テイスト・オブ・ジャパン:日本酒、うま味出汁、大豆ミートなど豊富な日本の味を紹介

いろいろな食材やお茶などが紹介されたJETROシカゴのテーブル

 日本酒や日本の味を紹介するイベント「Taste of Japan in Chicago」が1月25日、シカゴ美術大学のボールルームで開催された。主催したのはJETROシカゴで、日本酒、うま味出汁、調味料、大豆ミート、静岡メロンなど21テーブルが設置された。各々のテーブルには酒造、食材メーカー、輸入業者、ディストリビューターの人々が集まり、来場者に試飲や試食を奨めながら各々の製品を紹介した。また、ブレイクスルー・ビヴァレッジ・グループの酒エキスパートのトナ・パロミノ氏による日本酒に関するレクチャーも行われた。

 

KuramotoUS (Sakeman)

 純米大辛口「水神」(岩手県)やフルーティな「剣」(福島県)、ゆず果汁の香りと味わいを生かした「ゆず想い」(京都伏見)を紹介していたのは輸入業者サケマンのヴィクター・ウェン氏。日本酒の販売について「毎年増えてますね。去年はこの10年余りの中でも良く売れた。今年も冬が終わればもう少し伸びると思う。コロナのパンデミック中はスローダウンしたが、今は安定したビジネスになってバランスを取り戻している」と語った。

 

尾畑酒造とVino del Sol

 輸入業Vino del Solのデイヴィッド・フェスティンスタイン氏は、佐渡島にある尾畑酒造の代理人として「真野鶴」ブランドを紹介していた。1892年創業の尾畑酒造の5代目・尾畑留美子専務取締役は廃校となった小学校を「学校蔵」として再開し、長期の酒造り体験プログラムや1日限りのワークショップを実施している。5代目社長は夫の平島健氏が務める。

小畑酒造の真野鶴ブランドを紹介する、Vino del Solのデイヴィッド・フェスティンスタイン氏

 Vino del Solは元々ワインの輸入業者で、アルゼンチン、チリ、ニュージーランドなどからワインを輸入している。もちろんカリフォルニアワインも取り扱っている。

 フェスティンスタイン氏は「日本酒の販売は伸びている。特に酒店やレストランで伸びている。酒を扱うのは絶対にチャンスがあるからだ。消費者はまだ酒を良く知らないから教育の継続が必要だ。我々がレストランや酒店を訪問すると、真野鶴を売るチャンスを与えてくれる。酒は絶対に上向きだと思う。販売を伸ばして輸出入を増やす。しかし大事な事はVino del Solが非常に良い会社である事だ」と語った。

 真野鶴ブランドは純米吟醸、にごり、生酒、辛口の鬼ころしなど多くのヴァリエーションを持つ。ウェブサイトはhttps://www.obata-shuzo.com/

 

小玉醸造

小玉醸造の小玉英子海外流通室長(左)と、フローティング・ワールドのリンダ・テトロ氏(右)

 秋田県の小玉醸造は、フローティング・ワールドが輸入している。同社のリンダ・テトロ氏によると、日本酒の輸入を始めたのは15年前だという。「酒は確かに米国で人気が上がっています。また、お客様はより良い酒をいつも求めています。だから市場は伸びると思います」とテトロ氏は語る。

 同社と小玉醸造が出会ったのはニューヨークの貿易業者の所だった。小玉醸造の酒を試飲したテトロ氏らはその味が気に入り、小玉醸造の酒を取り扱う事に決めたのだという。

 小玉醸造の主要ブランドは「太平山」。「酒は天下の太平山」とほほ笑むのは小玉醸造の小玉英子海外流通室長。 

 「秋田は米どころで、秋田産の酒米も幾種類か作られています。秋田は日本酒の消費量も多く、日本酒がよく飲まれる所。そういう文化の中で育まれた酒という、お酒好きの方のお酒を造っています」と小玉氏は語る。

 小玉醸造は二十数年前に、純米大吟醸が海外でのコンクールで一位になった事を切っ掛けに輸出を始めた。その後も毎年数々の賞を受賞している。創業は1879年で、元々は醤油と味噌を製造していたが、二代目が日本酒の醸造を始めた。現在も醤油と味噌も造っており、醤油、味噌、酒を造っている醸造会社は日本に10社もないのだという。

 現在は小玉氏の夫の小玉真一郎氏が五代目当主として代表取締役を務めている。小玉氏が米国に留学中、大学院生として留学していた真一郎氏と知り合い、後に真一郎氏に嫁いだ。大きくなった息子は既に酒造りの修行に入っており、次世代も安泰。「子育てもひと段落しましたので、海外に出て行く手伝いをしています。夢にも思っていませんでしたけど」と語った。小玉醸造のウェブサイトはhttps://www.kodamajozo.co.jp/で。

 

紀州と福島のウィスキー

紀州和歌山と福島のウィスキーを紹介するMK Tradingのセーラ・ギュターボック氏

 MK Tradingのセーラ・ギュターボック氏が紹介していたのは紀州熊野蒸溜所の「熊野」ブランドのシングルモルト・ウィスキーと、笹の川酒造の日本酒とその傘下の安積蒸留所のシングルモルト・ウィスキー「ヤマザクラ・ササカワ」。

 熊野は和歌山県、安積は福島県にあり、どちらも夏に暖かく冬は寒く、この気候がウィスキーの熟成に影響を与えるという。どちらのウィスキーも3年の熟成だが、より古い味わいになるとギュターボック氏は説明する。

 同氏によると日本のアルコール飲料、特に日本酒は伸びが早く、ウィスキーもこの数年は非常に良く伸びているという。これらのウィスキーはブレイクスルー・ビヴァレッジ・グループによってシカゴ地区に納入されているという。

