士が、心と心で結ばれ友人になっている」と安倍首相は説明し、そして「米国が世界に与えるべき素晴らしい宝物は希望、今日の希望、明日の希望、そしていつも希望であるべきだ」と演説を結んだ。
安倍首相の演説の全文は、ここをクリック。
オバマ大統領の広島平和記念館訪問
2015年5月27日、オバマ大統領は広島平和記念館を訪問した。米国の現職大統領として初めて広島を訪れたオバマ大統領は「71年前、雲一つなく晴れ渡った快晴の朝、空から死が降り注ぎ、そして世界が変わった」と述べ、「我々は戦争の苦悶を知っている。今、勇気を持とう。共に平和を広げよう。そして原爆のない世界を達成しよう」と呼び掛けた。
オバマ氏は、国々は自国を護る防衛能力が必要だという。しかし核兵器保有国は「恐怖の必然性を回避する勇気を持たなければならない。そして核兵器のない世界を追求しなければならない」と述べ、「過去の間違いを繰り返す方向に向かってはならない。我々は学ぶ事ができ、(非核化を)選ぶことができる」と述べた。
オバマ大統領の全演説はここをクリック。安倍首相の演説の全文はここをクリック。
安倍首相の真珠湾訪問
2016年12月27日、オバマ大統領と安倍首相は、USSアリゾナ記念館に花輪を供え、1941年12月7日の真珠湾攻撃で命を落とした米国軍人達に敬意を表した。そして、両首脳は日米同盟によって世界平和のために尽力することを確認した。安倍首相のUSSアリゾナ記念館の訪問は、歴代首相初の事だった。
安倍首相は「ここで命を落とされた方々と、まさにこの場所で始まった戦争により戦死された勇気ある軍人の方々、そして戦争により犠牲になられた罪のない人々の魂に、心をこめて永遠なるお悔やみを申し上げます」と追悼の言葉を述べ、「我々は二度とこのような恐ろしい戦争を繰り返してはならない」と述べた。
オバマ大統領は「米国と日本は友好関係を選び、平和を選んだ。この数十年に亘り、我らの同盟は両国を成功に導いている」と述べ、「今日、日米同盟の絆は両国の利益だけでなく、両国が共有する価値観に根差しており、アジア太平洋の平和と礼節の礎石として立ち、世界を進化させる力となり、日米同盟は今までになく堅固なものになっている。良い時も、そして悪い時も、我々は互いのためにここにある」と述べた。
ホワイトハウスは、両首脳によるアリゾナ記念館訪問は「和解の力を見せるだろう」、かつての敵対者が「最も緊密な同盟者」となったと声明を発表している。
真珠湾を訪問後、安倍氏とオバマ氏は両人による最後の会議を持ち、保全、経済、そしてグローバル・チャレンジについて話し合った。両者による会議は2017年1月20日に大統領の任期を終えたオバマ氏の、世界のリーダーとの最後の会議の一つとなった。