「和牛、真鯛、日本酒のペアリング」サンプル料理の紹介も

写真左より、真鯛の昆布締め、真鯛のラーメン柚子入り(写真提供:M Square GLOBAL Inc.)、テイスティングされた日本酒

 和食と日本酒の紹介イベント「和牛、真鯛、日本酒のペアリング」が10月4日、エバンストンにある総領事公邸で開催され、レストラン主や食品業界関係者約50人が参集した。

 日本酒はディストリビューターのブレイクスルー・ビヴァレッジ・グループとJoto Sakeがテーブルを出し、試飲後に担当者から直接説明を聞くことができた。


写真左は、田島浩志総領事

 また、Lettuce Entertain Youのシェフ逢坂壽修氏による真鯛と和牛についてのプレゼンテーションが行われ、公邸シェフの伊藤聡氏による真鯛と和牛料理の試食が行われた。

 同イベントを主催したのは在シカゴ総領事館で、同様のイベントを9月30日にシカゴ市北部にあるコンビニ&カンパイでも開催した。また、9月24日にはシカゴ・グルメで和牛、真鯛、日本酒の紹介を行った。

 挨拶に立った田島浩志在シカゴ総領事は、近年米国では和牛の人気が上がって来ているが、まだシカゴでは本物の和牛を出してくれるレストランは少ないと話し、イベントを通じ和牛の紹介を続けていると語った。

 田島氏は、祝いの席には欠かせない「魚の王様」と呼ばれる真鯛について、「北米の西海岸や東海岸では近年、真鯛を知る人が増えて来ている。中西部やシカゴの皆さんにも、日本のシーフードを代表する真鯛を大いに楽しんで頂きたい」と出席者に呼び掛けた。

 また田島氏は、日本酒は醸造地や天候、酒米や水によって味や風味に多様性があり、和食との組み合わせを楽しむことができると話し、「今日のイベントで和食と日本酒への理解を深めて欲しい。また、日本を訪問して本物の味を楽しんで欲しい」と呼び掛けた。

A photo of madai and the behind scene is madai farm in Japan
(Photo from presentation material prepared by JETRO)

シェフ逢坂によるプレゼンテーション
真鯛

 赤い真鯛は祝いの席を豪華に彩り、めでたい魚として古くから有り難たがられている。

 普通のサイズは30から40cmだが、1mを超える40年ものの鯛もいる。


写真左、シェフ逢坂壽修

 真鯛の旬は春と秋で、日本近海で捕れる。しかし、数が少ないので、市場に出ているのは殆どが養殖。養殖の利点は、数の安定供給と質の安全性で、2019年には62,301トンの養殖真鯛が出荷された。

 養殖が一番盛んに行われているのは愛媛県で、日本全国の56.7%を占める。それに続き、熊本県13.4%、高知県10.2%、三重県6.1%、長崎県3.8%となっている。

  真鯛には独特の香りがあり、うま味も強い。一方、脂肪は少なく、たんぱく質に富んでいる。

 特にアミノ酸が豊富に含まれ、筋肉や臓器の強化に良い。また、グルタミン酸やイノシン酸が真鯛の味を保つ。肉には殆どないタウリンが含まれ、コレステロール値を下げ心臓を強くする働きがある。更に骨や頭にはデヒドロ酢酸やエイコサペンタエン酸が豊富に含まれる。

  真鯛は栄養豊富で多種のビタミンも含み、消化に良く、疲労回復、腎臓、ヒスタミンの低下など多くの働きがある。

  真鯛のうま味は魚肉と皮の間の部分に凝縮している。これが刺身やムニエルを引き立たせる。普通、刺身は皮なしで食べるが、皮側に熱湯をかけて即座に氷で冷やす皮霜造りという食べ方がある。

 鯛の料理は、鯛お頭、昆布締め、かぶと煮、煮付け、鯛茶漬け、鯛飯、カルパッチョ、中華蒸しなどがある。

  同イベントでは、伊藤シェフが料理した鯛の昆布締めと鯛ラーメンの試食が行われた。

・鯛の昆布締めは、鯛と昆布のうま味で刺身が2倍も3倍も美味しくなり、また日持ちもする。

・鯛ラーメンは、鯛のだし汁で作ったスープに麺を入れ、皮付の鯛の切り身を茹でて醤油や出汁でマリネしたものを乗せ、柚子の輪切りを添えたもの。あっさり味でうま味の濃い一品だった。

