トリニティ・アイリッシュ・ダンス、4月22日にパフォーマンス
5年ぶりの日本ツアー支援イベントも翌日に
軽快で素早いステップや一糸乱れぬ動き、息をのむようなアイリッシュ・ダンスを見せてくれるシカゴのトリニティ・アイリッシュ・ダンス・カンパニー(以下、トリニティ)の年次公演が4月22日(土)の午後7時半よりオーディトリアム・シアターで開催される。
トリニティは日本との長い関係を持ち、同公演では能の動きや間の取り方をダンスに取り入れた新作も上演される。チケット情報はhttps://auditoriumtheatre.org/events-details/dorrance-dance-trinity-irish-dance-company-m-a-d-d-rhythms/。
4月23日(日)にはアイリッシュ・ダンスを祝い、トリニティの日本ツアーを支援するファンドレイジング・イベントが、午後2時から5時まで、シアター・イン・レイクで開催される。会場では軽食や飲み物が提供され、トリニティやプロフェッショナルのダンスや音楽も披露される。チケット情報はhttps://trinityirishdancecompany.com/celebrate/。
トリニティの第8回日本ツアー
トリニティは2004年から1年おきに日本ツアーを実施し、日本でも人気を呼んでいる。この夏の日本ツアーは8回目となり、3月にはシケラさんが10日間日本を訪れ、5都市でメディア・ツアーを行った。
トリニティの日本ツアーは、日本の代理店「テンポ・プリモ」の中村聡武(なかむら・としたけ)氏がアレンジし、テレビ東京がサポートしている。メディア・ツアー中にはテレビ東京をはじめ大手テレビや新聞がシケラさんのインタビューなどを実施した。
セント・パトリック・デーは日本でも人気となり、東京や熊本でもパレードが行われている。シケラさんもアイリッシュのコスチュームを身に着け、それらのパレードに参加した。
シケラさんは英国のマンチェスター生まれだが、両親がアイルランド出身であることから6歳の時からアイリッシュ・ダンス・スクールに通い始めた。シケラさんの跳躍力の素晴らしさは、既に日本も話題となっている。
今年の日本ツアーはコロナによるパンデミックで5年ぶりとなる。6月26日から7月18日に行われ11都市で12公演を行う。
公演地は函館を皮切りに、東京武蔵野市、東京渋谷区、仙台、名古屋、東大阪、福島県白河、福岡、熊本、三重、横浜となる。
日本との触れ合い
トリニティの創始者で芸術監督、振付師、演出家のマーク・ハワード氏が2012年のツアーで日本に着いた時、東日本大震災で変わり果てた東北地方の姿に心震える思いだった。公演中の休日を使って被災地の福島県本宮市を訪れ、招待公演を行った。公演前には仮設住宅を訪れ、600人ぐらいの被災者の人々と交流した。
2年後のツアーでは再び本宮市の仮設住宅を訪れ、再会を喜び合った。
2016年のツアーで熊本を訪れると、熊本地震に遭遇した。公演予定だった劇場はダメージを受け、熊本公演はキャンセルとなった。
当時まだ10代だったトリニティのチェルシー・ホーイ准美術監督は仲間の青年と共に劇場復興のためのファンドレイジング・キャンペーンを行い、その劇場に2万ドルを寄付した。また代理店の中村氏がパートナー企業から2万ドルをマッチングしてくれ、劇場は復興した。2018年にはその劇場で招待公演が行われ、地元の人々と交流した。
日本でもアイリッシュ・ダンスの人気が高まり、トリニティはアイルランドに留学してダンスを学び、その後に横浜にアイリッシュ・ダンス・スクール「Ardagh School of Irish Dance」を開いた白澤知子さんとも知り合いとなった。今年の日本公演では知子さんの生徒達を舞台に上げて共演する事になっている。
また、シケラさんも今年のメディア・ツアーで大阪のダンス・スクールの生徒20人にアイリッシュダンスを教えた。トリニティの東大阪公演の時に一緒に踊る事になっている。
トリニティは2018年を最後に、パンデミックのために日本ツアーを4年間実施することができなかった。この間中村氏はトリニティを心配し、日本のトリニティの観客メンバーから寄付を募り、シカゴに送ってくれたという。
トリニティ・アイリッシュ・ダンス・カンパニー
1990年にハワード氏によって創立されたトリニティは、ダンサーに多くのアイリッシュ・ダンスの世界チャンピョンを含む。
ハワード氏は8歳でアイリッシュ・ダンスを始め、北米チャンピオンを含め数々の賞を受賞している。伝統を熟知する一方で、ハワード氏はアイリッシュ・ダンスの振り付けに能や歌舞伎に通じる「静と動の動き」や「間」などの新しい要素を取り入れ、プログレッシブ・アイリッシュ・ダンスとして進化させて来た。商業主義に走らず、伝統を尊び、アイリッシュ・ダンスの芸術性を高める事にハワード氏は軸足を置いている。
アイルランド人はかつての歴史の中で困難な時代があった。ブラック・ローズというアイリッシュ・ダンスがあるが、これはアイルランド人が投獄されていた時に、アイルランドは「かわいそうな小さな黒バラ」と呼ばれた事に由来するという。
アイリッシュ・ダンスはかつて民族ダンスの一つと見られ、舞台でのパフォーマンスは禁じられていた。ハワード氏はそのダンスを芸術的なダンスに仕上げ、世界の舞台に押し上げた。
今やシカゴに本拠を置くトリニティは民族的な境界を越え、国際的なダンス・カンパニーとなっている。英国やメキシコからもダンサーを迎え、米国では12州からダンサーが集まっている。メンバーの中にはコメディアン出身者もおり、メンバーの背景も多様化している。
チェルシーさんは「だからトリニティはアイリッシュの伝統を祝う一方、より国際化・多様化したことで、多くの異なる文化をダンスに反映させることができる事に誇りを感じています」と語る。
4月22日のシカゴ公演と23日のイベントでは「コミュニオン」を演じる。これは能の踊りに触発されたもので、典型的なアイリッシュ・ダンスにはない多くの「静と動」の動きや「間」が取り入れられている。
もう一つのダンスはハワード氏が創作したリズムを主体とするダンス。アイリッシュ・ダンサーは元々彼らの足を使うパーカッショニスト達であり、ドラムとアイリッシュ・ダンスのリズムを統合したものだという。この曲は和太鼓演奏に触発されたものではなく、日本から来た和太鼓奏者達のパワーに鼓舞されたものだという。
ハワード氏はアイルランド系アメリカ人トップ100人に選ばれ、エミー賞も受賞している。また、今年の4月27日にはアイリッシュ・アメリカン・ホール・オブ・フェイムに殿堂入りする。
* このページの写真は総てトリニティ・アイリッシュ・ダンス・カンパニーによる提供