シカゴ双葉会日本語学校全日校卒業式
仲間と過ごした日々は一生の宝物
降り積もった雪を朝日が溶かし、新しい道を開いてくれたような3月13日、シカゴ双葉会日本語学校全日校の卒業式が厳粛な雰囲気の中で行われ、小学6年生11人と、中学3年生6人が卒業した。
卒業生は一人ずつ田村穣校長から卒業証書を授与され、将来の夢や抱負を大きな声で発表した。
田村穣校長は式辞で朝の連続テレビ小説のストーリーから、「山も海も空も水を介して繋がっている。関係ないように見えるが何かの役に立てるという事は世の中にたくさんある。だからこそ私達は視野を広げ繋がりを大切にし、お互いの事を学び、理解し、尊重して行く必要がある」と話し、自らの友人との繋がりについて語った。
田村校長は小学生の頃、中学受験のために塾に入った。その時に隣に座った男の子が生涯の友人となった。中学高校と同じクラスに入り、下校時には将来についても語り合った。友人は医療の世界で何か人の役に立ちたいという夢を熱く語っていた。田村校長は高校教師だった父を突然に亡くし、教職に就こうと思った。
60代となった今、友人はガンの免疫細胞の研究をしており、田村校長はシカゴ双葉会で校長をしている。田村校長は「皆さんはどんな夢を持ち、どんな道を切り開いて行かれますか?」と卒業生に問いかけ、将来を激励した。
また田村校長は、コロナ禍をはじめ大きな壁に出会いながらも子供達の成長を見守り、全日校の教育に対して理解と協力を示してくれた保護者の皆さんに感謝の言葉を述べた。
来賓として出席した田島浩志在シカゴ総領事は祝辞で、アメリカで生活しながら日本の教育を受けて両方の良い所を身に着け、コロナ禍の苦労を乗り越えて来た卒業生に「その経験は必ず、皆さんに良い形で返って来る」と励ました。
田島総領事は「未来を予測する最良の方法は、未来をつくる事だ」というイリノイ州ゆかりのリンカーンの言葉を卒業生に贈った。自分で未来を作るのは難しいと思われるが「卒業式を迎えた今、自分がどのような未来にして行きたいかを考えると良い、という事を教えてくれるメッセージだ」と、田島氏は卒業生に分かりやすく説明した。
また田島氏は「人生のより良い部分は友情により作られる」というもう一つのリンカーンの言葉を贈り、「学び舎で苦楽を共にした同級生や後輩達、先生方と共に過ごした時間を忘れず、仲間達との絆を大人になっても大切にして下さい」と卒業生に呼び掛けた。
最後に田島氏は、保護者の皆さんや学校関係者、シカゴ日本商工会議所シカゴ双葉会学校運営委員会などすべての関係者に感謝の気持ちを表した。
山本真理双葉会会長は卒業生に、言葉の大切さについて話した。
地方都市の本屋の娘として生まれた山本会長は、週刊漫画本を誰よりも早く読めるという特権が嬉しく、よくレジに座って店を手伝った。しかし、山本会長は漫画本だけでなく、歴史の本、科学の本、多くの小説、各役所が発表する白書など、面白い本から難しい本までいろいろな本を手に取って読んだ。文字に表される言葉によって世界中の人々や文化を知り、想像を膨らませながら子供時代を過ごした。その頃に感じたのは、言葉とは自分の考えや思いを伝えるコミュニケーションのツールだという事だった。
今やインターネットの時代となり、検索すれば知りたい事がすぐに分かる便利な時代となった。また、自分の考えを言葉にして自由に発信できる時代となった。一方、インターネットの情報には偽情報や他人を中傷する言葉もある。
山本会長は「言葉と言うコミュニケーションのツールを皆さんがどのように使うか、それは皆さん次第です。言葉の素晴らしさ、言葉の力、それと言葉の怖さ。これをいつも考える大人になって欲しい」と卒業生にメッセージを贈った。
松永和久PTA会長は小学部の卒業生に対して、幼稚部卒業から6年で立派な姿になり「成長力は凄いなと本当に思います」と生徒達の成長に目を細めた。