和牛

和牛と和州牛の違い

 アメリカでは和州牛が出回っている。これは和牛と米国産のブラック・アンガス牛を掛け合わせたもので、肉にはサシが入っている。

 アメリカで神戸ビーフと呼ばれるものは但馬牛とブラック・アンガス牛を掛け合わせたもので、本物の神戸ビーフは但馬牛。

 和牛の大きな違いは、一頭々々が個体情報を持ち追跡できること。牛を育成した農家や産地のみならず、先祖三代までの血統を遡ることができる。また、日本の47都道府県で飼育される和牛には、近江牛、松坂牛、佐賀牛など、それぞれの土地のブランドがある。

 また、和牛はA5からC1まで、肉質と歩留まりによって15段階の格付けがあり、同イベントで試食されたのは最高のA5で、長野県で飼育された信州牛。

  もう一つ、和牛と和州牛の大きな違いはメルティング・ポイント。

 和牛の脂肪は摂氏20度(華氏68度)で融けるため、口に含むととろける。また、料理する時に摂氏80度以上になると、和牛香というココナツのような甘い香りが出て来る。

写真左より、和牛ステーキ、和牛しゃぶしゃぶスタイル、和牛フライド・ライス。料理は伊藤聡公邸シェフ

 ・試食では、伊藤シェフが作ったステーキ、しゃぶしゃぶスタイル、フライドライスが紹介された。

 ・ステーキは、口の中でとろける美味しさだった。

 ・しゃぶしゃぶスタイルは、薄切りの和牛におでん風に煮た大根とフォアグラマッシュルームを添え、柚子フレーバーのスープだった。

 ・フライドライスは和牛の脂肪を使ったものだが、油濃さがなくサラッとした食感だった。

レストラン・オーナーに訊く

 
ARAMIレストランのオーナー、トロイ・フジムラ氏は日系三世。店内には約100種類の日本酒を揃えている。フジムラ氏の片腕は総支配人のパトリック・グロッソ氏で、ワインと酒接客の専門家。


写真左: トロイ・フジムラ氏(左)とパトリック・グラッソ氏

 フジムラ氏は「ARAMIの特徴は、酒リスト。品質の良い高い酒や日本のウィスキーを揃えている。もう一つ、ARAMIを特別にしているのはエキスパートを揃えている事。ワインと酒のエキスパートのパトリックがいるし、魚のエキスパートでヘッド寿司シェフのイズマエル・ロペスもいる」と話す。

 グロッソ氏は「うちの店はワインと酒がビッグ・パート」だと話す。「初めて酒に出会った時、酒はワインよりももっと微妙でデリケートなフレーバーで、テイスティングは難しいチャレンジだった。何でもそうだが、学べば最高の見返りがある」と語る。

 フジムラ氏はグロッソ氏について「ギャップに橋を架ける…、言葉によるワインの表現を、酒の表現に置き換えて説明できるエキスパートですよ。そうして文化のバランスを築いているんですよ」と語った。

  グロッソ氏は「お客様にどんな味だと言うよりも、お客様との間に共感を作って、ワインや酒を飲む経験を通して、味や香りを感じて理解できるように導いています。だから教えるというよりも、もっと対話式の経験ですね」と語った。

 フジムラ氏はハワイ生まれで、殆どの家族は今もハワイに住んでいる。シカゴでスモール・バーという小さな店を兄弟で開いたのが12年前だった。その後チャンスが巡って来て、5年前にARAMIを開いた。

  店を開こうと触発されたのは、自分自身の日本文化の探索だった。ハワイで生まれ、インディアナで育ち、日本的な経験は非常に異なるものだった。「だからこれが私にとって、自らの歴史探索によって自らの文化を知る道だったんですよ」とフジムラ氏は語った。

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