ミチコ・イタタニ作品展Celestial Stage
ミチコ・イタタニ氏の作品展「Celestial Stage(天空のステージ)」が10月1日から12月17日まで、ライトウッド659ギャラリーで開催されている。60作品を超える壮大な絵画を通じてイタタニ氏が分かち合うのは、無限大の宇宙とその中での人間の存在、知られざる事を追求する人間性、そして人間が成し遂げた偉業。
だが、我々の地球が果てしない宇宙の一部であるという意識は日常の中で失われ、殺戮や破壊が横行し、人間の誇りである偉業が意識の隅に追いやられている。「私は人間が引き起こしている地球上の深刻で差し迫った状況に心を乱されている」とイタタニ氏は語る。
イタタニ氏はシカゴ美術大学名誉教授で、40年に亘り教鞭をとって来た。同氏の作品はシカゴ美術館をはじめ、バルセロナ現代美術館、国立近代美術館(韓国ソウル)、ローザンヌ・オリンピック美術館(スイス)、駐米ブラジリア大使館などに永久保存されている。また、CTAのワシントン駅にも展示されている。
今回の展示作品約60点は、新型コロナによるパンデミック中に制作したものが殆どで、659ギャラリー3階が入口となっている。イタタニ氏は「3階の展示場のメインテーマは『無限の希望』。私は絵を描く事で、無限の希望を持ち続けようとしていた。知られざることを知ろうとする不可解な切望が、希望を持たせ続けてくれた」とオープニングの挨拶で語った。
Photo left: Michiko Itatani and her work “Collection Sol III” painting from Celestial Maze 22-B-1
イタタニ氏の絵は2.1 m x 2.4 m (7f x 8f)と大きなキャンバスに描かれた作品が多く、パンフレットの写真では分からない圧倒的な迫力を感じさせる。また、絵の中に招き入れてくれるような親密さも感じさせる。
作品はいろいろな部屋に描かれた広くて長い階段が目立つ。子供の頃に階段のある建物や家に行くと、上ってみたい衝動に駆られた人も多いだろう。その上方に宇宙が見えるドーム型の窓があればなお更だろう。
部屋に置かれたピアノやハープやチェロなどの楽器、地球儀や太陽系儀やロケットなどは、知られざる世界を探求し続ける人間性と、人間が成し遂げた音楽や文化や科学のシンボルだとイタタニ氏は説明する。部屋には襖や欄間を描いた日本間もあり、これはイタタニ氏が愛する日本文化と茶道のシンボルかも知れない。
イタタニ氏は若い頃、フィクション作家になりたいと思ったことがあった。今も「フィクションには深い真実を物語る能力があると信じている」という。そして「絵の言葉を通して私のフィクションを皆さんと分かち合いたい。皆さんに私のフィクションの世界に参加してもらい、違う結末を導き出して欲しい」と語る。
Photo Left: “Lagrangian point 2” painting from Infinite Hope 22-C-5, Photo right: “Untitled” painting from Radiant Triage 04-C-2 (RT-2)
おそらく、このストーリーのヴィジュアル・イメージは同展覧会で表現されていると思われる。
同展覧会でもう一つ大事な事は、作品の中に余すことなく使われているイタタニ氏の技術を詳細に見ることができる事だ。キャンバス作りからペインティングまで人手を借りず、総て自分でやるのがイタタニ氏の哲学。絵を描く人なら必見の展覧会だと言える。
尚、659ギャラリーの2階では「The First Homosexuals: Global Depictions of a New Identity, 1869-1930」が併せて行われている。
659ギャラリーは5階建てのレンガ造りのビルを建築家の安藤忠雄が改築したもので、1階から5階まで吹き抜けになっている。その中に浮かぶように各階のギャラリーがある。その各階を繋ぐ階段を上って行けば、サイエンティフィクでノスタルジックな特別な感覚を楽しめる。
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展覧会「Celestial Stage」:
12月17日まで
金:12 - 7 pm
土:10 am – 5 pm
入場料:15ドル
チケット:オンラインのみで購入可