野毛洋子が現代博物館でコンサート日本の趣をジャズ&ブルースに織り込み聴衆を魅了

シカゴ現代美術館のアン&ジョン・カーン・テラス・ガーデンで演奏する、ジャズブルースシンガー&ピアニストの野毛洋子氏とバンドメンバー(2022年8月2日)

ジャズブルースシンガー&ピアニストの野毛洋子氏が8月2日、シカゴ現代美術館のアン&ジョン・カーン・テラス・ガーデンでコンサートを行い、日本の趣をブレンドしたシカゴのジャズとブルースで満席の聴衆を楽しませた。

同コンサートはシカゴ現代美術館が主催している火曜日のフリー・コンサートシリーズで、シカゴの顕著なミュージシャンを招待しており、野毛氏も招待者の一人。当日は蒸し暑い夕べだったが、夏のアフターファイブを楽しむ大勢の人達が客席だけでなく、芝生でも音楽を楽しんでいた。

野毛氏はシカゴのジャズ・ブルース・ミュージシャン、ジョージ・ウェルス(シンガー)、フィリップ・キャッスルベリー(ベース)、フィリップ・バーキンズ(トランペット)、ジム・ピアース(ギター)、アヴァリーエイル・ラー(ドラム)を引き連れて登場。午後5時半から8時までインターミッションをはさみ、オリジナル曲「You Hear Me Talking」やエイトビートにアレンジした「炭坑節」などで熱気溢れる2ステージを繰り広げた。

日本の趣をブレンドした野毛洋子氏のジャズ&ブルースを楽しむ観客

主な演奏曲は上記の他「Georgia On My Mind (Osaka)」、「Mama He Treats Your Daughter Mean」、ジャズのスタンダード・ナンバー「I can't get started with you」、バンドのシンガー、ジョージ・ウエルスが歌う「Kansas City」など。

野毛洋子が歌う曲とは

「Georgia On My Mind (Osaka)」は郷愁を誘う一曲。野毛氏が30歳でピアノを習い始めた頃、ひどいホームシックに陥ったことがある。ブルースピアノのレジェンド、アーウィン・ヘルファー師匠から出題された練習曲「Georgia On My Mind」を毎日練習室で弾いて歌ううちに、涙が止まらなくなり日本語の歌詞が自然に出て来た。それ以来、この曲を歌い続けている。

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「You Hear Me Talking」は野毛氏のオリジナル曲。

 日本人なら誰もがシカゴで初めてハンバーガーを注文した時に「For here or go?」と唐突に訊かれ、日常英語の洗礼を受ける。こんなエピソードで聴衆を笑わせる野毛氏は「自分が初めてブルースを聴いた時にそうだったように、英語の歌詞が分からなくても曲が自分に刺さることがある」と聴衆に語り掛ける。言葉は曲の大事な要素だが、「その言葉に乗せた感情というか言霊が意味を持つように思う」と話す。

この曲は日本語をラップ風にビートに乗せて連発し「You Hear Me Talking」というコーラスを繰り返す。「異国の言葉である日本語を聴衆にぶつけて、一人一人が自分の心の反応を感じて欲しい。移民というものを考えるきっかけになればいい」という思いを込めて野毛氏が作った一曲。

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「Mama He Treats Your Daughter Mean」はR&Bの大物女性歌手ルース・ブラウンが1950年代にヒットさせた曲。

大阪の女・野毛洋子に言わせると「おかあちゃん、あたしのオトコ、あたしをひどい目にあわせるねん」という曲。男女関係のしがらみは世界共通。どんなにひどいオトコでも愛さずにはいられないという切なさを歌う、野毛氏の好きな一曲だという。

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盆踊りの定番「炭坑節(Coal Mining Workers Song)」はエイトビートに乗せたアレンジ。同コンサートでは着物姿の日本女性達が炭坑節を踊りながら客席の間を練り歩き、会場を沸かせた。

野毛氏が炭坑節をレパートリーに取り入れたのは、炭鉱の町、福岡県飯塚市にある嘉穂劇場に招待されたことに始まる。

嘉穂劇場は大衆歌舞伎小屋で、回り舞台の仕掛けもある立派な劇場。かつては炭鉱労働者やその家族で賑わった。登録有形文化財に指定された現在も様々なアーティストを惹き付ける劇場として知られている。

その劇場からの演奏依頼に応え、野毛氏はシカゴのバンドメンバーを引き連れ、嘉穂劇場の舞台に上がった。主催者から「炭坑節をやって欲しい」とリクエストがあり、野毛氏はR&B風にアレンジした曲に炭坑節の歌詞を乗せて歌った。するとお年寄り達が踊り始め、多くの観客が舞台に上がって来て大変な盛り上がりとなった。

その時野毛氏は「ここにはご先祖様の魂がいっぱいいるぞ」と感じたと話す。炭坑節の最後の方は「さのよいよい」を観客と掛け合いで歌い、黒人シンガーのキャブ・キャロウェイ風で楽しく、更に盛り上がったと野毛氏は嘉穂劇場の思い出を語った。

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野毛洋子:

野毛洋子氏は15年以上にわたり、ホットハウスやアンディーズ・ジャズ・クラブなど、シカゴのあちこちで演奏して来た。また、シカゴ・ブルース・フェスティバルやジャズ・フェスティバル、エイジアン・アメリカン・ジャズ・フェスティバルなどの特別イベントに出演する他、日本はもちろん、中国やヨーロッパでも演奏している。外務大臣賞を受賞した他、シカゴ・トリビューンの「今年のシカゴアン」に選ばれたり、ニューズウィーク・ジャパンの「世界の敬意を集める日本人100人」でフィーチャーされたり、日本にルーツを持つジャズ・ブルース・ミュージシャンとして広く知られている。

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