新道場AIRMW Cultural Hubでグランド・オープニング
夢の実現はこの日から:タツ・青木氏
タツ・青木氏率いるAsian Improv aRts Midwest (AIRMW)の本拠地「AIRMW Cultural Hub」のグランド・オープニングが2月24日に開催された。ここではAIRMW傘下の司太鼓、秀舞会、豊秋三味線などの練習が行われ「道場」とも呼ばれる。また、練習だけでなく数々の文化イベントも行われる。
場所はシカゴ市ノースサイド、4875 N. Elston Ave. Chicagoで、ElstonとKentucky Ave.の南東の角地にあり、周辺に路上駐車可能な便利な場所。
かつてAIRMWの練習は定住者会(Japanese American Service Committee)内で行われていたが、定住者会も移転を計画しており、青木氏は自らの道場が必要だと判断し2019年からファンドレイジングに着手していた。すぐにコロナ禍が起き遅延を余儀なくされたが、ようやくグランド・オープニングの日を迎えた。
グランド・オープニングでは、キク・タウラさんとローリー・アシカワさんの三味線の音色が来客を迎えた。
特別ゲストとして田島浩志在シカゴ総領事、サマンサ・ニュージェント・シカゴ市議(39区)、エミー・ザンダー氏(エグゼクティブ・ディレクター、パラスキー・エルストン・ビジネス・アソシエーション)をはじめ、AIRMW理事会メンバー、ファンダーの荻野敏雄氏や藤本光氏らが出席した。
会場では司太鼓の演奏「三宅」、秀舞会・藤間淑之丞師範の振り付けによる和太鼓との共演「早間の一番」などが披露された他、道場開きを祝って鏡開きが行われた。
挨拶に立ったタツ・青木氏は、AIRMW Cultural Hubを開くことができたのは助成金を出してくれた多くの団体や基金、個人の方々の寄付、AIRMWのメンバーや家族や関係者のお陰だと述べ、個々の名前を挙げながら感謝の気持ちを述べた。
来賓の田島浩志総領事は「この由々しき道場開きに立ち会えたことを嬉しく思う」と述べ、AIRMWの創始者のタツ・青木氏とそのチームに祝賀の言葉を贈った。
また田島総領事は「AIRMWは総領事館の文化イベントやプログラムになくてはならないパートナーであり、彼らの確固たる日本伝統音楽や芸能文化の保存と紹介活動が、地元社会に顕著なインパクトを与えている」と話した。
最後に田島氏は「今日は新道場のオープニングを祝うだけでなく、青木氏とそのチームが懸命に努力して来たビジョンの具現化の達成を祝う日だ」と述べ、「この道場は多様な背景を持つアーティストやパフォーマーが集まる創造力とイノベーションのハブとなり、彼らの才能や協力を分かち合い互いを鼓舞し合う場となるに違いない」と話した。
そして長期にわたって日本伝統音楽や文化を米国に広めて来た青木氏を称賛し、「青木氏のリーダーシップとビジョンは数えきれないほどの人々を鼓舞し、彼のレガシーは将来に向けて文化のランドスケープを形成し続けるだろう」と語った。
タツ・青木氏に訊く
Q:道場を持つという夢が叶いましたね。
青木:いやそうではなくて、夢はここから始まるんですよ。
以前から司太鼓、秀舞会、豊秋三味線の道場を持つべしと思っていましたので、本当に嬉しく思っています。
Q:人々が集まり易い、いいスポットですね。
青木:太鼓や音楽をやるので、孤立しているビルを約2年半をかけて探していました。
ケンタッキー通りとエルストンの角で、隣のビルとの間に他所の駐車場があるので良い場所が見つかりました。
昨年売買契約を済ませて1年余りです。その間にリノヴェーションをやっていました。コロナ禍で費用が上がったり材料の入手が難しくなったりしましたが、今この広さのスペースを借りると賃貸料が非常に上がっているので、決断して良かったと思います。
Q:今日のオープニングまで、幾多のご苦労があったと拝察します。
青木:ファンドレイジングの道場キャンペーンを2019年に始めたんですが、すぐにコロナのパンデミックになってしまい、1年半ぐらいその活動が停滞していました。
しかし、州やシカゴ市の基金やプライベート基金の助成金、個人のご寄付など、多くのファンダーの方々から資金のリソースを作って頂いて、漸くビルを買う事ができました。本当にありがたい事です。
Q:そのファンダーの方々がアクノーレッジメント書いてあるんですね。