松永会長はコロナ禍で大変な時期もあったが「大変な時は自分が大きく変わる時。皆さんの将来は無限大です。未来はこれからの努力で決まるんです。努力は結果に残ります。危機から逃げず、失敗を恐れず、大事な事は自分を信じる事。自分を信じれば皆さんならできます」と小学部卒業生を鼓舞した。
また松永氏は、中学部の卒業生に「心身ともに成長した皆さんは、自分が好きなところ、得意なところがいろいろと見えて来たのではないでしょうか」と話しかけ、「皆さんはそれぞれ個性を持ち、今まで多くの選択肢があったと思います。若い皆さんは何でも挑戦できます。自信をもって羽ばたいて下さい。皆さんは日本の教育を受けアメリカの文化を体験して来た貴重な存在。これからも日本で、世界で活躍されると信じています」と言葉を贈った。
なお、来賓として田島総領事他、庄野晃彦JCCC会頭、山本真理双葉会会長、岡本哲哉補習校校長、松永和久全日校PTA会長、尾関雄二すみれ幼稚園園長、三谷哲郎JCCC事務局長、永見一也双葉会副会長、シカゴ新報の浦山美子が出席した。
送辞と答辞
送辞で小学部5年の根岸健太郎さんは「6年生の皆さんは、難しい問題に熱心に取り組み下級生を優しく指導してくれた、僕たちにとって常に手本となる存在でした。最高の先輩であり、憧れの存在でした」と別れを惜しみ、クラブ活動、運動会、校外学習など様々な事に挑戦した思い出を語った。
また根岸さんは「4月からは僕たちが6年生になります。皆さんのように頼られるリーダーになれるかどうか心配ですが、皆さんから教えて頂いたことをしっかりと守り、シカゴ双葉会日本語学校全日校小学部を引っ張って行きます。今まで本当にありがとうございました」と送辞を結んだ。
中学部2年の古屋希実さんは「私達の手本になって頂き、大きな存在だった先輩達に感謝を込めて、ご卒業のお祝いの気持ちを込めて送辞を贈ります」と述べ、数々の思い出を語った。
下級生をリードし、影となり日向となり後輩を支えてくれた卒業生の姿を見て来た古屋さんは「次は私達がそのポジションに立つのだと想像しながら、思い出と共にしっかりと胸に刻んできました。それが私達の目標です。何事も先輩たちが築いて来られた本校の伝統を大切にして、下級生の手本になれるよう気持ちを新たに精進します。これまでみんながより良い学校生活を送るために力を尽くして下さり、本当にありがとうございました」と別れを惜しんだ。
小学部卒業生の阿部未唯さんは答辞で、コロナ禍で多くの行事が中止となったが「先生方や家族のサポートのお陰で、以前のような学校生活を送ることができました」とお礼の言葉を述べた。
そして在校生に向かい「様々な行事で皆さんと触れ合い充実した日々を送ることができ、皆さんの温かい気持ちが伝わってきました。4月からは皆さんの力をどんどん発揮して、さらに楽しい小学部を作って行って下さい」と励ました。
また、最上級生として1年を過ごして来た仲間に向かい「リーダーとなる事が求められ重荷に感じる事もありましたね。それでも自分たちの力を信じて乗り切って来たことを誇りに思います。このメンバーで過ごして来た日々は、私の一生の宝物です」と語った。
中学部卒業生の北原舞さんは小学部5年から中学部3年までを全日校で学んで帰国し、卒業式にはオンラインで出席した。
北原さんは双葉校で学んだことを振り返り「中学3年の時の職場訪問では、将来について深く考える機会でした。現地校との交流では異文化に触れ、日本を客観的に見る機会となりました。双葉フェスティバルやクラブ活動では双葉校の特徴を生かしてより良いものを作ろうと励み、授業では先生方が苦手の学科を指導して下さいました」と学校生活の思い出を語った。
北原さんは「これから離れ離れになりますが、私達はそれぞれの場所で頑張って行きます」と述べ、「在校生の皆さんは学校の良さを大切にして頑張って下さい」と励ました。