 紀州熊野蒸留所のウェブサイトはhttps://kishukumano-distillery.com/

 笹の川酒造のウェブサイトはhttps://www.sasanokawa.co.jp/

 

梅酒のCHOYA

宇治茶梅酒を紹介するCHOYAの鈴木勝久氏(左)

 梅酒で有名なCHOYAは、宇治茶梅酒を紹介していた。これは同社が持つ水出し技術によって香り高い緑茶の味を出しているもの。

 同社の鈴木勝久氏によると、CHOYAは大阪府羽曳野市に本社を構え、梅の産地和歌山に近い三重県伊賀野にメイン工場を持つ。今年で創業110周年を迎えるのだという。老舗の味を守るのに一番重要なことは素材の良さ、質と量、熟成をしっかりとやり手を抜かないところだと鈴木氏は語る。

 新製品の宇治茶梅酒は、京都の宇治茶とCHOYAの梅酒をコラボレーションさせたもので、コールド・ブリューという技術により低い温度でゆっくりと時間をかけて熟成させた梅酒だという。CHOYAの梅酒のアルコール度は14%から15%だが、宇治茶梅酒は7.5%。ウェブサイトはhttps://choyausa.com/

 

Yamaki USA

出汁パックや白だしを説明する、後藤アイ子セールス&マーケティング・マネージャー(右)

 鰹節と言えばヤマキ花かつお。Yamaki USAのテーブルには白だし、業務用のかつおフレーク、出汁パックなどが並んでいた。

 同社セールス&マーケティング・マネージャーの後藤アイ子氏によると、粉末の出汁パックや鰹節の最後の工程はオレゴンの工場で製造し、白だしなど加工度の高いものは日本で製造し米国へ輸入しているという。

 出汁パックには鰹や昆布が入っていて、このパックを鍋に入れるだけで良い出汁が取れる。液体の白だしは薄めるだけで出汁の味が決まるので、日本でもアメリカでも非常に伸びているという。

 試食として出されていた巻き寿司の具のチキンは白だしに漬け込んだもので、白だしは下味にも使え、万能な調味料だという。巻き寿司は細かい鰹節の上を転がして、鰹節をラッピング食材として使う新しい食べ方が紹介されていた。ウェブサイトはhttps://yamakiusa.com/

 

本格椎茸粉、杉本商店

干ししいたけ専門問屋・杉本商店の干し椎茸と本格椎茸粉を紹介するタカシ氏

 宮崎県高千穂郷の干ししいたけ専門問屋の杉本商店は、干し椎茸と九州産・本格椎茸粉を紹介していた。干し椎茸は笠の直系が7センチ以上ある肉厚のものもあるが、タカシ氏が力を入れていたのは「九州産・本格椎茸粉」。

 同氏によると、干し椎茸はグアニル酸といううま味成分を野菜の中で一番豊富に含んでおり、食品に含まれているグルタミン酸やイノシン酸と結合することによりうま味が何倍にも増幅するという数字が出ているという。

 干し椎茸を粉にすると、椎茸の臭いがなくなり、自然なうま味のパウダーとして食品に振りかけたり混ぜたりして簡単に使うことができる。現在はうま味パウダーという名前でニューヨークを中心に販売活動を展開しているが、シカゴでも数店のレストランに既に入っている。日本の調味料と限定せず、非日系レストランへの紹介に力を入れているという。ウェブサイトはhttps://sugimoto.co/

 

出汁専門店・尾粂

30種以上のうま味出汁を揃えた尾粂のブレンドパックの試飲を奨めるミヤジマ・ショウヘイ氏。

 出汁の尾粂は、アメリカ初の出汁の専門店「Dashi Okume」をニューヨークに出している。1871年創業の仲卸・尾粂商店がその母体で、鰹節をはじめ、出汁が取れるいろいろな魚や昆布、するめ、貝柱、トマトなど30種類以上を取り揃え、いろいろな出汁のブレンドができる。

 イベントで紹介されていたのは6種類の出汁を粉にしてブレンドしたパウチで、確かに出汁の厚みが感じられた。代理店Kano USAのジェネラル・マネージャーのミヤジマ・ショウヘイ氏によると、うま味という言葉が今やアメリカで知られており、それが出汁から来ている事を知っている人も多く、日本の文化を取り入れながら新しい料理を作っているシェフ達も多いという。ウェブサイトはhttps://okume.us/

 

豆腐屋さんが作る大豆ミート

大豆ミートで作った3種類の「ソミート」パウチを紹介する染野屋のコバヤシ・マサヤ氏。

 染野屋のコバヤシ・マサヤ氏は大豆で作ったソミート(大豆ミート)を紹介していた。あぶり焼き、生姜焼き、ブルコギの3種があり、味に合わせてソミートの食感も違う。例えば生姜焼きは柔らかく、豚の生姜焼きに非常に近い。試食した来場者からは「Very good」、「Good texture」などの声が飛んだ。これらのソミートはパウチになっており、湯煎にかけて温めればすぐに食べられる。

 染野屋は茨城県の豆腐屋さんで、関東近郊で移動販売をしている会社。移動販売の傍ら、地球環境のために大豆ミートを製造販売しているのだという。

 染野屋は米国進出のための問屋を探しているところだという。今回はJETROを通じて出展した。来場者の良い反応を見たコバヤシ氏は「正直、来て良かった」と語った。

 染野屋のウェブサイトはhttps://www.somenoya.com/

 

●尚、総ての出展者はhttps://www.jpplausa.com/sakechiで見ることができる。

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