青木:いつもうちのバナーにはその方々のロゴが全部入っています。彼らの力があって、それにメンバーとサポーターの皆さんの支援があって、司太鼓も秀舞会も豊秋三味線もここまでやってこれたんです。
Q:これからの企画をお聞かせ下さい。
青木:太鼓、三味線、日本舞踊のクラスをはじめ、コンテンポラリーのいろいろなイベントをやって行きます。この場所を使ってアーティストが自分の作品について語る講演会のような「アーティスト・トーク」をやりたいと思っています。
また、他のエイジアン・アメリカンの組織がたくさん共催している所があるので、そういう所のイベントにも使って頂こうと思っています。
コミュニティの中でいろいろなアート組織と一緒に、いろいろな事ができるようになって行きたいですね。プロフェッショナリズムを持ったアーティストと、趣味で太鼓や音楽や踊りをやっている人達が、一緒にコミュニティの中で仕事をしていくという醍醐味がここにはあると思います。これからが(夢の)出発ですね。
さっそく阿波踊りワークショップ開催
Asian Improv aRts Midwest(AIRMW)では3年前に秀舞会のサブプログラムとして、盆踊りや阿波踊りなどの舞踊交流プログラム「Japanese Folk & Festival Dance」を発足し、静岡や徳島の地元団体とのコラボレーション・プロジェクトを実施している。
同プログラムはAIRMWの太鼓、三味線、日本舞踊と同様に、ユーチューブなどのデジタル情報からではなく、日本の伝統芸能人から直に伝承するという理念を持ち、基本的な美学概念や伝授制度をできるだけ守りたいという目的を持って活動している。
今回は徳島の阿波踊りの「天水連」から山田実連長と鳴物の高島悠佑氏を迎え、3月15日にはシカゴ市にあるリンクス・ホールで、3月18日にはAIRMW Cultural Hubでワークショップが開催された。これは秀舞会と浅川エミ氏のシカゴ阿波踊りプロジェクトが共同企画したもの。
リンクスホールでのワークショップ
リンクスホールは現代ダンスや実験ダンスを行う所で、ダンス業界の人々が集まった。天水連の山田連長と高島悠佑氏が阿波踊りを実演し、講演者による阿波踊りの説明も行われた。
秀舞会の藤間淑之丞師範は、リンクスホールに招待されて作品を制作する招聘芸術家で、歴史を持ち徳島でも有名な天水連の山田氏と高島氏に本物の阿波踊りを直に見せてもらうのは、ダンス業界の人々に阿波踊りを紹介する「最高のチャンス」だという。淑之丞師は「美的なものは、口頭だけでなく実際に先生の指導を受け、稽古・修行をして、身体に叩き込まれて出て来るもので、それが芸だと思っている」と語る。
淑之丞師は現在5つの作品を制作中で、その一つの中に「シカゴフットワーク」という阿波踊りと盆踊りをブレンドした動きを振り付けに取り入れたいという。
AIRMW Cultural Hubでのワークショップ
18日に新道場AIRMW Cultural Hubで行われたワークショップは、生演奏の「ぞめき囃子」が入り、阿波踊りがライブで披露された。
淑之丞師は「阿波踊りはシンプルな動きを繰り返すんですが、動きを真似るだけではできない、美的な技がありますね」と話す。
山田連長は4歳から阿波踊りを始め、現在は70代になっている。天水連の四代目の連長を務め、数年前には天水連創立70周年を祝った。人生を阿波踊りの修練にかけて来た山田氏の動きを淑之丞師は「本当に足の運びや身体全体の動きは流石でした」と感嘆する。
ライブの合間には70周年記念公演のビデオが上映され、阿波踊りを全く知らない人にも山田氏が分かりやすく教えた。熟練した伝統芸能人から直接指導を受けたり話を聞いたりする同ワークショップは、阿波踊りの非常に良い紹介機会となったという。
淑之丞師は「シカゴにいて日本と同じように先生から学ぶことはできませんが、やはり本物の近くに行けるように手を伸ばして、努力してやることが大事だと思います。そのためには日本の伝統芸能人との交流が必要ですね」と語った。
秀舞会の「Japanese Folk & Festival Dance」プログラムでは、盆踊りも静岡の藤間君栄師範と舞踊交流プログラムを実施しており、シカゴ市やダンス団体、文化団体との共催で多くのイベントを共催している。
すでに盆踊りは2021年よりジャクソンパークで2回の盆踊りを実施しており、2022年はミレニアムパークでも盆踊りを披露した。今年は有名なちびまる子の「まるちゃんの静岡音頭」を紹介する予定。